【日本のタブー2015】(05) 時給200円で長時間労働を強要――日本経済の食い物にされ続ける“研修生”という名の“奴隷外国人”

1980年代から始まった、日本の国際交流・貢献制度の1つである『外国人研修制度』。その建前とは裏腹に、外国人たちを“奴隷扱い”している企業は多い。関係者が告白したその戦慄の実態。 (取材・文 小川寛大)

ある西日本の山間部の農村。聊か肌寒い秋の夜に、Tシャツ1枚の若者たち数人が屋外に整列させられ、1人の中年男性の怒鳴り散らすような罵声をじっと聞いている。中年男性の手には竹刀。時折それが若者たちの頭や肩にビシッと振り下ろされる。騒ぎを聞きつけてその場に駆けつけ中年男性を制止した村の住民は、顔を真っ赤にした中年男性の口からこんな言葉を浴びせられた。「こいつら、ガイジンのくせに俺に口ごたえしやがったんだ!」。整列させられていた若者たちは、主に東南アジアの国からやってきた“外国人研修生”たちだった。『外国人研修制度』は、1980年代から始まった日本の国際交流・貢献制度の1つである。発展途上国の若者たちを、日本の産業界にある高い技術・技能などを学んでもらう目的で来日させ、日本企業などで一定期間(基本的には1年、最大で3年)働いてもらう制度だ。通常、日本で外国人が非熟練労働者として働くには、ビザなどの高いハードルがある。しかし、この研修制度のための在留資格が1981年に創設されるや、発展途上国から多くの若者が日本に“研修生”として働きに来るようになった。この制度を推進する財団法人『国際研修協力機構』の統計によれば、2013年には約4万1000人の外国人研修生が日本にいたという。しかし長い間、この制度は本来の目的から逸脱し、悪用しかされていないという批判が相次いだ。




日本にやってきた研修生たちは、法で定められた業種である農林水産業や製造業・建設作業現場などで働いている。そこでパスポートを取り上げられたうえ軟禁状態に置かれたり、ほうから逸脱した長時間労働を強いられたり、まともな報酬が支払われなかったりするといった事態が数多く指摘されてきたからだ。冒頭で紹介したエピソードも、ある農村で“奴隷状態”に置かれていた外国人研修生たちの姿を、関係者が匿名で打ち明けたものである。2007年には、アメリカ国務省が「人権侵害である」との報告をまとめ、日本政府に注意を促すという事態にも発展している。しかし、状況は今でも全く改善していないということが、昨年の12月に報道されたあるニュースで明らかになった。高原野菜やレタスの名産地として知られ、それを生産する農家の平均年収が2500万円とも言われる長野県川上村の農業組合が、外国人研修生を巡る問題から、11月までに解散に追い込まれていたというのだ。その高い生産性やブランド力から、日本農業が目指すべき“奇跡の村”だともされてきた川上村。しかし、そこで外国人研修生を使って野菜の生産を行っていた川上村農林業振興事業協同組合は、まさに“奴隷農園”としか言い様のない状況で外国人を酷使していた。

kawakami.jpg

問題が発覚したのは2012年。川上村で働いていた中国人男性が自身の置かれた“奴隷状態”を外部に向かって告発したことで、日本弁護士連合会が独自に調査を開始。同会が昨年11月に出した報告書によると、川上村の組合は外国人研修生を監禁同様の住環境において働かせ、預貯金も組合側で管理。外国人研修生同士の交流も禁止し、それに違反すると罰金の定めもある独自の罰則で制裁。「指を切り落とす」といった脅しまでかけていたのだという。行政もこの状況を問題視し、東京入国管理局は組合に外国人研修生の受け入れを5年間禁止する処分を下した。それを受けて、組合は解散する道を選んだのである。「こんなことは氷山の一角。外国人研修制度が本来の目的に沿って正しく運用されている現場なんて、実際にはあり得ないんじゃないでしょうか」。ある外国人を支援する人権団体の関係者は、この川上村のケースを説明する資料を手にしながら、うんざりした表情で言う。「そもそも、彼らは“研修生”なんですから。本来、それを受け入れる日本の企業などは、彼らに高度な技術や技能を教えてやらないとダメなんです。それなのに、実際の研修生たちは延々と畑の草取りとか、流れ作業の担当などの単純作業か、もしくはきつい3K労働しかやらされていない場合も多い。受け入れる側が、外国人研修生をそういう存在としか見ていないんです。しかも、賃金は色んな理由をつけて天引き。実質的には、時給200~300円なんていった話もザラです」

この状況はどうしたら改善できるのだろうか。この人権団体関係者は、表情を崩さないまま話を続けた。「外部から潜入して探りを入れるといった話は、外国人だらけの閉鎖的な環境ですから非常に難しい。基本的には、川上村のように外国人研修生に内部告発をしてもらうのが一番現実味のある話。しかし、これが非常に難しいんです。川上村は本当にレアなケース。地域にもよりますが、時給200~300円といっても、それで1年か2年我慢してお金を貯めれば、母国ではそれなりの金額になるという国の人たちもまだまだ多い。残念ながら、この制度を利用する外国人たちの中に、『日本に技術を学びに行きたい』というよりも『出稼ぎ的にお金を貯めたい』といった目的で来る人が多くなっていて、いわば日本の企業や農家側と“共犯関係”のような形になってしまっている例が少なからずあるんです。そういう人たちは、多少の理不尽があっても絶対に告発なんかしない。少しでも日本でお金を貯めて母国に帰る。それしか考えにないんです。また、これは日本の一般国民も無関係な話ではない。安い生鮮食品や工業製品が店などに溢れているのは、外国人研修生による奴隷労働の結果とも言えるんです。そういうものを喜んで買う人がいる限り、この問題は解消しない。川上村の組合が研修生の受け入れを5年間禁止されて解散を選んだのは、もう“奴隷労働”なくして市場競争は勝ち残れないという残酷な現実の反映でもあるんです」。日本人全体が、意識の変革を迫られている。


キャプチャ  2015年3月号掲載


スポンサーサイト
Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR