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【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(232) 少しのニュアンスの違いで読後感は大きく変わる…翻訳記事にご用心!

海外メディアは日本をどう見ているか――。日本人が大好きな報道の切り口ですが、外国語の記事を翻訳した日本語記事は、しばしば原文と異なる印象を読者に与えます。明らかな誤訳は兎も角、単語の微妙なニュアンスを変える、一部を訳さないといった形で、コンテクスト(※文脈)を歪めた翻訳記事がそのまま流通していることは珍しくありません。最近、僕が気になった記事のひとつが、『ニューズウィーク日本版』に掲載された“トランプがマイナス金利にご執心!? 日本はトクしていると勘違い?”という記事。原文は、アメリカの外交メディア『フォーリンポリシー』にウィリアム・スポサトというコラムニストが書いたものですが、英語の原文と翻訳記事とを読み比べてみると、(特に日本に関する記述については)読後感はかなり違うものになっています。記事の主要テーマは、ドナルド・トランプ大統領が『連邦準備制度理事会(FRB)』に対して、「アメリカも日本のようにやればいい」と金利引き下げによるドル安誘導を強く求め、それに反対するFRB議長を“bonehead(間抜け)”等と批判していることです。

これに関連して、原文記事では日本のマイナス金利政策の問題点を相当強い口調でこき下ろしているのですが、日本語の翻訳記事ではそのトーンがかなり弱められています。例えば、原文には“Fantasy World(嘘の世界、御伽話の世界)”という痛烈な表現があり、これは“お花畑”より強いトーンで、「お前ら何を考えているんだ?」に近いニュアンスです。しかし、日本語記事ではそれを“経済ディストピア”というかなり柔らかい言葉で訳した結果、原文の「どうしようもない日本の金利政策を真似してどうする」というコンテクストが大きく変わってしまっているんです。但し、ここが微妙なところで、これは単語毎の翻訳としては間違っているわけではありません。嘗て僕も英語記事の翻訳業務に携わったことがあり、その経験から言うと、巧みな技を使った“作為”を感じます。それは何かといえば、日本の読者への配慮。もっと言えば、「日本は世界に一目置かれ、尊敬されている」と思いたい読者、更に踏み込めば、「日本は素晴らしい」という話を読みたい読者に対する配慮です。

韓国のGSOMIA破棄騒動でも似たような傾向がありました。「アメリカ政界全体が韓国にカンカンである」「非難の大合唱だ」といったニュアンスの翻訳記事が幾つも流通しましたが、はっきり言って、現在のアメリカ政府にとって対韓・対日関係の優先順位は低く、“韓国非難の大合唱”という実態はありません(※「トランプ大統領は韓国の問題を見誤っている」という批判はありましたが)。これも、「アメリカに韓国を懲らしめてほしい」という日本の読者の“願望”に歩み寄った書き方なのではないかと考えています。今回は右派への“配慮”が透けて見える例を挙げましたが、勿論逆のパターン――日本の政権を批判したい左派メディアが、海外の記事を都合よく翻訳し、利用するケースも多々あります。問題は、以前はタブロイドの専売特許だったこのような手法が、主要メディアにまで蔓延しつつあること。この潮流がある限り、僕の仕事はなくならないというのは、あまり笑えない冗談です。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2019年12月23日号掲載
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テーマ : 報道・マスコミ
ジャンル : 政治・経済

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