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【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(143) 未だトランプを支持し続ける人々が“物語”から覚める時

ドナルド・トランプ大統領の就任から1年が経ちました。彼は2016年の大統領選からずっとアメリカ社会の分断を煽り続け、主要メディアとの対立も深まるばかり。つい先日には、政権の内幕を綴った暴露本『Fire and Fury(炎と怒り)』が出版され、その中でセンセーショナルな告発を行なっているスティーブン・バノン前主席戦略官が連邦大陪審に召喚されたことが報じられる等、“ロシア疑惑”も終わりそうにありません。政策面でも、富裕層優遇の大型減税は決めたものの、労働者層へのボーナスになる筈の超大型インフラ投資の話が進む気配は見えません。そんなトランプ大統領の就任1年後の支持率は、調査主体にもよりますが、凡そ30%台後半。同時期としては(比較可能な統計の中では)史上最低の数字ですが、それでも未だ以前と変わりなく熱狂的に支持している層(その多くは現代社会から取り残された“忘れられた人々=白人労働者層”)がいます。

現実的に考えて、トランプ政権が彼らを救ってくれる見込みはありません。では一体、何が彼らを駆り立てているのか? “物語”というのが1つのキーワードになると僕は考えています。ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者のロバート・シラーは、「人間の脳は“narrative(物語)”を強く欲する」と指摘し、この点を突いたトランプ大統領の出現を“revolution(革命)”と評しています。僕なりに解釈するなら、トランプ大統領は白人労働者層に対し、自分たち自身を誇らしく思えるような“物語”を提供し、そこから生まれる熱狂を支持基盤にしているということです。トランプ大統領や彼を支援する一部のメディアは、他の主要メディアが報じる現実そのものを遮断し、支持者たちが信じたい“alternative fact(もう1つの現実”)を提供し続けています。特にトランプ大統領は『ツイッター』を使い、メディアの報道をバイパスして直接語りかける。「悪いのは移民だ。非白人よりも白人を経済的に優遇しろ」。その言葉を聞く支持者は、「自分が主役だ」と思い込み、どこまでも現実送避していく――。この手法の最大の問題点は、アメリカ社会の強みだった筈の“議論”が成り立たなくなっていくことです。(ロシアの関与を取り敢えず脇に置いておけば)投票という民主的行動によって選ばれた大統領が、じっくり時間をかけて民主的な政治や社会を破壊している。これは将来に禍根を残すことになるでしょう。

恐らく、トランプ大統領支持者が期待している経済的なトリクルダウンは、この後も起きません。「偉大なアメリカが戻ってくる!」等とトランプ大統領がいくら吠えてみたところで、抑々現在のアメリカは格差を解消できる社会構造になっていません。今秋の中間選挙は、このままいけば上院・下院とも民主党が多数派となり、(若しトランプ大統領が弾劾されたり辞任しなければ)現政権の残り2年は更に実りの少ない妥協の政治が続くことになります。そんな中、現実を無視したまま膨らんだ支持者たちの期待が軈て泡のように消えた時、後に残るのは火が点いた差別意識と破壊衝動だけです。トランプ大統領の遺産は将来に亘り、アメリカ社会を苦しめ続けることになるのかもしれません。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2018年2月12日号掲載
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テーマ : アメリカお家事情
ジャンル : 政治・経済

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