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【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(216) 遺体から心臓を抜き出すギャング『MS13』はアメリカが生み出した

アメリカで、不法移民の強制送還を担当する『移民・税関捜査局(ICE)』を巡り、左右の政治対立が激化しています。不法移民に対するドナルド・トランプ政権の不寛容政策に拒絶反応を示す左派の若者らが、ICEを「不法入国者の親子を引き離して収容する悪の機関だ」と断罪して廃止を訴え、それに民主党の一部議員らも便乗。一方、トランプ大統領は自身の『ツイッター』でICE職員らを擁護し、反対派の動きを厳しく牽制する等、不法移民問題が“政治ショー”の小道具となってしまいました。大前提として、アメリカ社会は不法移民を含む大量の移民に依存しており、彼らなくして成り立ちません。一方で、ICEが現行の取り締まりを止めれば、不法移民は際限なく増え、財政面でも治安面でも社会は立ち行かなくなるでしょう。しかも、実際のところ、不法移民の親子を引き離しているのはICEではなく、別の機関であるという事実も発覚。つまり、トランプ大統領の「メキシコとの国境に壁を造れ!」も、反対派の「ICEを廃止して不法移民の親子を救え!」も、短絡し過ぎているわけです。

そんな中、ホワイトハウスの公式ツイッターは、ICE廃止論に同調した民主党大統領候補のカマラ・ハリス上院議員を名指しして、「彼女はMS13を支持するつもりか?」と批判しています。『MS13』とは、エルサルバドルを中心に、グアテマラやホンジュラス等中米諸国、そしてアメリカで活動する巨大ギャング組織。強盗、殺人、麻薬や銃の密売等、あらゆる凶悪犯罪を行ない、殺害後に心臓を抜き取り、路上に放置する残虐なパフォーマンスでも有名です。トランプ政権は、「ICEを廃止すればMS13のような組織が野放しになるぞ。民主党はアメリカをそうしたいのか?」と挑発しているのです。ただ、「共和党がそれを言える立場なのか?」ということも指摘しておきましょう。東西冷戦期の1979年にニカラグアでサンディニスタ革命が起きると、エルサルバドルでも共産ゲリラが蜂起し、1980年代には多くの難民が生まれました。当時のロナルド・レーガン政権(※共和党)は、「左翼共産主義の被害者である難民を守るのはアメリカだ」という東側に対する当てこすりの意味で、多くの難民を受け入れました。しかし、彼らは英語を教わる機会もなく、仕事も宛がわれず、スラムに押し込められるばかりで、貧民街の治安は悪化し、一部はギャング化していきます。

そして、冷戦終結後には「内戦も終わったから」という理由で本国へ強制送還。勿論、帰国したところで仕事などありません。アメリカで鍛え上げられた不良たちは、本国の厳しい貧しさの中で益々強化され、その暴力性は次の世代へ受け継がれたのです。こうしてMS13は巨大化し、ホンジュラスやグアテマラまで権益を拡大。そして、“稼げる国”アメリカにも足場を作り、治安を脅かすようになりました。そんな経緯を無視して、“移民の脅威”ばかりを煽るトランプ大統領に対し、義憤にかられた左派の若者たちの心情は理解できます。ただ、ICE廃止論のように原理主義的に希望を押し付けるだけでは、寧ろトランプ大統領を利するばかりでしょう。リベラルは、ポピュリストが誘い込もうとするゲームに乗らず、現実を見据えるべきだと思います。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2019年8月26日号掲載
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テーマ : アメリカお家事情
ジャンル : 政治・経済

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