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【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(234) アメリカ軍内部に“親ロシア派”兵士が激増という衝撃!

東西冷戦期から国際情勢をウォッチしている人には信じられないような話ですが、アメリカ軍内に“親ロシア派”が急増しているとの調査結果を、アメリカの国営メディア『ボイスオブアメリカ』が報じました。『レーガン財団』が2019年10月に発表した国防に関する年次調査によると、アメリカ軍世帯(※軍人のいる家庭)の実に46%がロシアを味方と見做しており、ペンタゴン(※国防総省)は親露感情の高まりに危機感を覚えているとのこと。やや乱暴ですが、日本に置き換えてみれば、自衛隊員の半分が北朝鮮や中国にシンパシーを覚えているような状態に近いわけですから、この調査結果は衝撃的です。ただ、この傾向は軍だけのものではありません。同じ調査では、アメリカ国民全体でも、ロシアを味方だと思う人が、前年の19%から28%へと急増しているのです。言うまでもなく、親露派急増の背景には、ロシアによるインターネット掲示板やSNSを主舞台としたプロパガンダ作戦があります。その特徴は、心理戦の対象が一般人(※軍の末端を含む)であること、そして“低資本・高戦略”であることです。ロシア経済が苦境にあるのは周知の通りですが、SNSというブーストを利用することで欧米諸国の世論をかき乱し続けているのです。その実例のひとつが、ドナルド・トランプ大統領が当選した2016年のアメリカ大統領選挙にロシアが介入したとの疑惑でしょう。選挙戦当時、トランプ氏の敵陣営である民主党有力者らのEメールが機密暴露サイト『ウィキリークス』で次々と公開され、スキャンダル化しました。

主宰者のジュリアン・アサンジは一時、陰に陽にロシアの庇護を受けており、一連の工作にロシアが深く関与した疑いは濃厚です(※その後、アサンジは用済みと見做されたようで、今年4月にイギリス警察により逮捕されましたが)。こうしたハードなハッキングのみならず、ソフトパワーも大いに使われました。ロシア政府系通信社『スプートニク』のような一般メディアを装ったプロパガンダ機関から、露骨に白人至上主義や陰謀論を唱える極右系サイトまで、ロシアはトランプ陣営に有利になるような記事をばらまく工作を仕掛けた。それを一般市民だけでなく、アメリカの右派放送局『FOXニュース』のような巨大メディアまでもが拾い上げ、拡散したことで、様々なレベルの陰謀論や白人至上主義的な言説が社会に浸透していったのです。この傾向は今も変わっていないどころか、寧ろ加速していると言っていいでしょう。但し、それにしても“アメリカ軍世帯の46%が親露派”という数字は、一般のアメリカ国民と比べても異様です。その理由はひとつではないでしょうが、幾つかの補助線を引いて考えてみましょう。先ず、アメリカ軍内には以前からネオナチ(※反ユダヤ)、ミリシア(※アメリカ政府を“影の敵”と見做す民兵組織)といった白人至上主義の流れを汲む陰謀思想に共鳴する者が、一定数いたと思われます。それでも、嘗ては其々が“点”でしかなかったものが、SNSの登場で“布教”や“勧誘”が容易になり、トランプ旋風という強烈な追い風もあって、益々広がっているのが現状ではないかと推察します。軍人の世界は抑々特殊な閉鎖社会である上、戦地での負傷により後遺症が残ったり、心的外傷後ストレス障害(※PTSD)等の精神疾患を抱えたりと、一般市民以上に疲弊し、また自分の状況について政府に不満を持っていることも多いでしょうから、よりロシアの心理戦が染み込み易いと言えるかもしれません。

そんな中、12月9日にはアメリカ軍を揺るがす事件が発覚しました。2001年9月11日の同時多発テロを受けて開始されたアフガニスタン軍事作戦において、アメリカ軍幹部やアメリカ政府高官らは作戦が失敗していることを認識していながら、まるで成果を上げているかのような“隠蔽工作”を長年続けていたことがすっぱ抜かれたのです。この戦争ではこれまで2400人以上のアメリカ兵が死亡し、更に多くの退役軍人がPTSDを抱え、自殺者も数多くいます。今回の隠蔽工作の発覚で、戦いに疲れた軍人やその家族が、エスタブリッシュメントへの不信感を募らせることは確実です。それが回り回って、ロシアが仕掛ける陰謀論への更なる共感へと繋がっていく可能性は否定できません。そして皮肉なことに、トランプ大統領自身の政治スタイルは益々旧ソ連スタイルまっしぐらです。ロシア疑惑にしても真面に反論するのではなく、「そっちこそどうなんだ?(What about?)」と白黒反転させて相手に返す。これは旧ソ連のお家芸(※whataboutism)そのものです。リベラルメディアは「あんなものを信じてはいけない」と必死で訴えますが、トランプ支持者は馬耳東風で、全く聞く耳を持ちません。今後、益々陰謀論者、白人至上主義者の声が、インターネットを中心に大きくなるでしょう。以前なら、こうした極端な意見の広がりはアメリカ社会のコンセンサスにより押し潰されていましたが、社会が分断された現代では、こうした動きが小さなところから伝染病のように拡大していくのです。このままいけば、2020年秋に結果が出る大統領選も、トランプ大統領を中心に回ることは確実。2020年代も世界は混迷を深めそうです。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。『スッキリ』(日本テレビ系)・『みんなのニュース 報道ランナー』(関西テレビ)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送)・『けやき坂アベニュー』(AbemaTV)等に出演中。近著に『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)・『悪くあれ! 窒息ニッポン、自由に生きる思考法』(スモール出版)。


キャプチャ  2020年1月13日号掲載
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テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

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