ウルトラマン&仮面ライダー…“国民的ヒーロー”のとまどいと覚悟の現在地

昨年誕生した最新の『ウルトラマンギンガ』は現在、単独ではテレビ放映もされず、イベントでしか姿を見せない不遇の状況を強いられ、先日まで公開されていた映画『仮面ライダー大戦』を観た大人層のファンの中には、“平成ライダー”に不満がある人もいると聞く。そこで、『ウルトラマン』の生みの親・円谷英二の孫にあたり、ベストセラーとなった『ウルトラマンが泣いている』(講談社現代新書)の著者・円谷英明氏と、『仮面ライダー』を再構築し続けてきた東映株式会社に話を聞き、原点を守りながらも進化を模索する、ヒーローのいまに迫った。

1966年7月17日、午後7時19分。茶の間に集った子供たちは、テレビのブラウン管に吸い込まれるように身を乗り出した。そこには、いままで見たこともない巨大な宇宙人が胸を張っていた。光の国の戦士、ウルトラマン。子供たちは身じろぎもせず、邪悪な宇宙怪獣・ベムラーと必死に戦うウルトラマンの勇姿を見守り続けた――。そして1971年4月3日、午後7時33分。ブラウン管の中では、青いレーシングスーツに身を包んだ本郷猛が富士山の麓の公道をオートバイで疾走していた。その姿を追う不気味な集団。世界征服を狙う悪の組織・ショッカーが本郷に牙をむいた瞬間だった。子供たちはショッカーに捕らえられ改造手術を受ける本郷の姿に、恐怖とともに改造後の変身した姿を想像し、激しく胸を躍らせた――。『ウルトラマン』の放送開始から、すでに48年。『仮面ライダー』は43年目となる。ご存知のように、ウルトラマンも仮面ライダーも、子供たちからの圧倒的な支持を集め続けシリーズ化され、途中で中断の時期はあったものの現在も最新作が放送中だ。

では、国民的2大ヒーローの作品の源流に何が秘められていて、約半世紀にもわたり、それぞれの世界観を構築できたのか。それを解き明かすキーポイントは“子供たちのために”という制作者側の熱き志と“スポンジ”という言葉に集約されるのではないか。






“特撮の神様”と称された円谷英二の孫で、円谷プロダクションの6代目社長を務めた円谷英明は、次のように説明する。「祖父がウルトラマンを生み出した理由を端的に言えば『子供たちに夢を与えるため』だったんです。次の世代を担う子供たちに、自分たちが生み出す空想の世界を映像として提供することで、より心を豊かにし、限りない可能性とチャレンジ精神を育んでもらいたいという願いが込められていました」。生前、円谷英二はこんな言葉を残している。「私は常に子供の知識や知恵を吸収するスピードと柔軟性には驚かされている。まるでスポンジのようだ。一気に吸い上げてしまう。だからこそ、私は子供たちに次から次に夢を与え、彼らが吸い上げた先にある未来の社会に期待してしまう」

奇しくも、『仮面ライダー』の原作者・石ノ森章太郎も、生前に子供目線の重要さと“スポンジ”の効力を口にしている。「“仮面ライダー”のテレビ放映に関しては、企画段階でいろんな案が出ていたんだけど、どれもいまひとつでね。最終的にはいろんなキャラクターを描いて、その中からどれがいちばんカッコいいか、小学生の息子に選ばせたんだよ。そうしたら、息子が1号ライダーの図案をカッコいいと指さして、番組の制作がスタートしたわけ。僕はどんなときも、子供の直感を信じている。子供がなんの邪念もなくカッコいいと判断したものこそ受けると信じてもいる。だから、僕は“子供だまし”という言葉が嫌いでね。逆に、子供はそう簡単にだませませんよ。だますように、ひとつのアイデアを押し通して彼らが満足してくれるのであれば、僕らも苦労はしない。彼らはいろんな刺激をスポンジのように吸い上げて、しかもすぐにいっぱいにさせてしまうんだね。そして、すぐに空のスポンジを作り、次の刺激や知識を吸収しようとする。そのたびに、僕らはいつも新しい何かを生み出す努力をしなければならない。その積み重ねが魅力ある世界を作り上げていく原動力になっていくんだよ」

『ウルトラマン』の平均視聴率は当時、36.8%を記録。“子供たちの夢のために”という志と信念は、半年間の時間を置いて、1967年10月から放送が開始された『ウルトラセブン』へと引き継がれる。ウルトラマンの制作で培った特撮技術、また脚本家たちが紡ぎ出す綿密な完成度の高いシナリオと相まって、『ウルトラセブン』は例を見ない特別な特撮作品へと昇華していった。いま見ても、セブンや怪獣・宇宙人の造形美、メカニックのリアル感は群を抜いている。しかし、『ウルトラセブン』の特撮作品としての完成度が皮肉にも、その後のウルトラマンシリーズの越えられない高い壁となり、円谷英二が掲げた“子供たちの夢のために”という信念が揺らぐほどの障害となってしまったのだ。

円谷英明は、こう言う。「“セブン”は突出した作品でした。円谷プロには“セブン”以降、若い優秀なクリエイターたちが集い、新しいシリーズのウルトラマンをつくり上げていきましたが、誰もがどこかで“セブン”を意識していたのは間違いないです。つまり、新しいウルトラマンで“セブン”の世界を超えようとしたのです。その意気込みが空回りしたシリーズもありましたし、あえて“セブン”を否定しようとがんばったけど、肩に力が入りすぎて消化不良の作品があったことも事実です。いや、“セブン”以降のウルトラマンシリーズは、どの作品も自信を持ってお茶の間に届けることができたという自負はあります。それぞれのウルトラマンにもファンはいますし、いまでも深く愛されています。ただ、作品の目的が『子供たちの夢のために』よりも、なんとか“セブン”を超えたいという作り手側の性が勝ってしまったように思います」

一方、仮面ライダーはこれまでに、何度かシリーズを中断している。その理由を長年、ライダーの番組制作に携わってきた、東映株式会社専務取締役・テレビ事業部門担当の鈴木武幸が説明する。「例えば、“仮面ライダーRX”の放送終了から、平成ライダーシリーズの1作目である“仮面ライダークウガ”の放送開始まで10年間休んでいますが、それは意図的に休止していたんです。それまでの各シリーズも作品自体のクオリティはキープしつつ、人気も高かったので、休む必要はまったくありませんでしたが、大人の都合だけで番組を作り続けていたら、よい作品にはならないと思ったんです。私たちが常に忘れてはいけないと戒めているのは、ヒーローは時代とともにあるということ。時代がヒーローを求めない限り、作品を作っても意味がない。私たちが陥りやすいのは、1971年の“仮面ライダー”のヒットを正解だと思い込んでしまうことなんです。当時の成功例を引きずったままだと必ず行き詰まると感じていましたし、それこそ時代を反映するヒーローでなければ生き残れない。ですから、“クウガ」までの10年間、時代を背負えるヒーロー誕生の時期をじっと待ち続けていたんですよ」。“時代”という言葉を“子供”に置き換えてみると、腑に落ちる。

つまり、平成ライダーシリーズは、鈴木の言葉どおり、1作ごとに過去の作品の成功を引きずることなく、そのときの子供が望む新しいライダーの世界観をつくり上げてきたのだ。東映株式会社テレビ商品化権営業部長の篠原智士も、次のように説明する。「仮面ライダーシリーズが、なぜ40年以上も子供たちを夢中にさせているか。それは変革を続けているからなんです。というのも、前の作品をイチから壊していかないと子供たちの関心が続かないんです。子供たちの関心はひとつの出来事に対し、3ヵ月くらいしか持続しません。その時期が過ぎると、また違う興味あるものに心奪われてしまう。そんな彼らに1年間、番組を見続けてもらうには、次から次に新しい展開を提供していかなければいけません。もちろん、新展開に往年のファンからクレームがつくのは承知の上です。あのライダーは仮面ライダーとはいえないと文句がくるのはわかっていて作っています。ただ、子供たちにインパクトを与えるために当たり前なことをやり続けているんだという腹のくくり方が作品を作り続けていく大事なモチベーションのひとつとなっていますし、崩すことが必然であると言い切れるところまで、昇華させていきたいんです」

鈴木もこう、言葉を紡ぐ。「いまのライダーの現場には、前作を否定できるクリエイターを登用しています。自分のライダーを作れる人、仮面ライダーはこうあるべきだといった聖域を壊していける人たちが、平成のライダーを支えているんです」。何より興味深いのは、時代を背負える仮面ライダーを生み出すため、あえて過去の成功例を顧みない手法がとられているなか、その根底には石ノ森章太郎のライダーに対する魂が脈々と制作現場に受け継がれているということだ。

子供はすぐにスポンジいっぱいに好奇心を吸収し、次の刺激に備え自然と新しいスポンジを用意する。ゆえに、現在のライダーの制作スタッフたちは死に物狂いで数多くのアイデアをひねり出し、子供たちが新しいスポンジを満たす要求に応えようとしているのだ。「すべて子供中心に考えていかないと、ライダーの世界は成立しません。付属するグッズの売り上げも好調ですが、それもこういう商品を提示したら子供たちが喜ぶというアプローチではなく、子供たちが喜ぶのはなんなのだろうと考えることから始めています。子供にはごまかしが利きません。そして、子供の関心に応えられるものは、間違いなく大人の鑑賞にも堪えられるんです」(篠原)。「過去を引きずらず、過去の成功例さえも壊していますが、ただそれでも1971年当時から、ずっと変わらない子供たちに向けてのメッセージはあります。それは“無償の愛”。ヒーローは自分の行為に見返りを求めない。今後、ライダーがどのような進化を遂げるかわかりませんが、このメッセージだけは、どんな時代を迎えようとも不変だと思います」(鈴木)

仮面ライダーは変わらぬテーゼを踏襲しながら、いまこの瞬間も生まれ変わり、成功を収めている。そのかつてのライバルを横目に、円谷英明は最後、こう語った。「あくまでも私個人の意見になりますが、ウルトラマンの存在はもう、役目を果たし終えたと思っています。ただ、作り手側が子供たちの夢のために何かを作り出そうと願ったとき、時代は再び強いウルトラマンを求めるでしょう」。平成ライダーは変わらず進化を重ね、『ウルトラマンギンガS』もこの7月よりついに地上波放送が始まるという。円谷英二と石ノ森章太郎の魂は、今も継承者たちによって子供たちの心のスポンジに正義と勇気を与え続けているのである。 《敬称略》

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キャプチャ  2014年6月23日号掲載
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