【2020年の“日本の電力”大検証】(03) 地熱・水力・風力ほか…再生エネルギー“本当の実力”比較

現在、日本の総発電量9397億kWh(2013年度)のうち、約1割(10.7%)を再生可能エネルギーが占める。その割合を増やすことができるのか。本シリーズ第3回では、前回で検証した“太陽光”以外の再生可能エネルギーの可能性と課題を探る。

10.7%の内訳は、8.5%の水力を筆頭に太陽光1.0%・風力0.5%・バイオマス&廃棄物0.4%、地熱0.3%となっている。それぞれについて最新のデータを紹介しながら、将来性を検証しよう。

■水力発電
太陽光のように発電量が日々の天候に左右されず安定した発電が可能な水力は、ベースロード電源としての役割が期待されている。環境エネルギー問題が専門の東京大学名誉教授・安井至氏が言う。「日本ではすでに大河川のほとんどにダムが造られていることから、大規模水力の増設余地はほとんどありませんが、中小河川や農業用水を利用した“中小水力”には可能性があります。現在、中小水力の出力は約963万kW(原発約10基分)ですが、環境省の試算では開発可能地域を全て利用すると、2050年には2412万kWと1.5倍程度の“伸びしろ”がある。既存技術で開発できる中小水力の有効性は高い」。政府のコスト等検証委員会の試算では、中小水力の1kWhあたりの発電コストは19.1~22.0円(2010年モデル)。LNG火力(10.7~11.1円)の倍近い水準にあるが、他の再生可能エネルギーに比べれば有用性は高い。また、国際エネルギー機関によれば海外では同10円以下で発電できているという試算もあり、市場成長に伴うコスト低下が期待される。




■地熱発電
同様に、地熱発電も天候に影響を受けずに電力の安定供給ができるとして注目が集まっている。発電コストは9.2~11.6円/kWhと安い。火山大国の日本では、2538万kW(原発約25基分)のポテンシャルがあるとされ、世界第3位の地熱資源量を誇る。現在稼働中の地熱発電所は17ヵ所で、出力は約50万kW(2014年9月末時点)にすぎず、将来性は十分ある。開発が進まなかったのは、地熱候補地の多くが国立公園や温泉地にあり、地元の同意など高いハードルがあるからだ。近年、掘削技術の工場は著しい。例えば、特殊な道具を使って途中で曲げて斜めに掘削する『傾斜掘り』は、1ヵ所から複数の蒸気生産層を狙うことができる。これなら観光地・景勝地との両立も可能になる。『高温岩体発電』と呼ばれる次世代技術もある。地下深くの高温岩体に地上から水を注入し岩盤に亀裂を入れ、熱せられた高圧の水蒸気を回収しタービンを回す発電法で、実用化に向け研究が続いている。

■風力発電
太陽光とともに“無限のエネルギー”として注目された風力だが、地形が複雑で季節や時間によって風向き・風量が目まぐるしく変化する日本には、残念ながら北海道や東北の一部などを除き適地が少ない。何より風が止まると発電できなくなる点は、電力安定供給における最大のリスクだ。一方で、適地が少ない陸上ではなく、洋上での風力発電の開発が進んでいる。秋田県は秋田港・能代港に風車31基、合計出力15万5000kWの洋上風力発電所の設置計画を発表。昨年、参加事業者の公募を始め、5年後の発電開始を見込む。「2月中に事業者を決定しますが、洋上風力は建設費や維持費が高くつく。採算性が課題となります」(秋田県資源エネルギー産業課)。限界もある。日本では風力の稼働率は約20%。大型風力で主流の2000kW級の風車の場合、原発1基分(100万kW/稼働率70%と仮定)を代替するのに1750基が必要になる計算だ。干渉を防ぐため風車間の距離は最低でも100mずつ離す必要があるから、それを並べるとするとおよそ4km四方の面積を要する。前回で紹介した太陽光も同様で、稼働率13%を考慮すると100万kWの出力を出すのにパネル面積にして40~50㎢必要になるとされる。ちなみに、山手線の内側の面積は65㎢。それだけの土地・設備が必要なのだ。

■バイオマス
“生物由来の有機性資源”、つまり森林資源や農作物・廃棄物などを利用した発電法が『バイオマス発電』だ。最も利用が進んでいるのは、家畜の糞尿や下水汚泥を処理してメタンガスを発生させ、その燃焼熱でタービンを回すシステムだ。建設現場や製材工場などで出た廃材を利用した『木質ガス』による発電も徐々に広がっている。が、これは電源としてよりも地域振興策としての側面が強い。京都大学経済学部の植田和弘教授が解説する。「バイオマス発電の特徴は、地域経済の活性化と繋がりが深いことです。木質ガスを作るなら間伐材を大量に利用するため、地域に雇用や経済効果をもたらす。この発電方法は、燃料の効率的な収集が鍵になります。商業化はまだ先でしょうが、藻を燃料としたバイオ燃料は注目に値します。トウモロコシなどを原料とするバイオ燃料と比べ面積あたりの生産効率が非常に高い。もともと、藻は光合成で空気中のCO2を吸収して生育するのですから、それを燃焼させても吸収分が放出されるだけでCO2は増えず、温暖化対策にもなる」。発電原料のストックが可能なため安定的な電源となり得るが、最大の課題は植田氏も指摘する“燃料集め”だ。木質バイオマス発電所では、原価の7割近くを燃料費が占める。木質チップが安価に大量に集まらなければいけないが、すでにチップの高騰や燃料が安定して集まらないといった問題が浮上している。規模が小さいため発電コストも高い(1kWhあたり17.4~32.2円)。今後は、コストを下げるための普及と安定的な燃料調達という相反する課題を解決しなければならない。

■メタンハイドレート
再生可能エネルギーではないが、次世代エネルギーとして注目を集めるのがメタンハイドレートである。東京大学大学院の増田昌敬教授が解説する。「メタンハイドレートは化石燃料の一種であるメタンガスと水が結晶した氷状の物質で、火をつけると燃えるため“燃える氷”と呼ばれています。日本近海ではLNGに換算して100年分相当の資源量があるといわれていますが、いまは採掘可能な量がどれだけ存在しているのか調査している段階で、開発にまで至っていないのが現状です」。日本は2030年頃の実用化を目指すが、世界でメタンハイドレートを実用化した国はない。天然ガスの数倍とされる生産コストに加えて、採掘技術が未確立である点が最大の壁だ。海底の地層中に存在するメタンガスを自然環境や生態系を破壊せずに回収する技術開発の目途は立っていない。再生エネルギー問題は、多くの利権や政治イデオロギーの対立も絡み、正しいデータや判断が出てきにくい。しかし、単純にコストと技術・安全・環境負荷を考えただけでも近い将来、電気の安定供給を支える“基幹電源”になり得るものはほとんど見当たらないのが現実と言える。本当に“夢のエネルギー”があるなら、とっくに世界の国々で使われているはずなのである。

electric 03


キャプチャ  2015年2月13日号掲載


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