【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(149) 『朝鮮総連』発砲事件は日本人によるテロ、“犬笛”を吹いてはならない

「労働党のジェレミー・コービン党首は旧共産圏のスパイだった」――。先日、そんな疑惑がイギリスメディアを駆け巡りました。内容は、コービン党首が1970年代から1980年代にかけて、旧チェコスロバキアの諜報員と密会を繰り返し、国家情報を漏らしていたというもの。結論から言えば単なるネガティブキャンペーン以外の何物でもありませんでしたが、コービン党首の社会主義的なスタンスからすると、如何にも“ありそう”な話だった為、タブロイド紙の記事から始まった疑惑はどんどん巨大化。「諜報員とお茶をしたらしい」→「情報提供を疑われても仕方ない」→「それを否定できるのか?」と、漠然とした嫌疑は直ぐに雪崩を打ち、SNS上で右派系アカウントが拡散。更には一部の大メディアもそれに乗り、あろうことか保守系政治家までもが“コービン叩き”に参戦しました。こういう汚い政治ゲームは珍しいものではありませんが、昨今ではSNSがその加速装置として機能してしまっています。

嘗ては、タブロイドはタブロイド、大手メディアは大手メディア、政治は政治と、ある程度の棲み分けがありましたが、今やSNSがそれらの“接着剤”兼“発火装置”となり、たとえ嘘でも加速度的に拡散されてしまうのです。それを良識的なメディアが真面目に検証し始めても、また次のデマが出回る。或いは、出始めは“タブロイドの与太記事”であっても、他媒体、SNS、政治空間を潜ることで情報がロンダリングされ、いつしか正当化されてニュースサイトや報道番組の一等地に陣取る――。そうして広まった情報を信じ込んだ人たちが義憤に駆られ、危険な行動に出てしまうケースも増えています。最近のイギリスでは、ムスリム過激派によるテロのみならず、白人至上主義者による“極右テロ”が頻発していますし、アメリカの白人による銃乱射事件も同じ構図でしょう。先日、イギリス警察のテロ対策責任者だった人物が「白人至上主義や極右を取り締まる必要がある」という旨の発言をし、話題となりました。曰く、ラディカルなのはイスラムのジハーディストだけではない。我々白人の中にも、情報によって過激化された人間が増えているという現実を見つめるべきだ。そんな状況を助長しているインターネット企業が一切の責任を持たないのはおかしい――。

言論の自由に敏感なイギリスで、警察側の人間によるこれほど踏み込んだ発言は異例です。テロを引き起こすのは特定の宗教や集団だけではなく、貴方の隣人、或いは貴方自身かもしれない。「権力による言論統制だ」との批判も覚悟の上で、彼は敢えてそう警告したのです。先月23日、東京の『朝鮮総連』中央本部で銃撃事件が発生し、右翼活動家ら2名が現行犯逮捕されました。これは日本人による“テロ”です。丁度、北朝鮮の工作員に関する話題が世間を賑わせていた頃でしたが、軍事的危機やグローバル経済による生活不安といった社会的ストレスがかかる現代では、単なる与太話ですら凶行を呼ぶ“犬笛”になりかねません。こんな時代だからこそ、言論人は当然のこと、誰もが言葉に責任を持たなければならない。僕もメディアで発言する人間の1人として、より強く意識していきます。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2018年3月26日号掲載
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テーマ : 北朝鮮問題
ジャンル : 政治・経済

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