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【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(214) “正しい議論”の罠に落ちたリベラルを嗤うドナルド・トランプ大統領

アメリカのリベラルは、このまま自壊するのか――。来年の大統領選に向けた民主党候補者指名争いの討論会で、目を疑いたくなるような一幕がありました。唯一の黒人女性立候補者であるカマラ・ハリス上院議員が、最有力候補とみられているジョー・バイデン元副大統領に対し、40年以上前の出来事を持ち出して痛烈に批判。このパフォーマンスに支持者は喝采し、バイデン氏の支持率は低下、ハリス氏の評価が急上昇したのです。批判の的となったのは、当時、バイデン氏が『Busing』に反対したことです。Busingとは、教育上の黒人差別撤廃を目的とし、当時分断されていた白人居住区と黒人居住区の子供たちを“融合”させる為、互いのエリアにある公立学校に其々を交ぜ合わせてバスで通学させるという政策。当時、白人社会からは「急速な融合はハレーションを起こす」として、大きな反対の声が上がっていました(※私も一時、小学生時代にこの政策を導入した小学校に通っていましたが、日本人とのハーフという出自を理由に黒人居住区から来た生徒たちの標的となり、転校を余儀なくされました)。

「40年前、あの政策に反対したバイデンは人種差別主義者だ」というのが批判の趣旨です。しかし、バイデン氏は史上初の黒人大統領が誕生したバラク・オバマ政権時代の副大統領ですよ。既にBusingが必要なほどの差別は過去のものとなり、黒人の社会進出も進みつつある今、大昔の話を引っ張り出してこき下ろすことに何の意味があるんでしょうか? ハリス氏とは別の候補者の話ですが、民主党の討論会では、19世紀の南北戦争後に解放された黒人奴隷に対して、北軍政府が約束したとされる“40エーカーの土地と騾馬1頭”の補償が未だに与えられていないことに、謝罪と補償を要求するべきとの主張もありました。当時の差別が悪くなかったと言いたいわけではありません。しかし、今更150年以上も前のことを? そこまで言うなら、次は先住民に対する補償だって考えないといけません。そんな過激且つ過剰な“政治的に正しい”議論が、一部のリベラルに妙に支持されるような空気があり、ドナルド・トランプ大統領をずっと批判し続けている『ワシントンポスト』でさえ、「こんなバカげた議論をしていたら、またトランプ大統領に負けるぞ」と嘆いています。

何の実現性もないけれど、一部の人たちが当事者意識を持って熱くなれるネタを“正義の小道具”に使うのは、世界各国の弱体化した左派が陥りがちな罠。今やアメリカも例外ではないということです。SNS上では同じ主義主張の人々に称賛されても、これでは社会的な対話の中で意味のある声にはなりません。どんどん過激になり、極論を振り回す政治家と、その“純化した正義”に熱を上げる支持者たち――。こうした自己免疫不全の症状が一部に蔓延してしまうと、穏健な左派との分断が進んで、トランプ大統領を利するばかりでしょう。ハリス氏は最近もトランプ大統領の人種差別発言を強い口調で非難しましたが、これも正論ではあるものの、一歩引いて見るとトランプ大統領の土俵で戦っているように思えてなりません。リベラル派は“今のままで勝てるのか”という点について、今一度、省みる必要があると思います。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2019年8月5日号掲載
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テーマ : アメリカお家事情
ジャンル : 政治・経済

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