【中国反腐敗の大波】(02) 長老の叫び

中国南端の海南島には南シナ海に臨む名勝・東山嶺がそびえる。1月2日、元国家主席・江沢民(88)は妻と子2人・孫の一族3代を連れて東山嶺の潮音寺を参拝した後、高齢を押して異様な大声で叫んだ。「江沢民がここに来た。意味があるぞ」「私が北京に戻って絶景を宣伝すれば観光客が押し寄せる」。現トップ・習近平(61)の反腐敗の矛先が迫る中、かつて権勢を振るった江派は身動きがとれない。先に摘発された元最高指導部メンバー・周永康(72)も江派の要人だ。100人もの海南省関係者を前に長老はなぜ叫んだのか。「引退後も上海ではなく首都北京に陣取り、影響力もある。慌てるな」。自派の面々へのメッセージが込められていた。標高184mの東山嶺に電動自動車で登ったが、帰路は両脇から支えられつつもあえて歩いた。健康の誇示だった。去り際にはこう言い残した。「生きていればまた来るよ」。翌日、地元ネットメディアが報じた長老の久々の生声に共産党内は色めき立つ。誰もが東山に隠居した軍師が年齢を重ねてから再起し、百万の敵軍を破った有名な故事を思い出した。「劣勢の江一族の東山行は習近平への反攻の暗号か」。東山再起の故事によれば今の江蘇省に本拠を置く王朝・東晋が陝西省にいた異民族の前秦に大勝する。江蘇は江一族と周永康の故郷で、陝西は習一族の出身地だ。




不穏さを読み取った習指導部は直ちにネット上の記事・写真の全面削除を指示し、現地でも緘口令を敷いた。間を置かず江派の拠点に攻め入る。「組織は調査を開始する。あなたは全て報告しなさい」。4日、江蘇省南京のトップが突然、会議中に呼び出され、汚職などの調査のため北京に連れ去られた。2日後、江沢民の長男で通信業界を仕切ってきた綿恒(63)が中国科学院上海分院の院長を突然辞任した。海南島から戻った直後だった。年齢を理由としたが、時期は不自然で「習指導部からの圧力」と噂される。2年後の共産党大会での人事をにらみ集権を進める習近平の標的は江沢民に近い人物が目立つ。江沢民と同郷の高僧・鑑真も5度目の日本渡航に失敗して海南島に漂着し、東山嶺を訪れた。まさに東山再起の形で6度目に日本に行き着く。鑑真にも思いをはせ、祈ったであろう初詣。南国からの叫びは“遠ぼえ”に終わるのか。泥沼の権力闘争の端緒になるのか。 《敬称略》


≡日本経済新聞 2015年2月4日付掲載≡


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