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【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(233) コンセンサスを失った社会はどこへ進むのか?

スター歌手のテイラー・スウィフトと大物音楽マネージャーのスクーター・ブラウン氏の対立が、アメリカの音楽業界を騒がせました。今年6月、テイラーの過去楽曲の原盤権を獲得したスクーター氏に対し、テイラー側が「自由に曲を歌えなくなった」と猛反発し、SNSにファンを焚きつけるような投稿をすると、最終的には一部のファンがスクーター氏の家族へ複数の殺害予告を送るまでに騒ぎが発展してしまったのです。当初、メディアを含む世間には、明らかにテイラー側を応援するような雰囲気がありましたが、様々な情報が出てくるにつれ、「そう単純な問題ではなさそうだ」と困惑の色が広がりました。特に、テイラー自身が忌み嫌うドナルド・トランプ大統領と同じようなやり方(※SNSでの過激な振動)でファン(=支持者)を焚きつけたことは、何とも言えない後味の悪さを残す結果となりました。

一昔前なら、恐らく双方が大手メディアの取材を受け、(良くも悪くも)プロによる編集を経て、情報が表に出たでしょう。ゴシップメディアが場外乱闘を繰り広げたとしても、市民の側に“報道”と“ゴシップ”を分ける心理が働いた筈です。しかし、今やこうした争いの当事者は、都合のいい主張をSNS等でいくらでも発信できる。そして、それが正しいかどうか、偏っているかいないかという判断は極めて難しい。情報のチャンネルが圧倒的に増え、情報を正しくすることが困難な時代になったとも言えます。今回の件は“芸能ニュース”ですが、政治にも同じような構図があります。あらゆる議論とそれに対する反論、真偽不明の情報――。その濁流に呑まれた社会は、民主主義において極めて重要な“何が一番マシなのか”という判断を下す力を失いつつある。僕は最近、これを“コンセンサスロス”と呼んでいますが、社会的な合意形成が成立し難くなっていることは間違いありません。そして、日本の安倍政権が目指す憲法改正を阻む最大の障壁も、若しかしたらこのコンセンサスロスなのかもしれません。

近年、世界で台頭する政治家の多くは、「最早、社会のコンセンサスは取れない」ことを前提とし、過激な主張で“51%”を取りにいこうとするポピュリストです。一方、安倍首相はどうも昭和型のコンセンサスビルド(※世間の機運醸成)で、“ふんわりと愛国の空気を定着させたがっている”ように思えますが、今の時代、それは望み薄でしょう。例えば、2020年の東京五輪で日本人選手が大活躍し、その直後に韓国が何らかの“粗相”をするといった具合に、あらゆる愛国心のピースが出揃ってナショナリズムが最高潮に達したとしても、それは“瞬間風速”でしかない。「安倍首相が一番マシだ」という現状の手法では、消極的支持を集めて衆院選に勝つことはできても、改憲というドラスティックな変革を起こすことは難しいのです。嘗てジョン・F・ケネディ大統領は、宇宙開発の進展を公約に掲げて、国民の意識をある程度統合することに成功しました。しかし、このような文脈では、今や政治は前に進まない。そんな時代に、ポピュリズム以外の真面な選択肢をどう作るのか? これは、人類が2020年代に積み残した宿題となるのかもしれません。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2019年12月30日号掲載
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テーマ : 国際問題
ジャンル : 政治・経済

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