NHKスペシャルで話題沸騰…60歳が20歳に若返り、出産も可能に!?――夢の長寿薬『NMN』を発見した博士がすべてに答えた

世界同時株安で始まった5日の株式市場で、日清製粉の株価は前週比75円高の1245円をつけた。前夜放送されたNHKスペシャルで、子会社のオリエンタル酵母が生産している試薬『NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)』が大きく取り上げられたことが、買い材料につながったとみられる。「30年後の2045年には平均寿命が100歳になる」「60歳の女性が20歳に若返り出産も可能になる」――番組は近未来の超長寿社会をこう描いたが、そのカギを握る“夢の長寿薬”として登場したのが『NMN』だった。NMNの効果を2007年に発見したのが、番組にも登場した米ワシントン大学医学部の今井眞一郎博士である。今井博士のグループが老化して糖尿病になったマウスにNMNを投与したところ、症状に劇的な改善が見られたという。また、老化したマウスの神経細胞を増やす働きもあった。さらに、米ハーバード大学のデイビッド・シンクレア教授による実験では、人間なら60歳に相当する生後22ヵ月のマウスに1週間NMNを与えた結果、筋肉細胞の働きが生後6ヵ月(人間なら20歳)にまで若返ったという。これが60歳の女性でも出産が可能になるという根拠だ。

それにしても、この長寿・若返りはどういう仕組みなのか、今井博士に質問してみた。今井博士がまず着目したのは、“長寿遺伝子”といわれるサーチュイン遺伝子だ。「サーチュイン遺伝子はあらゆる生物が持っていて、老化と寿命を制御しています。人間は活性酸素や免疫の暴走など、100種類以上もの老化の原因を抱えています。これを“掃除”していくのがサーチュイン遺伝子の役割です。たとえば、マウスで働きを強めてやると寿命が16%ほど延びます。このように、老化が遅れて寿命が延びることから長寿遺伝子とよばれるようになったんです」。これを人間にあてはめれば、平均寿命は100歳にまで延びることになる。ただし、ふだんはスイッチがオフになっていてサーチュイン遺伝子は眠った状態になっている。「ところが、食べ物が減り飢餓状態になると、NADと呼ばれる物質が増えてサーチュイン遺伝子が活性化するんです。栄養が少ないなかで子孫を残すのは大変で、下手したら死んでしまう。それを防ぐため、飢餓状態のときは細胞が生き延びられるよう、サーチュインがいろいろな体の機能を守る働きをします。“腹八分目”というのはその点でも意味があったんです」。つまり、NADがあれば若返り遺伝子は機能するのだが、その原料となるのがビタミンB3である。ビタミンB3がNMNに変化し、それがNADを作るのだ。




NMNの効果はさまざまな病気にも効果がある。今井博士は、老化して膵臓からインシュリンの出が悪くなり糖尿病になったマウスに1週間NMNを投与した。すると症状が劇的に改善したという。NMNにより膵臓の機能が回復したのだ。「糖尿病だけではありません。私がNMNによってサーチュインを活性化できると報告してから、世界中の研究者がいろいろな実験を始めました。その結果、心筋梗塞が起こる少し前にNMNを与えておくと心筋梗塞が予防できるということも報告されています」。今井博士は今年から来年にかけて人間への臨床試験を開始し、なるべく早く安全性のチェックをおこなっていくという。それにしても、私たちはいつNMNを体験できるのか。「いまはまだ動物実験の段階で、NMNは試薬でしか手に入りません。研究用なら世界中どこでも手に入りますが、人が服むのはまだ無理です。近い将来、ビタミンを補充するような感覚でNMNサプリメントを補充することが可能になると思っています」。NMNはビジネスとしても可能性がある。「アメリカでは医薬品も含めたアンチエイジング市場は9000万人の需要があり、年間約3000億ドル(36兆円)もの市場規模がある」と言うのが、『団塊世代のアンチエイジング 平均寿命150歳時代の到来』という本を書いた参議院議員の浜田和幸氏だ。「去年、グーグルの100%子会社であるグーグルベンチャーズが1000万ドルを投入して、カリフォルニアで“キャリコ”という新しいプロジェクトを立ち上げたんです。目的は寿命・長寿の研究。“キュア・デス=死を治療する”というスローガンで、新しい薬や治療方法を提供しようというものです。製薬会社も次々と買収していて、もちろんNMNもターゲットになっているでしょう」。まさにNHKスペシャルが謳う“寿命100歳時代”がすぐそこまでやってきているような話だ。

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しかし、NMNには懐疑的な声も多い。「可能性は否定しませんが、マウスの実験は一定のコントロールされた環境下でおこなわれた実験ですからね。その実験で寿命が16%延びたからといって、人の寿命も単純に16%上乗せするというのは、あまりに短絡的な結論です」(順天堂大学大学院加齢制御医学講座・白澤卓二教授)。こうした疑問に今井博士は、「もちろん、マウスと人を同列には論じられませんが、“ビタミンB3→NMN→NAD→サーチュイン”のメカニズムはマウスも人もまったく同じなんです。検証が進めば、かなりの効果があると思っています」と答える。シンクレア教授(前出)の“若返り効果”についても白澤氏は疑問を呈する。「彼の論文を読むと、NMNを投与するとたしかにNADが増えるという結果は出ている。とくに高齢のマウスは約2倍に増えています。その意味では効果がありますが、じつは長寿効果について、彼は論文ではひと言も触れていないんです。私も知り合いですが、彼は物事を大げさに言うところがある。というのも、彼は長寿関連の医薬品を販売する会社の経営陣のひとりだった。いまは別の会社に売却しましたが、そういう金儲けも彼の目標のひとつなんじゃないでしょうか」

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孫正義氏が投資した中国の通販サイト『アリババ』ではNMNが販売中

サーチュイン遺伝子を活性化するという触れ込みでかつて登場したのがレスベラトロールだ。これもNHKが火をつけたものだが、白澤教授は「レスベラトロールも結果的に寿命を延ばす効果は実証されていません。NMNもその二の舞になる可能性は否定できません。今回の番組はNHKの勇み足だと思います」と話す。とはいえ、否定的な白澤教授でもNMNの病気に対する薬効は認めている。「糖尿病やメタボ・認知症には効果が期待できると考えていいと思います」。難病の治療に役立てようと研究を進めているのが、国立精神・神経医療研究センターの荒木敏之部長だ。荒木部長は、かつて今井博士と同じワシントン大学に在籍し関連特許も取っている。「糖尿病で末梢神経がやられたり、脳梗塞で神経が壊れるメカニズムは同じなので、実験を治療に生かすことは可能でしょう。でも、副作用や摂取量の問題があるので、けっして万能薬とはいえないと思います」。長寿薬が完成するのはどうやらもう少し先のようだが、それまでわれわれ庶民は“腹八分目”で過ごして、サーチュイン遺伝子に頑張ってもらうのがいちばんかも。


キャプチャ  2015年1月27日号掲載


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