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【私のルールブック】(287) 今の役者さんたちは巧いし、器用なのですが…

先日、とある邦画の作品を観させて頂いたのだが、映画全盛の頃の役者と今の役者との違いを痛感した。簡単に言ってしまうと、泥臭い役者がほぼ消滅したということなのかもしれない。例え話になってしまうが、深作欣二監督の『仁義なき戦い』(東映)を今撮ろうとしても、あの頃の血腥さや息遣い等は滲み出て来ないんだろうなと。わかり易いところで言うと、今の役者さんって皆、格好いいですからね。三枚目キャラの方もおりますが、あくまでもキャラ止まりといいますか、バランスが取れている。しかも、揃って芝居が巧い。というか皆、器用なんですよ。因みに、役者に対して芝居が巧いとか器用と言うのは褒め言葉であって褒め言葉ではないという、そこそこスレスレの表現かと思われます。実際、私は子役の頃から言われ続け、正直、不愉快でしたから。ただ、こればっかりは致し方ないといいますか、役者さんたちを責めるわけにはいかないと思うのです。

だって育ちが違うんだから。育った環境や時代が全然違うんだもん。当時の仁義なき戦いに出ていた役者さんたちなんてね、申し訳ないですが役者なんだか“本物”の人たちなんだかわからなかったんだから。当たり前のように撮影所にも“本物”の方々が出入りしていましたし、逆に借金取りが楽屋に押しかけて逃げ回る役者さんがいたぐらい。要するに、撮影が行なわれている現場自体が堅気の環境ではないといいますか、言い換えるならば、良くも悪くも鷹揚な時代だったのだと思います。当然、現場だって今時でいうパワハラのオンパレードですよ。労働基準法も関係なければ、働き方改革なんて無縁ですから。抑々、深作組は“深夜作業組”と呼ばれておりまして、徹夜ありきの現場でしたから、役者もいい加減頭が回らなくなるんです。でも、それが監督のひとつの狙いでもあり、とことんまで追い込まれて無意識に絞り出した芝居で漸くOKをもらえる…みたいな。無茶苦茶でしょ? まぁ、無茶苦茶が許された時代ってことなんですよね。

ですが、今は許されませんから。ありとあらゆる制約の中で物作りをしなければならないわけです。それはある意味、仕方がない。でも、物作りに携わっている人間が一番忌み嫌う言葉が“仕方がない”だったりするんですよね。そう考えると、今時の役者さんたちは本当によく頑張っていると思います。制約の中でも自力でやり甲斐を見つけて、ストイックに作品と、役と向き合っていますから。ただ、しつこいようですが芝居が巧いだけでなく、何だか知らないけど皆、格好よくなっちゃったのよね。川谷拓三さんや金子信雄さん、室田日出男さんや小池朝雄さんのような役者は、もう中々出て来ないんでしょうね。成田三樹夫さんも強烈だったもんな~。とはいえ、昔を懐かしんだところでですから、いつものことですが、我々はその時代時代に適応しながら物を作っていくしかないわけです。逆に、昔ならどう考えても撮れなかったものが、CGを含め最新技術や知恵によって撮ることが可能になっているわけですからね。前に進むしかないのよ~。


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2021年3月4日号掲載
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テーマ : 俳優・男優
ジャンル : 映画

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