【ネット時代の著作権】(下) 弁護士・増田雅史氏――引用&社内コピーに火種

ビジネスの現場で著作権の問題を最も引き起こしやすいのは、他人の著作物の“引用”と、著作物のコピーの企業内利用という2つだ。思わぬ批判を招かないために知っておくべき基本的な知識と注意点について、森・浜田松本法律事務所の増田雅史弁護士に聞いた。

――資料づくりなどの際にネットで必要な情報を探して使うケースはよくあります。相手の許諾が必要のない“引用”として認められるのはどのようなケースでしょうか。
「著作権法は原則が利用禁止で、例外で利用OKとなるのが基本的な構造だ。その例外の1つに“引用”があり、ビジネスでも多くの場面で利用されている。まず対象がそもそも著作物であるかを判断したうえで、行為が適法な引用にあたるかを検討するのがいいだろう」
「ただ著作権法の条文は抽象的。『公正な慣行に合致するものであり』『目的上正当な範囲内で』あれば無許諾での引用が許されるが、これを読んだだけでは、一般の人には判断がつきにくい」

――実際にはどのような点がポイントになりますか。
「まずは(1)引用する必要性があることが大前提だ。また(2)引用している方が主で、引用されている方が従の関係になければならない。何%以下とはっきり示すのは難しいのだが、引用されている著作物の割合が地の文より多いような比率では適法な引用とは認められない。さらに(3)引用している著作物と引用されている著作物が明瞭に区別できていないといけない。カッコでくくったり、段落を下げたりする必要がある」
「その他の細かな点としては(4)公表された作品の引用であり、(5)出所を明示することが必要だ。当該著作物が属する業界や学術分野での慣行が重要になるが、ネット上から引用する場合はURLも記載すべきだろう。また(6)著作者の意思に反する改変をしていないことも要件となる。翻訳をすることは著作権法上も許されているが、要約してよいかが問題となる。すべてを引用すると長くなりすぎるようなときは、原文の趣旨に忠実な要約ならば許される可能性が高い」







――著作物をコピーして利用しているケースも多くの企業で日常的にあります。
「業務に利用するならば著作権法の例外規定の一つである“私的複製”にはあたらない。ただ、実態としては企業内コピーは野放しにされているといっていい。もっとも実際は、企業内のみで利用するよりもセミナーなど公開の場で利用する方が問題視され、コピーの範囲や分量も多くなるほど著作権法違反として糾弾される可能性が高い、というような漠然とした認識はされている」

――どこまで対応すべきかは現実的には難しい判断です。対処できる方法はありますか。
「確かに、業務上かかわる著作物のすべての著作権者に個別に許諾をとるというのは現実的ではないだろう。考えられるのは、日本複製権センター(JRRC)という著作権管理団体と契約するという対応策だ」
「JRRCは出版や新聞・文芸・学術著作などの著作権者の団体から権利を委託されている。利用したい企業はJRRCと契約すれば、企業内の少部数のコピーであれば低廉な価格で利用できるようになる。すべての著作物をカバーできるわけではないが、幅広い著作権者の団体が委託しており、コンプライアンス(法令順守)に取り組みたいという場合は一つの方法になるだろう」
「どこの企業でも、過去に作成したり公表したりした資料に関して、著作権上の管理が危ういものが眠っているケースはあると考えられる。過去には問題にされなかったようなものでも、ひとたび不祥事などが発覚した後にはネット上で掘り起こされて問題が顕在化するというリスクもある。1度見直してみる価値はあるのではないか」 (聞き手は児玉小百合)

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ますだ・まさふみ 2004年東大工卒、2007年中央大法科大学院修了。2008年弁護士登録、森・浜田松本法律事務所入所。2009年経済産業省メディア・コンテンツ課出向。ITサービス関連の規制全般、知的財産などの企業法務を主に手掛ける。


キャプチャ  2014年10月8日付掲載
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