【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(144) 独裁中国、世界制覇の野望にスイッチが入った!

中国政府がヒップホップアーティストのテレビ出演の全面禁止を通達――。先月下旬、こんなニュースが話題となりました。報道によれば、中国当局は「入れ墨のある芸能人、ヒップホップ文化、不健全な文化は番組で扱わない」ことを求め、国営メディアも“ヒップホップ叩き”を強化。ある大物ラッパーは、「リリックが低俗だった」と公開懺悔を強いられました。中国では昨年6月からラップバトル番組『The Rap of China』がオンライン上でスタートし、最初のシーズンで視聴者数のべ30億人を記録。今、最も勢いのある大衆娯楽が突然、お上によって抹消された訳です。言うまでもなく、これは習近平政権による一種の言論統制の強化です。中国ではAIによる人民監視も相当進んでいますから、今後はヒップホップに限らず、少しでも「反体制を匂わせる」「社会風紀を乱す」と判断され得る文化は逐一チェックされるでしょう。まるで、昭和日本の風紀係の先生が女子生徒のスカートの丈を測って回るような異様な“管理”を、最新技術を駆使し、13億人超に対してやろうとしている訳です。尤も、中国共産党政権は締めつけを強化するのみならず、巧みに人民の心を掌握しています。その象徴が昨年公開され、中国の興行収入記録を更新したアクション映画『戦狼2』。内戦下にあるアフリカの架空の国を舞台に、人民解放軍の元特殊部隊員である主人公が、現地に取り残された同胞を救う物語です。映画の最後には中国のパスポートが大写しになり、「海外で危険に遭っても必ず助けてくれるから希望を捨てないで」とメッセージが流れる露骨なプロパガンダです。

但し、見逃せないのは従来のプロパガンダとの方向性の違いです。嘗ての中国のプロパガンダ映画は、どこかに被害者としての視点が落とし込まれていた。加害者は時に欧米であり、時に日本であり…と様々ですが、「ヤツらのせいで我々はここまで落とされた」「もっと自信を取り戻そう」という文脈があった訳です。ところが、今や経済的にも地政学的にも大きな影響力を持つ正真正銘の大国となった中国は最早、被害者視点を持つ必要が無くなりました。日本なんて目ではない。アメリカでさえ急激に弱体化している。世界の中心は中国になっていくのだ――と。『戦狼2』の根底にあるのは、一帯一路構想の延長にある中国的帝国主義のナショナリズム。そして勿論、中国のそうした野望は海外にも着実に広がっています。「ドナルド・トランプ大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー大統領上級顧問が、中国の手に絡め取られている」――。先月21日、アメリカの老舗メディア『New Yoker』に、そんな内容の長文記事が掲載されました。こうした指摘は以前からありましたが、より具体的な証拠が多数提示されており、注目に値する内容となっています。一例を挙げれば、2016年1月の大統領選挙の直後から、中国の大手保険グループがクシュナー氏の経営する不動産会社が保有していたマンハッタンのオフィスビルを再開発する話を進めていたといいます(※この話は結局、利益相反との批判が高まり、頓挫しましたが)。こうした例は他にも枚挙に暇が無く、アメリカの公安当局は昨年初頭時点でクシュナー氏に警告を与えたようですが、以後も類似案件が頻発。クシュナー&イヴァンカ夫妻は、ホワイトハウスの主要メンバーでありながら、現在も国家機密へのアクセス権を制限されているといいます。

日本ではロシア疑惑ばかりが注目されていますが、同じ“介入”でも、スープに直接異物を混入するような形を取るロシアとは違い、中国は“味付けを変える”ようなイメージ。最初は気付かず、飲み干した後になって初めて中華風になっていたことがわかる…という感じでしょうか。また、トランプ政権は『環太平洋経済連携協定(TPP)』や『パリ協定』等から軒並み脱退(※或いはそれを示唆)し、国際協調路線から離れつつありますが、中国はこの機を逃さず、空白を埋めるかのように国際的プレゼンスを強化しています。「これからは中国が国際社会を運営するんだ」と言わんばかりです。例えば、今や『国際刑事警察機構(インターポール)』の総裁は中国人が務めており(※選出されたのは2016年11月)、昨年北京で開催された総会で習主席は「中国は世界中で最も安全だ」とまで演説しました。「ウイグルやチベットの人々を苛烈に弾圧している張本人が、どの口でそんなことを言えるのか?」と思いますが、“現実”はじりじりと中国の思惑通りに動いているのです。こうした中国のロングターム戦略に、日本はどう対抗すべきなのか、そろそろ本気で議論をする必要があります。保守とリベラルが国内限定のイデオロギー闘争に明け暮れている余裕はありません。冷静に考えれば、経済力や軍事力では太刀打ちできないことは火を見るより明らかです。勿論、“軍事力をある程度強化する”という施策も必要ですが、それだけでなく、彼らが持ち得ないものを武器にしなければなりません。僕が思うに、日本の最大の武器になるのは、民主主義国家としての普遍的価値――表現の自由と多様性、そして寛容であること。例えば、中国がヒップホップを禁止するなら、日本は“ヒップホップ省”を作るくらいの勢いで、中国のラッパーたちにラブコールを送り、自由をアピールする。そうした動きこそが、中国を“中から揺るがす”ことに繋がるのではないでしょうか。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2018年2月19日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : 中国問題
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR