【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(146) 反EU、移民排斥、そして言論統制まで! 欧州“極右旋風”の現実

2月6日、ポーランドで驚くべき法律が成立しました。嘗てナチスドイツが犯したホロコースト(※ユダヤ人大虐殺)等の罪に関し、「ポーランドが“責任”を負っている」と主張した者は罰金刑、又は禁錮刑に処される――というものです。この通称“ホロコースト法”は、2015年に政権を奪取した右派政党『法と正義』が進めてきたもので、表向きの理由は、ナチスがポーランド国内に建設したアウシュビッツ強制収容所が“ポーランドの収容所”等と呼ばれることを防ぐ為とされています(※当然、イスラエル等は「歴史改竄だ」と猛反発していますが)。ただ、ポーランドの同政権がこれまでもメディアや司法への統制を強化してきたことを考えれば、ホロコースト法もそうした強権的な流れの中にあると見るべきでしょう。昨今は中欧や東欧の多くの国で民族主義的な右派思想が広がり、反EUの感情も高まりを見せています。例えば、ポーランドも参加する『ヴィシェグラード(V4)』という4ヵ国のグループ(※他にハンガリー、チェコ、スロバキア)は反EUで団結し、EU域内の難民受け入れ分担を提案したドイツに猛反発。

中でも過激なハンガリーに至っては、「移民流入の背後で、自国出身のユダヤ人投資家、ジョージ・ソロス氏が暗躍している」との陰謀論紛いの言説を、オルバーン・ヴィクトル首相本人が声高に主張する等、国を挙げてキャンペーンを展開しています。今年はハプスブルク帝国が崩壊してから100年の節目。約700年続いた帝国の後、ばらばらになった各地域の人々は100年もの間、不安定な社会での生活を余儀なくされてきました。そう考えると、中・東欧の近年の“右旋回”は、共通の被害者意識を持つ者同士が“100年の憤懣”を爆発させているということかもしれませんが、それを見逃さないのがロシアや中国。ロシアは右派政党への支援、中国は露骨な経済援助等の形で介入し、EU全体に揺さぶりをかけています。但し、反EUという面では結束する中・東欧諸国ですが、その内実はポピュリストたちが自国の事情を利用して世論を煽っているだけ。その根底にナチズムやコミュニズムのような“大きな世界観”は無く、個別の分野に目を移せば、互いに相容れない部分が目立ちます。

例えば、スロバキアは自国への移民・難民受け入れに反対する一方、「自国民の西欧への出稼ぎは維持したい」という微妙な立場。逆に、V4に隣接するオーストリアでは、連立政権内の極右政党『自由党』が、ムスリム難民のみならず、ハンガリー等中・東欧諸国からの移民にも強く反対しています。また、そのオーストリアは原発に頼らないエネルギー政策を打ち出していますが、隣国のハンガリーがロシアと協力してオーストリアとの国境付近に原発の建設を決定する等、周辺は原発建設ラッシュ。摩擦の火種となっています。多くの日本人にとって、EUとはリベラルな世界観の象徴のように映っているかもしれません。しかし、その“東半分”は経済的に取り残され、ポピュリストが跋扈し、EUの理想とは程遠い現状です。この“剥き出しのヨーロッパ”の現実を見つめることで、却って現代という時代の本質が見えてくるかもしれません。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2018年3月5日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR