「四季報? 読めません!」…株主優待達人が“株女”に語った定石知らずの必勝法――桐谷広人の“いまやる投資”密室講義

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フライドポテト片手に熱弁するのは、“日本一株主優待を使う男”と自他共に認める桐谷広人さん。世界的株高の余波は、この新宿の個室居酒屋にも押し寄せた。耳を傾ける女性投資家たちを前に白熱教室が始まった!

「晩酌・外食は殆ど無料生活」「現金を支払うのはネット料金と家賃・光熱費くらい」――。元プロ棋士にして株主優待の達人・桐谷広人さん(65)が本誌に登場して約1ヵ月。その反響の大きさに第2弾をお願いしても、「講演やテレビ収録で忙しくて…」とつれない。それならと、“株女”(女性投資家)との座談会を提案すると、「来週の水曜日はどうでしょう?」と即答。その日、桐谷さんと6人の株女の姿は居酒屋『北海道』の個室にあった。

桐谷「“北海道”や“甘太郎”を運営するコロワイドは、1年で4万円分の食事優待ポイントが貰えて大のお気に入りです。回転寿司“アトムボーイ”などを運営するアトムの店舗でも使えますし、ポイントが1円刻みなのもいいですね。普通は1000円の優待券が多くて、優待額ギリギリまで食べるのが大変なんです。飲み物は揃いましたね。それでは乾杯しましょうか」
一同「かんぱ~い!」
桐谷「コロワイドは、店で優待券を使い切れなかったら商品に替えることもできます。ウナギの蒲焼きも貰えます。ウナギはいつもジェイグループHDの“うな匠”で食べていますが、そこと同じくらい美味しいですね。以前、タラバガニを2kg貰ってカンニング竹山さんに御裾分けしたら、髭男爵のひぐち君とカニ鍋している写真をブログにアップしていましたね。私も1年くらい経って食べようと思ったら、黒ずんで食べられなくなってまして残念でした。この間も、冷凍庫に5年前のマグロが入っているのを発見しまして…(以後、食べ物への恨みが数分続く)」

今回集まってもらった株女は皆、投資資金300万円以上の中上級者。百戦錬磨な分、失敗経験も数知れない。そんな彼女たちに、株取引の悩みや疑問をぶつけてもらった。

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村上「この株高時代に、まだプラスになりません。基本的な質問ですけど、桐谷さんはどのように株の情報を集めるのですか?」
桐谷「どうも高値で買ってるようですね。私は、いつも底値で買うようにしているんです。欲しい株があっても高い時は我慢して、年初来安値(4月以降に取引された中で最も安い値段)をつけた時に買うんです」
村上「年初来安値はどうやってわかるんですか?」
桐谷「年初来安値の一覧はネット証券会社のホームページに出ていて、私は松井証券のをチェックしています。安い時に買えば配当や優待の利回りも良くなりますし。私の場合、クオカードやギフトカードなども現金と同じと考えて、1株あたりいくらになるのか考えています。1株あたりの配当額や優待額を株価で割って、配当だけなら3%以上、配当と優待の利回りの合計なら4%以上になる銘柄は合格です」
「それでは、売るタイミングはどうされていますか? 優待が無くなってしまう銘柄もありますが…」
桐谷「リーマンショックの直後、株主優待を廃止する会社も多かったですねえ。ファミレスのフォルクス(『どん』に社名変更後、上場廃止。現在は吉野家傘下に)も、優待を廃止した時は株価ががくっと下がりました。最近では、小僧寿しも業績悪化で改悪が進んでいます。でも、私は優待が無くなってもその会社の株券は死ぬまで持っていますけど。『それで紙切れになっても仕方ないか』と思ってますよ」
城木「スターバックスコーヒーの優待が無くなったのは残念でした」
桐谷「私もスタバは持ってました。あの株は、持っている皆が得できる銘柄でした。注文の仕方がややこしくて、私は安い林檎ジュースばかりを飲んでいました」




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沼田「買った株は売らないということですが、その忍耐強さはどこから来るんですか?」
桐谷「『買値以下になっても、配当と株主優待を貰っていればいい』と開き直っているからです。売るのは上がり過ぎた時だけです。31年も株をやっていて、今も700銘柄持っていますから、結果的に分散投資となり、長い目で見れば利益が出ていますよ」
村上「700銘柄もどうやって管理しているんですか?」
桐谷「(ノートを取り出しながら)私はExcelが出来ないんで、毎日の売買を手書きで記録しているんですよ。証券会社は5社と取引しているんですが、色分けしていて一目でわかるようになっています。10万円までの売買だったら、手数料が86円と一番安いライブスター証券。それ以上だったらSBI証券が多いですね。SBIは一番画面が見やすいんですよ」
小森「“会社四季報”は参考にしますか? 私、“四季報”がバイブルなんですよ。『死んだら棺桶に入れてほしい』って言ったら、『分厚くて燃えにくいからダメ』って(笑)」
桐谷「私ね、“会社四季報”が読めないんです。以前、『UFOを見ないんですか?』って聞かれて『何でUFO?』と思ったら、“有”価証券“報”告書のことだった(笑)。日本経済新聞も取ってはいるけどあんまりちゃんと読んでませんし、ネット掲示板も見ません。PBR(株価純資産倍率。株価が割高なのか割安なのかを判断する基準の1つ)とか、1倍より低けりゃいいってことだけは一応わかりますけど。私、元棋士でしょ。昔、阪田三吉という名人がいたんですよ。彼は文字が読めず、将棋の理論書が理解できない。独学であれだけ強くなったんです。私も株は定石なしでやってますから、そういう意味では私も株界の阪田三吉と言えるでしょうねえ」
一同「……」

15年ぶりの株高に沸く日本経済。しかし、優待狙いで底値で買うことが信条の桐谷さんには、必ずしも歓迎できることばかりではないという。

渡邉「値上がりして売りたいのに、優待が楽しみで売れない銘柄はありますか?」
桐谷「ありますよ。東京楽天地という錦糸町で映画館を運営している会社の株の場合、私は300円で買って今では500円くらいになっています。だけどこれを売っちゃうと、“楽天地シネマズ錦糸町”や“TOHOシネマズ錦糸町”で私の趣味の映画が観られなくなってしまう。すぐ近くにあるスポーツクラブのルネサンスの株も持っていて、そこで体を動かしているし、近くにスカイツリーもあるし、行くところが一杯ありますしね。だから値上がりしても売りませんねえ。それから松竹。全国展開する映画館“MOVIX”や、有楽町マリオンにある“丸の内ピカデリー”で映画が観られる優待券が貰えます。私がよく行くのは川口のMOVIXで、その近くにはコロワイドの優待券が使えるとんかつ屋の“銀豚”や、アウトレットコーナーが充実したスポーツ用品店のアルペンもあって便利。確かに値上がりした株を売って利益を確定したくなる時もありますけど、これは楽しい苦しさと言ってもいいでしょう」
城木「ディズニーランドを運営するオリエンタルランドも値上がりしていますね。子供が小さい頃は、優待券でよく遊びに行っていました」
桐谷「はいはい、この1年で約2倍の3万円まで上がって、ついこの間株式分割を発表しました。私も持っていましたよ。アトラクションの待ち時間が殆どない平日の夕方に1人で行って、走り回って遊んでいました」
一同大爆笑

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「桐谷さんは株主総会に行きますか?」
「行きませんねえ。電車賃がもったいなくて」

沼田「では、株高の時代にはどういう銘柄を狙えばいいですか?」
桐谷「優待株なのに悪材料が出たために下げた株を、私は逆張りして買いますね。ソニーが昨年9月に無配を発表して、翌日に2200円くらいから一気に下げたので、1850円で指値(希望の値段を指定すること)をして買いました。それが今は3200円。シャープも無配の時に買っています。1000株で250万円近くしていたのが、3年前は20万円を切っていました。オリンパスもそう。最近では、電子機器商社の江守グループHDも不祥事で株価が2000円から800円になりましたから狙い目。バーゲン株は買いなんです。時々潰れちゃいますけど。色々な株を持っていれば、ある会社が潰れても2倍儲かっている銘柄もあるわけでして」
村上「陰線(株価チャートで、前日より値下がりしていることを示す線。値上がりしているのが『陽線』)が出ている時に買うのは怖くないですか?」
桐谷「経済評論家は上値を追っている(勢いよく上昇している)銘柄を薦めますよね。私、Aさんという経済アナリストが薦めていた銘柄を調べてみたんです。1年後に上がっていたのは26銘柄中2つだけでしたよ。真っ白な陽線がドーンとなっている時に買うからです。最近買った株は全て年初来安値をつけている銘柄です。例えば、内装材を手掛けるリリカラは、昨年10月に132円の指値で買って今は250円まで急騰しました。キリンHDも同じ頃、1354円で買ったのが200円以上儲かっています。たとえリーマンショックで下がっても、ITバブルやアベノミクスのようにパッと上がる時期が来ますからね」

殆ど現金を使わないという人が羨む生活を送る桐谷さんだが、今の生活スタイルに落ち着くまで何度も地獄を見てきた。

「リーマンショックでは損失があったそうですね」
桐谷「バブルの時、“1億円儲けた棋士”としてマスコミに出て天狗になっていたらバブルが崩壊しました。だから自慢しないようにしていたんです。その後、コツコツと3億円まで資産を増やし、2005年に『そろそろいいだろう』と10年の沈黙を破りマスコミで株の話をしたんです。それが、ホリエモンが逮捕される1ヵ月前。“悠々自適の桐谷”って書かれてまた天狗になっていたら、ライブドアがあんなことになって株券は紙切れに。それでも懲りずに2007年に将棋界を引退すると、『もう将棋の勉強をしなくていいんだ』と毎日株を1000万円売買していました」
渡邉「1000万円! 信用取引(証券会社に保証金を預けて、その金額の約3倍まで取引できる方法。リターンが増える分、リスクも大きい)ですか?」
桐谷「…そうなんですよ。そうしたらサブプライム問題とリーマンショックが来て、資産は6分の1になってしまいました。当時、船井電機1銘柄で5000万円損しました。数秒毎にパソコンの画面を更新して冷や汗をかいて…毎日死ぬ思いでした。家賃も払えないような時、株主優待で送られてきた米や缶詰に助けられたんです。今の私の株投資は農業みたいなもの。種を播いて、定期的に配当や優待を収穫している。一攫千金狙いは猛獣狩りと同じで、逆襲されると命がありません。もう信用取引はしません。私は優待の牛丼を食ったりしておるのが性に合ってますね」

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…あっという間の2時間が終了した。桐谷さんはこの翌日から、セミナーや講演で1週間の遠征だという。「ある社からは『一流ホテルを予約しておきます』って言われたんですけど、お断りしました。サムティという会社が運営するホテルの宿泊優待券が、期限切れして紙切れになってしまいそうなんですよ」。自転車を押して去っていく桐谷さん。その後ろ姿を憧れの目で見送る株女たちだった。


キャプチャ  2015年3月17日号掲載


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