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【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(215) アメリカが北朝鮮を“核保有国”と認めようとしている?

ドナルド・トランプ政権は、北朝鮮の核の完全廃棄ではなく、核・ミサイル開発の“凍結”で折り合いをつけようとしている――。アメリカのニュースサイト『AXIOS』が米朝協議の裏側をすっぱ抜いた記事が、物議を醸しています。スティーブ・ビーガン北朝鮮政策特別代表が政府専用機内で語ったオフレコ話のリークを元にした内容で、ビーガン本人は後に否定したものの、どうやら本当にそう言ったらしいとの後追い報道も出ています。この話が現実となるなら、北朝鮮がウラン濃縮活動等を停止しさえすれば、アメリカ側は既に保有している核・ミサイルの完全廃棄は求めない。言い換えれば、北朝鮮を事実上の核保有国として認めることになります。実は、アメリカのリベラル派や元CIA幹部等一部の専門家の間にも、この方向性を支持する声が少なからずあります。特に、北朝鮮で実際に人道支援等の活動をしたことのある人々ほど、強くそう主張する傾向にあります。「北朝鮮は核を完全廃棄するつもりはなく、それを条件としている限り、朝鮮戦争は終結しない。このままでは、飢餓に苦しむ女性や子供等、北朝鮮の弱い立場にいる人たちを救うことができない」と。

確かに、それも一理あります。しかし、この“凍結シナリオ”を中国やロシアも以前から盛んに主張してきたことも、また事実です。若し凍結で済むなら、北朝鮮はそれと引き換えにICBMの開発を止め、アメリカ本土に対する核攻撃のオプションを破棄するでしょう。その一方で、現在、アメリカ軍基地が置かれている日本を射程に収めるミサイルは保持し続ける筈です。ここまでは常識的に考えればわかる話ですね。問題はこの先です。日米安保を含む東アジアでの影響力維持を“負担”と考えるトランプ大統領からすれば、アメリカに火の粉が飛ばないなら、たとえ日本や韓国にミサイル危機が残っても「そんなの自分で何とかしろ」というのが本音でしょう。それより、形だけでも朝鮮戦争を終結させたという実績や、中国との貿易交渉の進展という“実利”を取りにいく可能性は十分にあります。一方、北朝鮮は他の核保有国と同様に、“核を突きつけた外交交渉”を基本路線とするでしょう。日本に対しても、過去の戦争における賠償の話や経済援助の話等、相当強気に迫ってくる筈です。

問題は、アメリカメディアの報道を見ても、トランプ大統領本人の言動を見ても、まるでやじろべえのように奇妙に均衡した東アジアの微妙なパワーバランスを、アメリカが本当に理解しているとは考え難いということです。仮にアメリカが北朝鮮への敵対政策を解いたとして、それで人道的・政治的な正しい道が開け、朝鮮半島に平和が訪れるかといえば、かなり疑わしい。金正恩体制が飢えた人民に“分け前”を本当に届けるのか? 韓国がそういったことを本当に厳しく監視できるのか? クエスチョンマークは幾つも浮かびます。そして、北朝鮮が核保有国となることを、日本国内では急進的な改憲派や核保有論者が利用しようとするでしょう。それが現実となってから急に議論を始めても、パニックになるだけです。今から様々なシナリオを想定し、タブーなき議論が広く行なわれることを期待します。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2019年8月12日号掲載
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テーマ : 北朝鮮問題
ジャンル : 政治・経済

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