早稲田、陰るブランド――ラグビー・駅伝、スポーツ“覇者”今は昔…伝統の重み、変革の壁に

「ラグビーは帝京大学に歯が立たないし、駅伝も東洋大学や駒沢大学に劣勢だ。人材が集まる割に最近の早稲田大学はイマイチじゃない?」。日経MJデスクが2人の記者に問いかけた。2人は早大の体育会出身。文武両道を追い求める早大にとってスポーツの低迷はブランド力低下にもつながる。「確かに勝ちきれないですね。探ってみます」とOB記者は都の西北へ向かった。

●ラグビー
全国大学選手権で最多15度の優勝を誇る名門・早大ラグビー部。カリスマ性のある清宮克幸監督(現ヤマハ発動機ジュビロ監督)らが率い2000年代は5度、日本一に輝く“黄金時代”を築いたが、近年は大学選手権で帝京大に5連覇を許している。「まさか彼が早大をけるなんて……」。昨年、高校ラグビー界でちょっとした話題があった。今春、大学に進学した全国高校大会(花園)で優勝経験を持つ関東のある強豪校のフォワードの選手。早大など複数の有名大学の推薦入学の勧誘を受けながらも、結局選んだのは帝京大だった。






この高校はかねて早大に多くの選手を送り込んでいる。現在も帝京大に在籍する選手もいるが、伝統の『赤黒ジャージー』に憧れるも夢かなわず、といったケースが多かった。ラグビーだけでなく、その後の就職などを考えると、帝京大を学力レベルで上回る早大を選ぶのが常だった。時代は変わった。ある強豪高校の監督は「上(トップリーグ)でもラグビーを続け、日本代表を目指すなら、きっちりとした理論を持ってラグビーに取り組んでいる帝京大や東海大学を選手に薦めたい」と打ち明ける。

今年1月12日。全国大学選手権決勝で対戦した早大と帝京大の試合を見て、両校選手の“体幹”の違いに驚いた人も多いはずだ。スコアは41-34と競ったが、密集戦などでは帝京大が圧倒。数字以上の完勝だった。帝京大がライバル校を圧倒しているのは、体づくりの面だ。2011年春にスポーツ医科学センターを設立。管理栄養士やトレーナー・フィジカルコーチなどの専門家が、科学的に競技力を向上させる方法を実践、検証し、無名校出身の選手を輝かせる土台ができている。加えて監督だ。早大の監督はOB会が推薦し、学生の承認を得たうえで、部長が任命する、というプロセスで決まる。ラグビー部OBが就任する流れだ。一方、帝京大は日本体育大学出身の岩出雅之氏が1996年に就任。以後、監督を務めており、現在の肩書は『医療技術学部スポーツ医療学科教授』だ。OB会組織を軸に純血主義を貫く早大とは対照的だ。

●駅伝
正月の風物詩ともいえる箱根駅伝。2014年1月の大会直前に発売された駅伝の特集雑誌の表紙には東洋大・駒沢大を意味する“2強対決”の文字が並ぶ。その雑誌は2年前まで早大を含めた“3強”という表現を使っていたが、『W』のユニホーム姿は表紙のどこにもなかった。

この数年で大学駅伝の勢力図は大きく変わった。直近5大会を振り返ると、東洋大と駒沢大の2校は必ずトップ3に顔を出すが、早大は2011年に優勝したほかは最高でも4位止まり。優勝争いに絡めないまま終わる大会も珍しくない。早大に優秀な選手がいないわけではない。今年早大に入った長距離選手について、高校時代の自己ベストを見ると全国ランキング30位以内に入る選手は4人。東洋大(3人)や駒沢大(同)よりも多い。問題はこれらエース級といわれる選手らを支える“準エース”の存在。一般入試などを通じて入ってくる学生らが担うこの層の厚みで、駒沢大・東洋大に後れを取っているのが現状だ。駅伝もまた、伝統が強みになる一方、弱みにも。部活動はOB・OG会からの手厚い援助に支えられている部分が大きい。このため声も大きく、選手起用でも監督の一存だけでは決められないといわれる。練習も昔ながらの方法のままだ。経営資源を生かし切れない老舗企業のようで、革新が欠かせない。

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早稲田大学の“文”はどうだろう。上場企業のトップの出身大学をみても、早大は200人強と慶応大学に毎年100人前後の差を付けられている。約60万の累計卒業生を抱える早大に対し、その半分程度しかいない慶大だが、その差はなかなか縮まらない。大学別の自然科学分野の年間論文数では東京大学がこの5年で2割超まで増えたのに対して早大は1割増にとどまる。医学部がない不利もあるが、増加スピードは遅い。2014年度大学入試の志願者数は10万5424人と、前年度から1000人強減った。2010年度に明治大学にトップの座を明け渡したのに続き、『近大マグロ』で知名度を上げた近畿大学にも追い抜かれ3位に後退した。インターネットの進化で世の中の変化は激しく、“いい大学、いい会社”信仰は弱まっている。少子高齢化に伴う中堅以下の危機感は強く、近畿大学など中堅大学はイメージアップ、カリキュラムの改革に必死だ。大学のブランド力は企業と違い、急には落ちない。それ故に改革は進みにくい。Wは今も強い。だが成長がなければブランドだけを“持っている”名門に終わる悲劇が待つ。

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               ◇

早稲田大学の“武力”はどうなるのか。体育各部を統括し、活動を支援する土屋純所長に話を聞いた。

――体育各部が優勝から遠ざかっています。
「スポーツ全体で見れば、決して悪い成績ではない。早稲田には44の運動部があるが、昨年はそのうち13の部活で全国大会優勝を果たした。ただ、野球・ラグビー・駅伝といった有名スポーツで最近結果が残せていない。他大学も力を入れており、競争が激しい」

――スポーツが優秀な学生の取り込みに苦戦しているように感じます。
「2003年に設立したスポーツ科学部を中心に、スポーツの活動実績を評価する推薦入試も実施している。だがスポーツ推薦・自己推薦入試で入った学生が運動部全体に占める割合は27%程度。一般入試(30%)で入ってきた学生よりも少ない。早稲田ブランドを頼りにして『優秀な学生が自ら入試を受けてでも入ってきてくれる』という期待は大きかった。今はそれだけでは難しい」

――各部とも長い伝統があります。
「100年近い歴史を持つ部活動が多く、それらはOB・OGの支援も手厚い。活動資金のほとんどをOB・OGの寄付金に頼る部もある。だが他大学を見ると、大学が一体となってスポーツに秀でた学生の取り込みや、練習環境の整備などに取り組んでいる。早稲田も今後はOB・OGに頼りすぎず、奨学金制度の充実などが必要だ」

――具体策は。
「体育各部に所属する学生の学習支援を手助けする“早稲田アスリートプログラム(WAP)”を今年から始めた。学業成績が優秀な部・個人を表彰したり、アスリートとしての立ち振る舞いや、卒業後のキャリア形成まで支援する。学業にも励む環境を整えることで“文武両道”を実現したい。スポーツで活躍するだけでなく、卒業後も社会で活躍できる人間を育てる意思を示したい」

               ◇

現役学生にとって、今の早稲田スポーツはどう見えているのか。学生新聞『早稲田スポーツ』を発行している早稲田スポーツ新聞会の佐藤裕樹編集長に聞いた。

――早大のスポーツの強さとは何でしょう。
「取材して感じるのは、自主性を重んじる姿勢の強さだ。監督の指示が無くとも必要と感じた練習に率先して取り組む選手が多い。一般入試で入ってきた学生の活躍が目立つのも、自ら考え行動する力が備わっているからだろう」

――学生スポーツに対する一般学生の反応は。
「関心が低下していると感じている。早稲田スポーツも、OB・OGの方からの反応は大きいが、学内配布の分は余ってしまうことが多い」

――要因は。
「昔は野球部のエースが教室で一般学生と授業を受ける姿も珍しくなかったと聞くが、今は運動部の多くの学生が所沢キャンパス(埼玉県所沢市)に在籍している。早稲田キャンパス(東京・新宿)に通う学生にとっては親近感が薄れ、一体感が失われている」


キャプチャ  2014年10月1日付掲載
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