北陸新幹線カウントダウン――新黄金ルート、金沢軸に周遊…訪日客狙い動く、JR東西など東海道に対抗

北陸新幹線の開業まで150日余り。料金も決まり、終着駅の金沢を軸にした新たな観光ゴールデンルートができつつある。現在は東京-大阪間の人気が高いが、新たな周遊ルートで急増する訪日客などを囲い込む。首都圏から石川県への訪問客は2015年に500万人に倍増させる構想もあり、金沢や沿線では早くも商戦が過熱する。

新幹線が開業して今年で50周年。青森から鹿児島まで日本列島を南北に結んできた。来年3月14日に開業する北陸新幹線は列島をほぼ平行に走る初の新幹線となる。「新幹線で往復するだけではつまらない。選べる様々なルートの組み合わせを用意する」。こう話す東日本旅客鉄道(JR東日本)の原口宰常務が描くのは『松本ゲートウエー構想』だ。まず東京都内からJR中央線の特急『あずさ』で松本駅まで行く。そこで用意した周遊バスで、古い町並みが人気の岐阜県高山市などを巡り金沢へ。金沢からは北陸新幹線で帰京するという周遊ルートで、この逆も構想にある。この実現のために2015年夏をめどに『あずさ』の新型車両の開発を進めている。






高山市は昨年、22万5000人の訪日客が訪れた国内有数の観光地。JR東日本にとっては成田と羽田の両空港を管内に持つものの、首都圏から富士山・京都・大阪を巡る現在のゴールデンルートは東海旅客鉄道(JR東海)などの管内を主に使う。急増する訪日客を取り込めていなかった。年間130万人が日本を訪れる中国の場合、6割が初来日で、大半がゴールデンルート目当てとされる。金沢を軸にした魅力ある周遊ルートを作り、急増する訪日客を囲い込む。

第2が『昇竜道』プロジェクト。能登半島を竜の頭、南北に長い三重県を尾に見立てて中部・北陸地方の観光地を巡るルートで、同地方の自治体などが推進する。伊勢神宮から名古屋城・下呂温泉・飛騨高山、白川郷を経て金沢へと北上できる。温泉や自然、歴史文化に恵まれているが、認知度はいまひとつだ。そこで海外で最も知名度が高い企業の1つであるトヨタ自動車に旅行会社があるお願いをしている。「ツアーにトヨタ工場見学を入れさせて下さい」。訪日客で特に男性には日本の自動車工場の見学希望が多い。2005年の愛知万博では海外要人向けのオプショナルツアーに組み込まれたトヨタ工場見学を、男性の約9割が希望した例もあった。

第3が西日本旅客鉄道(JR西日本)が構想する『能登トライアングル』だ。金沢と富山・和倉温泉の三角地帯を結ぶ。七尾線で運行する観光列車『花嫁のれん』で金沢-和倉温泉間を移動。和倉温泉から富山までは富山湾越しの立山連峰を望めるバスを使い、富山-金沢は新幹線で移動する周遊ルートだ。北陸新幹線では金沢-富山間を行き来するシャトル型の新幹線『つるぎ』が走る。所要時間は約20分で、1日に18往復する。最速列車の『かがやき』などを含めると同区間は新幹線が43往復する。JR西日本の真鍋精志社長は「県庁所在地がこれほど短い時間で結ばれる例は少ない。観光や経済の活性化につながる」と強調する。JR東西にとっては北陸新幹線を使うゴールデンルートが訪日客に認知され利用されれば、JR東海のドル箱『東海道新幹線』への対抗軸になる。北陸新幹線は日本の観光地図を塗り替える可能性もある。

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「こんな活況は初めて」。2014年の基準地価で、全国商業地の中で上昇率首位となった金沢駅の西口。40年前から事業を営む不動産会社社長は驚きを隠さない。兼六園など観光地や繁華街がある同駅東口と違い、以前はオフィスビルがまばらに立つだけだった西口には、新幹線効果を見込む投資が相次ぐ。半径300mは建設ラッシュさながらだ。ビジネスホテルや、駅東側から移転する地元有力地銀・北国銀行の本店――。いずれも今秋から来春にかけて完成予定だ。「新幹線開業で関西だけでなく、首都圏から観光客が増える」。北陸に初進出のマイステイズ・ホテル・マネジメント(東京・港)は11月に『ホテルマイステイズ金沢』を開業する。地元が期待するのは外国人旅行客だ。東急ホテルズは9日、『金沢エクセルホテル東急』を1ランク上の『金沢東急ホテル』に格上げし開業。安全面を強化したフロアを設け、裕福な外国人客を取り込む。

金沢市によると、ホテルの客室数は2013年に8440室と271室増えた。改装や開業が相次ぐため「過去最高だった2009年の水準(8722室)を上回る可能性がある」(経済局観光交流課)。毎朝8時、金沢駅東口のバス乗り場では外国人が列を作る。世界遺産の『合掌造り』がある白川郷(岐阜県)を経て、同県高山市へ向かう高速バスがお目当てだ。「平均乗客数20人のうち、7~8割が外国人」。1日4往復のうち2往復を担う濃飛乗合自動車の坂上博幸取締役は驚く。最近はスペイン人やイタリア人が増えているという。

1泊したくなる仕掛け作りを――。新幹線開業後は東京-金沢は日帰りも可能になる。宿泊しないと味わえない経験作りに動くのが兼六園だ。5日朝8時、園内の茶店5店で、和定食中心の朝食を出すサービスが始まった。夜行列車全盛期の40年前まではあったが、その後途絶えていた。今回は3度目の試行で「客数が集まれば、新幹線開業の前後に定番サービスにしたい」。兼六園観光協会の馬場康行理事長は話す。北陸の観光スポットの主力といえる兼六園だが、「沿線の観光地に負けないよう、絶えず進化させたい」(馬場氏)と意気込む。

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「北陸新幹線が開通すれば軽井沢は中間点になる。金沢など日本海側からもお客様が来る」。西武ホールディングスの後藤高志社長は攻めに出た。JR軽井沢駅そばの「プリンスグランドリゾート軽井沢」(長野県軽井沢町)を7月に改装開業。約68億円を投じ商業施設などを増床した。開業効果などで358億円だった2013年度の商業施設売上高を2015年度に400億円に引き上げる。軽井沢は最速列車『かがやき』が止まらない。だが長野市による北陸地方在住者への調査では、新幹線で行きたい地域として、軽井沢は東京などに並び7割を超えた。軽井沢観光協会(同)の中沢功事務局長は「旧軽井沢メインストリートなどの発信力を高めピーク時の夏場以外も底上げしたい」と気を緩めない。

北陸新幹線の開業後すぐに6年に1度の『御開帳』を控える善光寺でも期待が高まる。お土産の定番、七味唐辛子製造の八幡屋礒五郎(長野市)は7月に長野市の隣の飯綱町に新工場を稼働させた。増産で延伸と御開帳で集客増に備える。素通り懸念もある。長野県議会の風間辰一議長は「長野は終着駅から通過駅になる。観光客をいかに周遊させるかが問題だ」と指摘。国土交通省の4~7月の地価動向報告では、全国150地点で下落したのは長野駅前と千葉駅前だけだった。北陸新幹線は期待と不安が交錯しながら開業への足音が高まる。 (倉本吾郎・国司田拓児・逸見純也)


▼北陸新幹線 2015年3月14日、長野新幹線(東京-長野)を金沢まで延伸して開業する。最速の『かがやき』の途中停車駅は長野以西は富山のみ。『はくたか』は飯山(長野県)のみ一部通過するが、他の全駅に止まる。車両はJR東日本とJR西日本が共同開発したE7・W7系。法律上は北陸新幹線だが、JR東日本管内では『北陸新幹線(長野経由)』と表記する。


キャプチャ  2014年10月8日付掲載
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