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【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(205) 『ゲームオブスローンズ』の世界観は人間社会そのものだ

現在、『スターチャンネル』や『Amazonプライム』等でシリーズ最終章が放映中のテレビドラマ『ゲームオブスローンズ』(HBO)をご存知でしょうか? 中世ヨーロッパ風の架空の世界を舞台に、7つの名家が血みどろの覇権争いを繰り広げるファンタジーで、2011年の第1シーズン(※日本では2013年放映開始)から最終章の第8シーズンまで、世界中のファンを魅了しています。この作品の凄いところは、ファンタジー設定の中に人間社会のあらゆる問題――権力の腐敗、裏切り、差別、そういったものが極めて露骨に出てくることです。男尊女卑も、低身長症のような人物に対する差別も遠慮なく描かれるし、それを撥ね返す人々のパワーも凄まじい。俳優たちも美男美女ばかりではなく、演技で見せるドラマなので、本当に没入してしまうんですよ。Nation State(※国民国家)という概念が生まれる前の本作の世界では、王国内で玉座争いをする名家の権力の源泉は忠誠心だけです。

これはまさにアメリカのドナルド・トランプ大統領やロシアのウラジーミル・プーチン大統領のような手法で、実際、海外のジャーナリストやメディアが現実の政治をゲームオブスローンズに例えるのは、最早定番化しています。しかし、その忠誠心は決して絶対的ではなく、裏切りや寝返りは日常茶飯事。正義など何の意味もなく、ただ人が殺し合う。そんな世界観を見続けるうちに、今の時代に多くの人が拠り所にしている忠誠心(※ナショナルアイデンティティー)というものが、相当に空虚であると実感させられます。これは、トランプ大統領やプーチン大統領に限った話ではありません。例えば、日本という国の歴史も、必然の連続で繋がったものではなく、偶然の産物なのではないか。教科書では“国家泰平”だったとされる時代でさえ、或いは“万世一系”とされる天皇制度でさえ、実際には度々裏切りや権力闘争が渦巻き、その結果として偶々今の形が残っただけではないか――。こうした俯瞰の視点を持つことは、決して無駄ではないでしょう。今、世界中で国家主義が吹き荒れていますが、これも線香花火が落ちる直前に燃え上がるようなもので、実際にはグローバリゼーションで国民国家やナショナルアイデンティティーが無効化する前段階なのかもしれない。

その“城”の中で生きてきた人たちは、外からの入植者に違和感や不安感を覚え、「新しく建て替える!」と嘯く裸の王様に熱狂したり、「うちの城は歴史がある」と砂上の楼閣にプライドを投影するような言説を支持したりする。勿論、国や民族に誇りを持つことを否定する気はありませんが、“城”の耐用年数がそろそろ限界に来ているというのも偽らざる事実です。日本にも、これから益々多くの外国人がやって来ます。好むと好まざるとに関わらず、それは避けられない。ならば、その未来に怯えて暮らすよりも、「抑々侵食される“城”などなかったんだ」と考えたほうがいいと思いませんか? 人類史上、国民国家という概念が支持され、機能していたのはほんの一瞬。その幻が崩壊し、新たな時代が来ることへの期待と、それが齎す社会的カオスへの危惧――。僕の中には両方が入り混じっています。皆さんは如何でしょうか?


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2019年6月3日号掲載
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テーマ : 海外ドラマ(欧米)
ジャンル : テレビ・ラジオ

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