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テリー伊藤×そーたに――昨日日本に来た外国人にも伝わる企画を考えろ!

ヒット番組を数多く生み出している2人だが、そのアイデアは意外な方法・場所で生み出されていた。企画を作る流儀から、会議での発言まで、テレビマンならずとも参考になるものばかり。さらにあの伝説的バラエティの裏話も…。 (企画・文 松橋孝治)

テリー伊藤&そーたに。天才演出家と人気放送作家。2人のヒットメーカーは、いったいどんな発想でヒットを生み出しているのだろう。あるときは社会現象からヒットの可能性を嗅ぎとり、あるときは時事問題から新企画を見つけ出し、あるときは彼女のなにげないひと言から新商品が思い浮かぶ…。企画の達人は日ごろ、何をどう見て、どう考え、どう企画を生み出しているのか。今回、達人2人の誌上企画会議が実現。企画術の秘訣が明かされる。かつてテリー伊藤が手がけたテレビバラエティのレジェンド『天才・たけしの元気が出るテレビ』。そーたには、その名物コーナー『放送作家予備校』出身だ。そーたににとって、テリーは師匠。あれから30年の時を経て、師弟の対談が炸裂する。

テリー 消費税が上がっても、日本は相変わらず、食べもの、安いよなあ。
そーたに たしかに安いです。しかも、うまい。回転寿司とかレベル高い。
テリー そうそう。回転寿司、あれ毎週、家族で食べてる人っているよね。寿司って、そんなしょっちゅう食うものか? 昔なんて年に2回食えればいいほうだったじゃん。
そーたに ありがたみも何もなくなっちゃいましたよね。
テリー 安くてうまいB級グルメブームって、いいんだけど、なんだか日本がB級民族になってきてない? デートでもラーメン食いに行っちゃうヤツ。もうちょっと背伸びしろよって。
そーたに バブルのころまでは“見栄講座”みたいな価値観があったけど、今は「牛丼でいいよね」「うん」って。見栄ゼロ。楽でいいとは思うけど。
テリー それってテレビだと『おニャン子クラブ』以降なんだよ。そーたにって、その世代だろ。『セーラー服を脱がさないで』で育っている。“女歌”の時代だろ。俺たち世代は“男歌”で育っているわけ。加山雄三とか矢沢永吉とか、「僕が君を幸せにしてあげる」「俺について来い」みたいなさ。
そーたに 男が背負いこんでいかなきゃいけなかったんですよね。『セーラー服を脱がさないで』っていうのは、もう女のほうがストーリーを作ってくれて、男は受け身でいいですもんね。
テリー そう。やっぱりいつまでもB級にいるんじゃなくて、あるときから見栄を張ってでもA級に行かなきゃいけないんだよ。
そーたに いつのまにか男が草食で、女のほうが肉食になっちゃったから。







テリー スケベな奥様、多いよね。40代50代、きれいだし、いい体してるし。
そーたに 美熟女が増えましたよね。
テリー 『美STORY』(現在は『美ST』)って雑誌が出たとき、下品な本だと思ったけど、世の中、逆転しちゃったもんね。あの世代は元レースクイーンとかさ、バブルと寝た女たちだよ。フラッシュも、あのころお立ち台に上がってた人たちの「今はこんな美熟女です」っていうグラビア特集、やってほしいよ。
そーたに そういうストーリーが背景にあるほうが興奮します。若いコのグラビアとか見ても、それだけだとあんまりグッとこないもんなあ。
テリー グラドルの目線って定番すぎるんだよね。あれって、もともとはモーニング娘。が悪いんだよ。「こういう目線をすれば男が喜ぶ」っていうのを覚えちゃった。タカハタ秀太がモー娘のPVを撮ったときに言ってたんだけどさ、憂いのある表情とか挑発的に見える表情っていうのはどうすればいいのか、あのコたち、最初は何もわからなくて、それが逆に「ドキッとするほどよかった」って。でも2本めになると、もうどうすれば男が喜ぶかって気づいちゃって「あれには参った」って言ってた。
そーたに そんなこと覚えるなよって。
テリー いまや小学生の女のコのファッションショーでさえ、ランウェイ歩いてターンするときにあの目線ができてるもん。タチ悪いよね。
そーたに 小さいころから写メとかで“勝ち顔”を覚えちゃってる。「これでしょ」っていう顔しますよね。
テリー そういうなかから勝ち上がってグラドルになってるのは、野球でいえば大阪桐蔭とか横浜高校の選手みたいなもんだよ。とびきりの選抜選手。
そーたに 出来上がってるんですよね。
テリー お笑いでも、いまそうだよな。雛壇の芸人って、もう百発百中、面白いことしか言わない。自分の役割とか、お互いの立ち位置とか、完璧に仕上がってる。吉本の人たちって精鋭軍団だよ。ちょっと面白すぎるよね。
そーたに 精度も上がって完成しすぎたぶん、視聴者にも先が読める感じがちょっとしてきましたよね。それで、雛壇からまたロケに回帰していくのかもしれないです。

『元気が出るテレビ』から30年。この間、日本のテレビは、どう変わったのだろう。

そーたに 僕は『放送作家予備校』が出発点だから、初めて出会ったテレビマンが伊藤さんでした。伊藤さんが24時間ずっとテレビのことを考えて、全エネルギーを捧げているのを見て、番組を作るのって、こんなに頑張らなきゃいけないんだと思いました。
テリー そーたには最初から才能があったよ。出どころがぜんぜんわからないような企画を出してきた。何かを見て考えた企画を出すヤツが多いから。
そーたに 「週刊誌で見つけてきたような企画なんか出すな」っていうのが伊藤さんの口癖でした。「このネタ、先週のフラッシュ見て書いてきたな」とかわかるの、すごく恥ずかしいから。
テリー そーたには、企画書のなかにタレントの名前を入れてこなかったのもよかったね。放送作家志望者に「今から100本、企画書け」っていうと、みんな売れてるタレントの名前を入れてくるんだよ。それって初めからタレントに頼ってる。たくさん書いているうちに「親が離婚した」とか「彼女を親友に取られた」というのが出てくるんだ。そういうのがいいんだよね。その人のオリジナルの人生から出てるから。

そーたに 伊藤さんの企画自体が「どっからこんなの出てくるんだ?」と思うようなものばかりでした。伊藤さんは「こいつ、ヘンテコリンでおもしろい」とか「頭悪そうでいいな」って、へんなことを面白がってましたよね。普通のディレクターって、みんなもっと理屈っぽいんですよ。でも伊藤さんにとっては江頭2:50も金正日も麻原彰晃も、同じように「面白いじゃん」ってテレビに出しちゃう。それがすごい。べつに「俺って過激だろ」とか思ってるわけじゃなくて「面白いから」って。
テリー 麻原彰晃は、俺が世田谷に住んでたとき、車で日テレに向かう途中にオウム真理教の本部があったの。壁に大きく、「水中クンバカ世界記録樹立」って書いてあって、水中で座ってる写真とか座禅組んで空中に浮かんでる写真が貼ってあるわけ。1週間ぐらいすると「世界記録更新!」って書いてある。「なんじゃこりゃ。こんなバカなことやってるヤツがいるんだ。面白いなあ」と思って『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』に出したんだよ。
そーたに そういうのを見つけると、伊藤さんは、すぐに動きますよね。
テリー じゃないと、同じように感じる人が出てくるんだよ。すぐやらないとダメ。タッチの差だと思う。

そーたに 企画ってスピード感も必要ですよね。僕の場合はもうひたすら書きまくるしかない。僕は口ベタだからプレゼンで面白おかしくしゃべれるタイプの人と違って企画書で勝負する。
テリー 俺はその“しゃべれなさ”にパワーを感じた。書いてくる企画書に根性が入ってた。当時は手書きだから1~2時間でペラペラッって書いてくるヤツと、そーたにが三日三晩、血みどろで書いたものは差が歴然だったよ。
そーたに 書いたものが面白い以外、生き残る道がないから。会議では面白い部分よりもネックについて言う。自信がある企画ほど「これをやるとしたらネックはこれです」と先に言います。
テリー 会議はそういうキャッチボールの場だよね。そーたにが出したものを、キャッチボールで化学変化させていけるかどうかだから。
そーたに そう。自分からネックを言うのはキャッチボールしたいから。会議がいくら盛り上がっても、現実的なネックでボツになったら意味がない。ネックをどう乗り越えるかの話をまず先にしないと、実現性が低いんですよ。

そーたに 僕はこの仕事のスタートが『元気が出るテレビ』だったから、内容も量も出さなきゃいけませんでした。
テリー たしかに毎週毎週、新しいコーナーが5本もある番組って、今はありえないよな。
そーたに よくあんなことができたと思いますよ。たけしさんも伊藤さんも、キレッキレで、もうダルビッシュとマー君みたいだった。みんなで死に物狂いで企画を練って「よし、これだ!」というのを、伊藤さんがたけしさんにプレゼンに行くと「これ、つまんない」って言われてボツになったり。かと思えば、伊藤さん自身が編集室でVTRを見て「面白くない。これ、なし!」って。レベルが高すぎましたよ。
テリー 俺も狂ってたのかもしれないなあ。あれだけ予算もあって数字も取った番組なのに、あんまり儲かってなかったんじゃないかな。
そーたに 『元気』がキレキレだから、一方に癒やし系の『ねるとん紅鯨団』があったんですよね。
テリー うん。あのときダンカンに「ねるとんはヌルい」って言われたんだよ。でも、とんねるずの客層って『オールナイトフジ』もあるから、『元気』みたいな“パンチパーマ”とか“早朝バズーカ”、見たいと思わないんじゃないかと思ったんだよね。
そーたに ディレクターは違うタイプの番組を2本やったほうがいいですよね。日テレの土屋(敏男)さんも『電波少年』の一方で『ウリナリ』やってたり、テレ朝の加地(倫三)君も『ロンハー』の一方で『アメトーーク!』やったり。
テリー 誰しも自分の中に、イケイケの部分とロマンチックな部分があるからね。両方あっていいんだよ。

そーたに 伊藤さんはヒットしても自分が飽きると、もう次に行っちゃう。「まだ引っ張れるのに」って周りは思っても「もうつまんない」って。で、よその誰かが似た企画を始めるんですよね。
テリー あれもそうだったよな。『浅草橋ヤング洋品店』の『中華戦争』。あれがいつのまにか『料理の鉄人』になってたもんな。
そーたに 『中華戦争』は僕が書いた企画ですけど、後悔してるのは、僕自身が高級中華なんか食べたことがないから、1回めのお題が“ラーメン”で2回めが“炒飯”。ちょっと大衆的すぎるだろって。“炎の料理人”周富徳にラーメン作らせてどーするんだ。
テリー たしかに『料理の鉄人』は洗練されてたよな。きれいにラッピングしてオシャレに作り変えてた。ああ、もうこういう時代なのかと思ったよ。
そーたに こっちはもっとガサツでしたから。
テリー うん。でも俺は『浅ヤン』でやってるほうがカッコいいと思うよ。

そーたに どっちがカッコいいか。どっちが面白いか。伊藤さんの凄さは、そのチョイス能力ですよね。いっぱいある企画のなかからどれを選ぶか。たくさんいる人たちのなかから誰を選ぶか。「有名か、無名か」「偉いか、ペーペーか」とか全然関係なく、フラットに見て面白いものを嗅ぎ分ける本能みたいな能力。その基準は何ですか?
テリー なんだろう。たとえば、お笑いの企画だと「昨日、日本に来た外国人でも笑えるもの」っていうのかな。その点で今年いちばん面白いと思った番組は、『ダマされた大賞』のワッキーだね。
そーたに まっ暗闇の中で女に忍び寄る“変態おじさん”ワッキーを、暗視カメラで撮るやつですね。
テリー そう。同じように外国人でも笑える“ドッキリ”のドタバタって、急に家が吹っ飛ぶとか、椅子に座ったとたん滑り台で奈落に落とされるとかっていうのがあるよね。あれはあれで面白いけど、仕掛けものでしょ。でもワッキーの変態おじさんは、そういう大仕掛けなものじゃなくて、暗闇でじっと待ちかまえて溜め込んで溜め込んで、電気をつけた瞬間に女のコを「ギャッ!」と言わせる。ワンコンセプトの一発なのに10分もたせる。これはもうスペシャルだね。素晴らしい。
そーたに あれは飛び抜けてますね。

テリー そーたには企画を書くとき、喫茶店に行くんだっけ?
そーたに ずっとそうしてました。この店のここに座れば企画が出るっていうクセをつける。ほとんど犬のトイレの習慣と同じ。最近は有料の図書館みたいなところを見つけたので、そこで。
テリー そーたにも考えるのが好きだよなあ。
そーたに 趣味がないから頼まれもしないような企画まで考えて遊んでますね。あとは、何か企画を考えていて、ちょっと疲れたら、休憩がわりに別の企画を考えるとか。ずっと何か考えています。伊藤さんも、相変わらず例の緑色のボールペンと原稿用紙を手放さずに、ずっと考えて何か書いてるんですよね?
テリー そうだね。俺も寝る前に疲れた頭をクールダウンさせるために、あれこれくだらないことを考えてる。「もし今、金正恩に北朝鮮を助けてくれって頼まれたら何をしよう?」とか、「大石内蔵助ってどんな気持ちで討ち入りなんかしちゃったんだろう。あの浅野内匠頭って、なんだか捕まった大王製紙のバカ社長みたいな感じがするけど、本当は大石もあんな殿様のために仇討ちなんかやりたくなかったんじゃないかな?」とか、「太平洋戦争に突っ込んでいく前の御前会議で、『陛下、さすがにこれはヤバいです。アメリカとまともに戦争するなんてやめましょう』って、泣きながら訴える人がなんでいなかったんだろう?」とかって。

そーたに 僕いま50歳になって気づいたことがあるんですよ。前は「若い人の気持ちがわからなくなったら、企画なんか書けなくなるんじゃないか」と心配していたけど、あんまりそんなの関係ないんだなって。若いとかおじさんとか、考える必要ないんですよね。だって、僕、20年前と今とほとんど変わってないですもん。好きなものとか、好きな女のコのタイプとか、面白いと思う気持ちって何も変わらない。
テリー そのとおりだよ。50年分の自分の人生を信じて面白いことを考えればいいんだよね。インターネットとか外の情報より、自分の目で見て感じたことがあらためて大事だと思う。
そーたに 「伊藤さんが50歳のときってどうだったっけ」って思うと、「俺もこれでいいかな」って。いくつになってもスケベなまんま。性欲とか女の人への興味とかって、この歳になっても衰えないんだということを、伊藤さんを見ても自分を見ても、よくわかりました。
テリー それがいちばん大切だよね。


てりー・いとう 演出家。1949年、築地生まれ。日大卒業後、テレビ制作会社・IVS入社。『天才・たけしの元気が出るテレビ』『ねるとん紅鯨団』『浅草橋ヤング洋品店』など数多くのヒット番組を手がける。『お笑い北朝鮮』など著書多数。
そーたに 放送作家。1964年、石川県生まれ。中央大卒。在学中に『天才・たけしの元気が出るテレビ』に放送作家予備校1期生として参加、『進め!電波少年』『アメトーーク!』『世界の果てまでイッテQ!』などのヒット番組に携わる。


キャプチャ  2014年10月25日増刊号掲載
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