池上彰のコラム不掲載・門田隆将を抗議書で恫喝――今一度語る“朝日新聞の病巣”

『信頼される新聞とは――朝日新聞“誤報”問題に学ぶ』と題したシンポジウムが1月23日、毎日新聞労働組合主催で開かれた。当事者たちが改めて語った“教訓”を再掲する。 (本誌 北川仁士)

従軍慰安婦を巡る吉田証言と福島第1原発事故の吉田調書。2つの“誤報”はなぜ起きたのか――。連載コラムをいったん不掲載とされた池上彰氏と、週刊誌などでの批判記事に抗議書が送りつけられた門田隆将氏、それに慰安婦報道の検証を担当した朝日新聞大阪社会部の武田肇記者という“当事者”たちが、改めてその教訓を語った。

口火を切ったのは門田氏。福島第1原発所長だった吉田昌郎氏(故人)を事故後に唯一直接インタビューし、吉田調書報道を直後から「虚報」と断じた。「昨年5月20日、朝日の吉田調書報道に接して仰天した。私が聞いていた事実と全く違う。それに記事の内容が、見出し(『所長命令に違反 原発撤退』)の示すものを表していない。誤報でなく意図的なものではないかと考えざるを得なかった。目的をもって事実をねじ曲げるのが朝日のジャーナリズムなのか、と感じた」。門田氏はその後、吉田調書を入手し「普通に読めば、所長命令に違反して撤退したということにはならない」と再認識したという。「後で入手した読売新聞も共同通信も『東日本壊滅の危機』など、現場はこんなにすごいことになっていたという部分を見出しにしている。朝日の記事は合理性に乏しく、構成・正確性に問題があった。第三者委員会の報告には、『昨年8月まで幹部が調書を読んでいなかった』とあってショックを受けた。これは社内で議論されたのか?」と朝日の武田記者に問うた。武田記者は社内議論になったことを伝え、「私も、最後の局面まで吉田調書を共有したのが3人だけだったことに驚いた」と述べた。




また、朝日新聞が慰安婦報道の誤りを認めた検証記事について、コラムに「過ちを訂正するなら、謝罪もするべきではないか」と書いていったん掲載を見送られた池上さんが発言。「朝日はコラムを“休載”としたが、私は連載は終わりと思っていた。再生への取り組みを始めたので、監視という意味で今月から再開しますということ。慰安婦報道については、歴史家の秦郁彦さんが産経新聞におかしいと書いた段階で訂正できた」と指摘。「32年間も放置した検証がなかった。それに、訂正しておわびがなかったのは何で?」と、改めて疑問を呈した。武田記者は、指摘に答える形で内情を明かした。「おわびについては、検証に携わった記者たちの間でも話し合いました。しかし、吉田証言を取り消して深くおわびすることで、『慰安婦の女性が意に反して性の相手をさせられた』という部分も取り消すということにならないだろうかと、一部異論はあったが『おわびにそぐわないのではないか』という結論になった。今考えると、内向きの考えでした」。また、検証チームを立ち上げた木村伊量社長(当時)が、「朝日新聞としてよりよい未来を築くため、過去の負の歴史を直視し伝えないといけない。誤報問題を検証しないと説得力を失う。2日間の特集は闘争宣言である」と話していたことを明かし、「検証は中途半端なもので、その思いは読者に届かないままとなりました」と振り返った。会場には、最初に朝日の慰安婦報道に疑問を呈し、池上さんも発言の中で紹介した秦さんの姿もあり、飛び入りで参加。「慰安婦問題への朝日の理解は変遷しています。当初は『強制連行があった』としていたが、ないとなって『広義の強制性』に変わり、次に『性奴隷』、一番新しいのが『女性の人権侵害』です」と指摘。そのうえで「官憲による組織的な強制連行はなかったと言える。当時、慰安婦募集広告が朝鮮の新聞に出ており、強制連行の必要はなかった。慰安所における生活条件は、居住を除き外出・廃業帰国・接客拒否の自由はあった。慰安婦は高収入で兵隊の数十倍を得ていた」と自身の調査結果を述べた。

一方、朝日新聞は一連の誤報で日本を貶めたとして「売国」「国賊」などと批判された。こうした言葉についても議論された。門田氏は「朝日新聞は日本を貶めた」と表現したことに触れ、その理由を語った。「“強制連行”とはすごい言葉。女性を引っ張って慰安所に閉じ込めて、拉致監禁・強姦を国としてやったということ。この報道で、日本は世界でいわれなき批判を浴びている。事実をねじ曲げて、単に誤報ですからという気持ちがある。日本を貶める目的があるのではないかと思う」。一方、池上氏は従軍慰安婦報道訂正の“放置”について、別の見方を示した。「32年間訂正しなかったのは、日本を貶める意図ではなく、朝日が典型的な日本の企業だったからでは。不良債権問題もそうだったが、(自社の)過去を批判すると上司や先輩などを批判することになり、自分も危ない。だから、『そのうちみんな忘れるよ』と問題を先送りしてきた結果では。不良債権問題では『これは不良債権ではない』と区分けすることで言い逃れしてきたが、強制連行の話も同じではないかと思う」。そして池上氏は、今回の問題で新聞業界内の対応にも言及。「朝日叩きが激しくなるにつれて、『反日』『売国』など聞くに堪えない言葉が出てきたことにも違和感がある。朝日はおかしいが、批判の仕方もおかしい。“商売敵の泥仕合”と受け止められ、新聞全体で読者離れを招いたのではないか」と苦言を呈した。

最後に、新聞の信頼回復に向けて――。門田氏は「毎朝“気付き”を運んでくれる新聞の役割は大きく、日本には必要。論評はどんどんやればいいが、客観報道でねじ曲げるのは問題だ」と指摘。池上氏は「東日本大震災のあの日、避難所に夜遅く河北新報の号外が届いた。情報がない中で、みんなむさぼるように読んでいた」というエピソードを紹介。「(私が勤務した)NHKにも、自分なりの理想、世の中をよくしようという使命感を持って入ってきた人が多かった。そうした中で(報道の)“目的”が優先し、事実に謙虚になることを忘れてしまったのではないか。(震災被害者が号外で初めて被害の全体像を知ったように)物事の全体像が見える記事を書いてほしい」と呼びかけた。


キャプチャ  2015年2月8日号掲載


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