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【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(211) アメリカvsイラン、開戦ムードを喜ぶ悪徳4人衆“Bチーム”の思惑

安倍晋三首相のイラン訪問中、中東のホルムズ海峡付近で日本の海運会社が運航するタンカー等が攻撃された事件を巡り、アメリカとイランが激しい舌戦を繰り広げました。その最中に、同海峡周辺の上空でアメリカ軍の無人偵察機をイランの革命防衛隊が撃墜。緊張が日に日に高まっています。「タンカー攻撃の犯人はイランだ」とするアメリカ政府に対し、イランのモハンマド・ジャバド・ザリフ外務大臣はそれを全面否定した上で、『ツイッター』で“#B_team”というハッシュタグを使い、「ドナルド・トランプ大統領はBチームの言いなりだ」と批判しました。トランプ大統領は誰かの言いなりだと言われることを酷く嫌いますから、この威力は相当なもの。それに、イランの外務大臣がアメリカの大統領に「戦争したがっているのはどこのどいつだ?」と言い返すという状況自体、何とも異様です。では、“Bチーム”とは一体何でしょうか? この言葉は、イランに強硬姿勢を取る4人の“B”――アメリカのジョン・ボルトン大統領補佐官(※国家安全保障問題担当)、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子、アラブ首長国連邦(※UAE)のムハンマド・ビン・ザイド皇太子を指す造語で、恐らくザリフ外務大臣が使い始めたものです。ボルトン大統領補佐官は、国連を含めた“アメリカの権力を抑止する組織”を毛嫌いする超タカ派。ジョージ・W・ブッシュ政権時代からイラン主戦論の急先鋒で、長年に亘りイランの反政府組織『ムジャヒディン=ハルク(MEK)』と深い関係にあることも知られています(※MEKは嘗てアメリカ政府にもテロ組織と認定された過激派です)。現実的な中東和平ではなく、イランの現体制を何としても転覆させるという偏ったイデオロギーに囚われた人物が『安全保障会議(NSC)』のトップにいるというのは、やはり異常事態というしかありません。

ボルトンの原動力がイデオロギーなら、イスラエルのネタニヤフ首相は極めて利己的に、自国の有利なように中東地域のパワーバランスを動かすことを目的に、反イランを叫んでいます。また、実は最近、ネタニヤフ首相や彼の家族は多くの金銭問題を抱えており、その目くらましの為に“外患”を強く押し出しているとも指摘されています。排外主義的な右翼政党との連携にも前向きですし、シリアと領有権を争っているゴラン高原のユダヤ人入植地を『トランプハイツ』と名付けて巨大な石碑を建設するという、国内右派&トランプ大統領が大喜びのパフォーマンスも披露(※その前日にはネタニヤフ首相の妻に資金流用問題で有罪判決が下っていたのですが)。トランプ大統領はこのパフォーマンスに対し、ツイッター上で「ありがとう」と反応しています。そして、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子。同国の王室が「中東でイランと正面から戦える国は我々だけ」と主張し、殊更緊張を高めようとするのも、自分たちの国民に対する人道的抑圧等の国内問題を非難されるのを抑える為という側面が強くあります。特筆すべきは、アメリカとの付き合い方に関して、サウジアラビアには長年培った“悪知恵”がある こと。オオカミ少年のように「イランが攻めてくるかも」とアメリカ政府に吹き込めば、決まって自分たちの有利に事が運ぶ――。それを体現しているのが、トランプ政権に深く食い込んだムハンマド皇太子の振る舞いだと言っていいでしょう。UAEのザイド皇太子も、ほぼ同じ理由でイラン主戦論を主張します。ただ、サウジにしろUAEにしろ、実際は「イランと本格的に事を構えたくはない」というのが本音。イランを挑発してギリギリの緊張状態を保ち、西側諸国を取り込んで味方につけた状態こそが、自国の体制維持に最も都合がいいからです。「我々は西側の味方です、つきましてはご支援宜しくお願いします」というわけです。

つまり、Bチームの4人が繰り広げているのは、壮大なチキンレースとも言えます。“平和でないほうが儲かる”人々が、トランプ大統領に取り入って意のままに操ろうとしているという図式。そう考えると、ザリフ外務大臣の「トランプ大統領はBチームの言いなりだ」という揶揄は的を射た表現で、コピーライターとしては相当に優秀ですね。但し、実はイラン内部にも緊張の高まりを歓迎する勢力がいます。それは、正規軍とは別に存在する、宗教指導者直属の革命防衛隊です。報道によれば、国際社会からの経済制裁でイラン国内の物資が困窮する中、革命防衛隊は闇市を利用して相当な利益を上げているといいます(※その収益は年間1兆円以上とも)。要するに、宗教利権に紐付いたマフィア、或いは愚連隊のようなもので、彼らは彼らで平和よりも緊張状態を好む。これを国内に抱えるイラン政府の舵取りも大変でしょう。こうしたチキンレースがチキンレースのまま終われば未だいいのですが、問題はどこかでエスカレートし、例えばイランが核濃縮を本気でやり始めたり、それをイスラエルが攻撃したりといったようなことが起きた場合です。トランプ大統領も、Bチームに丸ごと乗っかる気はないけれど、基本的には来年の大統領選で再選されることしか考えていない。中東がどうなろうと知ったことではなく、理性的なブレーキを持っているかというと、かなり怪しい状況です。そこが今回の“アメリカvsイラン”の非常に怖いところでしょう。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2019年7月15日号掲載
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テーマ : 中東問題
ジャンル : 政治・経済

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