【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(150) 世界に広がる中国の“言論の一帯一路”にどう対抗すべきか?

今年1月、アメリカの大手ホテルチェーン『マリオット』が、顧客調査でチベット、台湾、 香港、マカオを“国”として扱ったことが大問題となり、中国政府への謝罪に至りました。同月には、日本の生活雑貨ブランド『無印良品』を展開する『良品計画』も、中国で配布していたカタログ内の地図に釣魚島(※日本名は魚釣島)が未記載だったことを理由に、カタログを廃棄することになりました。従来、中国のナショナリズムは基本的に国内で吹き荒れるものでしたが、最近はチャイナマネーの威力と中国政府の後押しもあり、世界中の華僑に浸透しているようです。例えばアメリカ。デューク大学に通う中国出身の女子学生が、「中国政府はおかしい」「もっと自由になるべき」という旨の発言をし、別の中国人学生と衝突したのですが、その様子を撮影した動画がインターネット上に晒されると、「生意気だ」「売国奴だ」と女子生徒は大炎上。個人情報まで流出し、中国に残った家族もハラスメントに遭ったといいます。

またオーストラリアでも、シドニーの中国料理店で働いていた台湾出身の女性留学生が、大陸出身の雇用主に「台湾は中国の一部か?」と問われ、「違う」と答えると即日解雇されたという事件があります。しかも、その理不尽さに憤った彼女が、事の顛末を『Facebook』に綴ったところ、彼女自身に罵詈雑言が投げつけられて大炎上。更に、この騒動に便乗した『環球時報』(※中国共産党の機関紙傘下のタブロイド紙)が、「この店長は立派だ。皆で応援しよう」と記事にしたところ、店の来客が激増したとの後日談もあります。通常、移民という道を選ぶ人は、母国に無い“豊かさ”・“チャンス”・“自由”を求めるケースが多く、移民先で富や自由を得ればその国に同化していくことが多いですが、中国人はどちらかというと移民先でもナショナリズムに燃える傾向が強い。勿論、各国で中国人コミュニティーが発達していることもあるでしょうが、その背景には中国政府のプロパガンダが国境を越えて“輸出”されているという事情もあります。一例を挙げれば、アメリカ最大の華字新聞『僑報』は、基本的に中国政府の見解を忠実に掲載します。アメリカ国内のニュースに関しては客観性があり、寧ろリベラル寄りの論調ですが、中国関連記事ではまるで政府機関紙のような論調になるのです。

また最近、中国政府は『Google』や『ツイッター』等に、都合の悪いコンテンツの削除要求を繰り返しています。IT大手企業はどうしても中国市場へ進出したいでしょうから、ビジネス上の判断として“屈服”する可能性は十分にあり得るでしょう。いうなれば、これは国境無き言論統制――国内の約33%の支持者だけのほうを向くドナルド・トランプ大統領のアメリカが、超大国の座から撤退しつつある今、その空白を埋めるべく、剥き出しの覇権主義で膨張を続ける中国の習近平“終身国家主席”による“言論の一帯一路”です。こんな状況で我々がすべきことは、「中国怖い」「中国人は出ていけ」と声を荒らげることではありません。大事なのは彼らに対するカウンター、中和する力です。今こそ、ナショナリズムに汚染されていない中国人を受け入れ、その言論の自由や、意見の独立を応援するべき時でしょう。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2018年4月2日号掲載
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テーマ : 中国問題
ジャンル : 政治・経済

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