【ネット時代の著作権】(上) 弁護士・福井健策氏――技術開発などの利用自由

デジタル機器の高性能化やインターネットの普及で、著作物の複製や転載がより簡単にできるようになってきた。利便性が高まる半面、ビジネスパーソンが著作権に触れる問題にかかわるケースも増えている。最近の議論の潮流や身につけておくべき知識とは何か。骨董通り法律事務所の福井健策弁護士に聞いた。

――インターネットを使う際、「自分の行動に著作権の問題はないだろうか?」と思う機会が増えています。
「ネット上に他人がアップしたテキストや画像・動画などの素材をダウンロードしたり、交流サイト(SNS)で利用したりしていいのか、と思う機会は多いだろう。素材は著作物かそうでないかに二分される。著作物ならば著作権があるために許可なく勝手に使うと著作権侵害にあたる。著作物に該当するかどうかが大きな分かれ目だ」

――判断するポイントは何ですか。
「簡単に言うと『創作的な表現』かどうかだ。著作権法では小説などのテキスト・音楽や写真など9つの例を挙げている。現実には判断がつきにくい場合もあるが、ありふれた表現や事実・データ・アイデア・実用品のデザインなどはほぼ著作物ではないことを知っていると、判断しやすいだろう」






――どのような行為をすると著作権を侵害してしまうのですか。
「幅広いが行為が対象だ。コピーは“複製権”、パワーポイントでの映写は“上映権”、ネットにアップすれば“公衆送信権”などの侵害にあたる。複製権は個人や家庭内などでの私的な目的については例外として定められているが、会社の業務のためになんらかのコピーをする場合は“私的複製”に基本的には含まれない」
「著作権を侵害すれば民事・刑事上の責任を問われる。現実の処分はそれほど重くならないことが多いが、法定刑は最高で懲役10年または1000万円以下の罰金、あるいはその両方だ。法人は罰金が最高3億円と軽くはない」

――著作権法違反にあたるケースは日常にあふれているといえます。
「著作権は法律上クロともシロともいえないことも多い。オリジナルを改変したネット上の2次創作作品は厳密に言えばクロかもしれないが、権利者が黙認しているだろうと推測されるものも多い。クロの場合、自分は大丈夫だと思っていても、思いがけず社会的糾弾にさらされるリスクはある」
「個人的には著作権侵害のリスクを恐れるあまり、余計な萎縮を生んでしまうことに懸念もある。たとえば、非営利の上演・上映や、企画や技術開発・ビッグデータなどの情報分析のための利用は例外として認められているのに、事実をあまり知られていない。正しい知識さえあれば、自由に使えるものですら、自主規制してしまうような事態は好ましくない」

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――投稿などを通じて一般の人が著作権者の立場になり得ます。
「ユーチューブの利用規約を見てみると、動画の著作権は投稿者のものと書いてある。同時に『ユーチューブは投稿された動画を無償で複製・配布・出版・翻案するライセンスが与えられ、かつ譲渡可能』とされている。現実的にはユーザーから批判されるリスクもあり、極端な流用のされ方をされるとは考えにくい。ただ、企業の経営権が移った場合、膨大な映像資産が将来どう使われるか予測しにくい。利用規約をユーザーがいちいち読むのは非現実的だが、ちょっとしたことでも著作権が関わってくる場面も増えている」

――著作権を巡る議論はどのような状況にありますか。
「以前はただ守られるべきものと見なされていたが、ここ10年で保護と活用のバランスが問われるようになってきた。権利がただ強まるだけでは文化が衰退してしまうし、すべてが自由ならば海賊版天国になり、プロのクリエーターは育たない。どちらか一方に正解があるというわけではない」
「最近では権利者側の一辺倒に権利を守る姿勢が変化している。たとえばニコニコ動画のドワンゴと日本音楽著作権協会(JASRAC)が契約し、ニコニコの利用者がJASRAC管理楽曲を自分で演奏したり歌ったりした動画を、合法的に投稿できるようになった。これは当時としては奇跡的な出来事だった。双方の時勢へのバランス感覚が生み出したものだといえる」 (聞き手は児玉小百合)


ふくい・けんさく 1991年東大法卒。1993年弁護士登録。米コロンビア大法学修士課程修了。2003年骨董通り法律事務所を設立し、代表パートナー就任。アートやエンターテインメント業界向けの契約・紛争処理、著作権関連アドバイスなどを手掛ける。


キャプチャ  2014年10月7日付掲載
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