【2015年の世界を読み解く】(03) アメリカは内向きにならない…21世紀の新たな脅威は他国との連携なしに解決不能、国境なき世界の新秩序づくりに向けて前進せよ

私は第2次世界大戦の影、東西冷戦の夜明けの中で育った。父が外交官だったため、私は歴史の現場を間近で見る機会に恵まれた。父とフランスのノルマンディー海岸を歩き、米海軍の上陸用舟艇の残骸を目にしたときのことは一生忘れない。そのわずか数年前、膨大な数の若者がこの場所で自由のために命を落としたのだ。西ベルリンから東ベルリンへ、自転車で行ったときのことも忘れられない。そこには、自由な市民と『鉄のカーテン』に閉じ込められた市民の対照的な世界があった。それから長年が過ぎた今、私の心を打つのは当時の指導者たちの偉業だ。彼らは戦争に勝っただけではなく、平和を勝ち取った。共にそれを成し遂げた。

アメリカはさまざまな国と数々の同盟をつくり上げ、西ヨーロッパや日本や韓国に安定と繁栄をもたらした。かつての敵は新たな盟友になり、手を携えて生み出した国際経済システムが世界をより豊かにした。冷戦の最中でも、指導者は協力して軍備管理に取り組み、核兵器による世界の終わりを阻止した。実効性のある国際機構や同盟関係は、破滅的な世界戦争の再来を防いだだけではない。冷戦を終結させ、世界中で数億人の生活水準を引き上げた。そんな素晴らしい物語を20世紀は紡いだ。いま問われているのは21世紀の物語だ。世界は新たな難題に直面している。ロシアの攻撃的姿勢が同盟国を揺さぶり、原理主義者が各地の政府や市民を脅かしている。テクノロジーは統治する者とされる者の力関係の変化を加速させ、その変化は説明責任を容易にする一方で、民主的な政治制度の障害になっている。今や権力は階級ではなく、ネットワークの中にある。その変化に政治は適応できていない。戦後に生まれた国際制度や同盟関係には、維持と現代化の両方が求められている。




そうした激動を前に、「アメリカは“内向き”になれ」と訴える声もある。第2次世界大戦後もベルリンの壁が崩壊したときも、同じことを言う人々はいた。その意見は昔も今も間違っている。今ほどリーダーシップが求められている時代はない。これほど深くアメリカが世界に関与した時代もない。アメリカの助力で、アフガニスタンは初めて平和的で民主的な政権移行を果たした。アメリカは多くの血と財源を費やして、アフガニスタン国民の勝利に貢献した。この例は、ある国の統治が成功するためには、世界の側も責任を果たさなければならないことを教えてくれる。シリアの場合、実践的な外交と忍耐がなければ化学兵器の完全廃棄は実現しなかった。シリアの非道で恐るべき内戦を終わらせるには、同じことをしなければならない。アジアに目を移せば、バラク・オバマ米大統領と中国の習近平国家主席は先頃、そろって野心的な温暖化ガス削減目標を発表した。この事実は、真のリーダーシップがあれば国家が協力して何を達成できるか教えてくれる。2015年11~12月、パリで開催される国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)の成功には、さらなるリーダーシップが欠かせない。世界は変化し、私たちも変化している。もはや国境線は脅威を封じ込めず、世界は敵と味方にきれいに分かれていない。21世紀の今はあらゆる場所が“隣”だ。だからこそ連携の取れた外交が求められている。どの国も、自力ではテロとの戦いに勝てない。気候変動という脅威を解決できない。極度の貧困を撲滅し、感染症の蔓延を阻止し、核安全保障を強化することはできない。

世界に背を向けたら、より安全で豊かにはなれない。新たな仲間と共に協力の歴史をつくっていかなければならない。政府や市民社会、そして一般の人々と手を携えなければならない。いい例が、イスラム教スンニ派テロ組織『ISIS』(自称イスラム国・別名ISIL)への対策だ。60ヵ国以上が政治的・人道的手段や諜報活動を通じて、掃討作戦を支援している。成功のカギは、共通の敵に対して一致団結して何ができるかにある。エボラ出血熱も重要な緊急課題だ。アメリカは国連と協力して対策を活発化させている。私自身、各国の指導者50人以上と話をしているが、活動の連携なしに感染拡大は阻止できないという意見で一致している。課題はまだ多い。国益や能力が異なる国々が共闘するのは難しいが、必要なのは積極的な関与外交、古くからの信頼関係と新しい協力関係だ。違いを乗り越えて連携し、ISISとエボラ危機という2つの脅威を打ち負かすべく努力すれば、共通の問題を共同で解決する世界秩序に向けた動きを強化できる。アメリカなどの戦後の繁栄の基盤となった現在原則を強化するにも、各国の協力は不可欠だ。例えば、TPP(環太平洋経済連携協定)をめぐる交渉は世界貿易の3分の1、世界のGDPの40%を占める環太平洋地域諸国の合意を達成するという、オバマ大統領の決意を反映している。実現すれば、恩恵は計り知れない。推定によると、TPPによってアメリカだけで年間実質所得が計770億ドル増え、65万人分の新規雇用が生まれる。

相互安全保障のためであれ、繁栄の共有のためであれ、本物のパートナーシップは簡単には築けない。共通の目標に向けて前進するには、忍耐強い外交と意思の共有が欠かせない。アメリカの目標は数十年前も今も同じ――平和と繁栄、アメリカおよび世界中の同盟国の安定を実現することだ。 (アメリカ合衆国国務長官 ジョン・ケリー)


キャプチャ  2014年12月30日・2015年1月6日新年合併号掲載


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