【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(152) 『Facebook』個人情報がトランプ大統領の“政治詐欺”に利用されていた!

皆さんは、『Facebook』(※以下、FB)で流れてくる性格診断クイズに答えたことがありますか? クリックすると外部アプリに飛び、無料で自分の性格を診断でき、その結果を共有して“いいね”を押し合う。そんな“楽しいお遊び”は、世界中の人々に親しまれています。でも、若しその際、貴方や友人の個人情報がごっそり抜かれていたら? そして、それが政治を歪めることに使われていたら?――今回はそんなお話です。2014年に開発されたある性格診断クイズを通じて収集された約5000万人分の個人情報が、2016年のアメリカ大統領選でドナルド・トランプ陣営のキャンペーンに使われていたことが判明しました。問題の本丸は、イギリスに本拠地を置くデータ分析企業『ケンブリッジアナリティカ』(※以下、CA)。同社の創業メンバーの1人であるデータサイエンティストのクリストファー・ワイリー氏が先日、内部告発を行なったのです。ワイリー氏によると、クイズを作成したのはケンブリッジ大学の心理学者。回答した約27万人のデータと、そのFB上の友だちの公開データ、合わせて5000万人分のデータが、別の調査会社を通じてCAに不正に売却され、フェイクニュースや選挙広告の狙い撃ちという形で大統領選に活用されたといいます。「CAは選挙結果を捻じ曲げた」と言うに等しい、衝撃的な告発です。報道によれば、カナダ出身のワイリー氏は現在28歳。ADHDと読書障害を持ち、ゲイということで苛めに遭う等、少年時代は辛いことも多かったようです。しかし、頭脳は極めて明晰、というより天才的で、16歳で高校を自主退学した後、17歳でカナダ自由党のオフィスに入り、データサイエンスを学びつつ、同党のインターネット戦略業務に従事。

そして、19歳からコーディングの独学を始め、20歳で『ロンドンスクールオブエコノミクス』に入学します。この頃から、野党候補者の為に、“正しいターゲットに正しいメッセージを送る”べく、データを使う試みを始めたそうです。猛烈な勢いで成長する天才データサイエンティストに目をつけたのは、後にトランプ政権の上級顧問となるスティーブ・バノン(※現在は既に退任)。一般的に保守層はLBGTに冷たいものですが、ワイリー氏はバノンとジェンダー問題について長々と議論を交わし、彼を信頼してCAの共同創業者になったといい、「ここまで自分のセクシャリティーを人に話したことはなかった」と振り返ります。極右メディア『ブライトバートニュース』の会長でもあったバノンは、ゲイの先進性やクリエイティビティーを「政治的に利用し甲斐がある」として注目してきた節があります。彼の下で極右政治運動(※オルトライト)を盛り上げたコラムニストのマイロ・ヤノプルスも、やはりゲイでした。若きワイリー氏にとって、自分の個性や才能を認められ、その発明を好きなだけ実験できる環境は、極めて魅力的だったのでしょう。今回の告発にあたり、ワイリー氏は“ゲイらしさ”を演出する為、髪をピンクに染めました。これは一時的にとはいえ、アンチゲイの差別主義者の政権が誕生する手助けをしてしまったことに対する贖罪意識の表れでしょうか。CAはアメリカ大統領選のみならず、イギリスのBREXITを問う国民投票等、複数の国の選挙で暗躍していたようですが、その戦略ははっきりしています。“どんな手段を用いても人の心を動かし、大衆を扇動する”。全てはデータで解析され、実際に世論が動きました。ワイリー氏によれば、SNS上では“左”のネタより“右”のネタがよく飛び、どんなにバカげた陰謀論でも響くことがデータではっきりと示されたといいます。

注目すべきは、この戦略モデルがトランプの出馬以前に完成していたという事実です。つまり、バノンらは“大統領選に勝てるタマ”をデータから逆算して探し、それが偶々トランプだったのかもしれない。若しそうであれば、勝ったのはトランプというよりバノンだった訳です。もう1つ重要なのがFBの責任です。抑々、FBがユーザー情報を第三者に受け渡さなければ起こり得ない問題でした。しかし、FBのマーク・ザッカーバーグCEOは、同社が不正使用を引き起こすような間違いを犯したことは認めつつも、「自分たちも被害者である」とのスタンスを崩しません。「我々は交流の場を提供しただけだ。今後はこうしたことが起こらぬよう善処する」――。過去に何度も聞いた弁明ですが、大統領選への不正利用という今回の問題は極めて深刻で、今後は規制や処分の対象となる可能性も十分にあります。但し、フェイクニュースやプロバガンダへの対応という点では、今回問題視されているFBだけでなく、『Google』や『ツイッター』等もやはり不誠実だと言わざるを得ません。先日、Googleはニュースメディア企業を支援する為、総額3億ドル(※約316億円)を投資すると発表しましたが、この金額はGoogleが直近3ヵ月で稼いだ広告収入の約1%でしかありません。今の時代、どんな国でもプロパガンダは知らぬ間に人々の心に寄生し、社会を蝕んでいきます。そして今のところ、それに対抗できるのは個々の自己防衛でしかありません。空気に流されないこと。“気持ちいいニュース”や言説を疑うこと。白か黒、敵か味方かという二元論に堕ちないこと。日本においても当然、それは他人事ではありません。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2018年4月16日号掲載
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テーマ : アメリカお家事情
ジャンル : 政治・経済

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