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【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(210) 黒人差別を批判し続けたスパイク・リーが遂に見せた新境地

映画監督のスパイク・リーがプロデュースを手がけた『NETFLIX』の映画『シー・ユー・イエスタデイ』は、非常に現代的な素晴らしい作品でした。主役は天才的な頭脳を持つ高校生の黒人の男女で、タイムトラベルを可能にするリュックサックを作るというB級SFものっぽい始まり。ところが、少女の兄が白人の警察官に手違いで射殺されてしまい、それを救う為に2人が過去へタイムトラベルするところから物語は急展開し、黒人差別問題を新鮮な視点で絡めながらストーリーが進んでいきます。特筆すべき点は、SFというフィクションの中に、黒人差別に纏わる多面的な問題を内包させている点。“黒人vs白人”という2項対立構図に簡単に収束させず、黒人目線(※主人公の男女はカリブ海地域の小国であるガイアナからの移民という“マイノリティー黒人”です)で黒人社会の“あるある”を描いている為、自分が白人であるとか黒人であるとか、そんなことは関係なく、伝えたいことがダイレクトに響いてきます。過去のスパイク・リー作品は、基本的に“白人が黒人を差別する構図”を勧善懲悪的に描くスタイルでした。

例えば、ニューヨークのブルックリンを舞台にした1989年公開の『ドゥ・ザ・ライトシング』は、バラク・オバマ前大統領がミシェル夫人と初めて見に行った映画として知られ、高い評価も得ていますが、僕が当時見た時は、「昔に比べて差別もマシになったのに、何故分断と憎しみを煽るような映画を作るんだ?」と感じてしまった。多くの白人も、自分自身が責め立てられているかのような後味の悪さを感じたと思います。勿論、ハリウッドの世界で30年以上、作品を通じて黒人の怒りを訴え続けてきたスパイク・リーの功績には素直に感服します。彼が厳しく指摘してきたように、ハリウッドはあらゆる形で“ホワイトウォッシュ”をやってきた。今年のアカデミー賞で作品賞を含む3部門を受賞した『グリーンブック』にしても、そうした批判を受けています。グリーンブックは黒人ピアニス トと白人の運転手兼ボディーガードの交流を描いた作品で、1962年に実際に行なわれたコンサートツアーを元にしています。ただ、実はこの白人運転手兼ボディーガードは実際には存在しなかった人物。つまり、史実を捻じ曲げて、“心ある白人が可哀想な黒人を助ける”という感動ポルノに仕立てているという見方もできるわけです。

ハリウッドは今も白人中心社会で、こうしたホワイトウォッシュを常套手段とし、白人に向けた作品作りをしている――。アカデミー賞の受賞会場にいたスパイク・リーは、グリーンブックの受賞が発表されると席を立ち、無言の抗議をしています。スパイク・リーは、そのストロングスタイル故、話題作を発表しても、彼を支持するファンが熱狂する一方、社会には期待されたほどの対話が生まれなかったという側面もあります。ところが、今回のシー・ユー・イエスタデイで彼は新境地を見せた。全世界を市場とするNETFLIXが多様性を売りにしており、“対白人”という構図に拘る必要すらなかったからでしょう。このような作品が世に出て、多くの人が称賛しているのは、世界が変わりつつあることの証だと僕は思います。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2019年7月8日号掲載
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テーマ : 洋画
ジャンル : 映画

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