【下村博文・辞任勧告スクープ】(05) 下村博文文科相、歪む教育行政“癒着の構図”

全国各地の後援会『博友会』を政治団体とは認めようとせず、大臣のイスに居座り続ける下村博文文科相。更に問題なのは、自らの“後援者”を文部科学行政に関与させ始めていることだ。政治資金規正法を骨抜きにする下村大臣の下で今、教育が揺らいでいる――。

3月23日、東京プリンスホテルで下村博文文科大臣の新刊著書の出版を祝う会が開催された。主催は、小誌がこれまで追及を続けてきた下村大臣の後援会『博友会』だ。出席者の1人が語る。「ホテル内は厳戒態勢で、事前に申し込んだ人以外は入場どころか会場にも一切近寄らせない徹底ぶりでした。立て看板すら無く、出席者も迷ってしまうほどでした。会費は1万2000円。登壇した下村大臣は約300人の支援者を前に講演の冒頭、貴誌の報道について『5年も10年も前の事実無根のことばかりだ。(博友会は)法律的には何の問題も無いので心配いりません』と語っていました」。今回は政治団体として届け出を行っている東京の博友会(以下、東京博友会)主催の身内の講演会という気安さもあって、下村氏は終始上機嫌だったという。だが、博友会の疑惑は未だ何も解決していない。全国には東京博友会以外に、下村氏を支える数多くの博友会があるが、何れも政治団体として届け出がなされていない。その為、「政治資金収支報告書の提出義務すら生じず、資金の流れが不透明で政治資金規正法に反している可能性がある」と小誌は再三に亘って指摘してきた。下村事務所は「博友会の運営には一切タッチしていない」と説明してきたが、実際は地方の博友会の実態が収支報告書の虚偽記載・迂回献金等の疑いを受けることを認識し、榮友里子大臣秘書官が作成した資料を元に対策を話し合っていた事実も報じた。

更に今回、新たな重要証言を得た。




全国の博友会幹部が会合を持った今年2月13日、北陸博友会の発足が発表されたことは先週号で触れた。当日は、会長に就任予定の富山県の学習塾『育英センター』の片山浄見理事長も参加していたが、当の片山氏はこう語るのだ。「北陸博友会は、下村さんから『作ってほしい』と頼まれたから立ち上げることになったのです。2月13日の会合も、1週間くらい前に榮秘書官から『どうしても来て頂きたい』と電話を貰って出席しただけです。立ち上げの会を10月頃にしようという話になりました」。下村氏は国会で、「各地の博友会は有志による任意団体であり、下村事務所は運営や人事に関与していない」と答弁してきた。だが、実際には運営どころか設立を主導していたのだ。問題はそれだけではない。片山氏は富山県初の私立中高一貫校を開設、2013年4月には下村文科大臣自ら入学式に駆け付け、祝辞を述べている。学校法人を所管し強大な職務権限を有する文科省トップが、態々入学式に顔を出して恩を売り、後に自らの後援会設立を要請する。片山氏は、下村氏が所属する派閥『清和政策研究会』(現在の細田派)のパーティー券を買ったとも明かしている。“職権乱用”や“癒着”を疑われても仕方あるまい。塾業者が中心の博友会問題でわかるように、下村氏は権力の執行者として保つべき距離を軽々と踏み越えてしまっている。

同じような“癒着構造”は、文科大臣としての第一歩を踏み出した時から既に明るみに出ていた。2012年12月に発足した第2次安倍政権は、“経済再生”と共に“教育改革”を旗印に掲げ、司令塔として安倍晋三総理の諮問機関『教育再生実行会議』を組織した。そのメンバーの1人に選ばれたのが、京都の学習塾『成基コミュニティグループ』の佐々木喜一代表だ。佐々木氏は、2012年までに個人と企業名で下村氏に計156万円を献金していた。この事実をマスコミに指摘されると、下村氏側は会議の初会合が開かれる2日前に全額返納した。下村氏は、力を入れている大学入試制度改革においても後援者を文部科学行政に関わらせている。「暗記に頼る知識偏重からの脱却を図る」とし、中でも英語は“読む”“書く”“聞く”“話す”の4技能を総合的に判断する試験の導入が2020年度に予定され、最大の目玉とされている。この英語を巡って、現在文科省は日本の英語教育の1つの方向性として、『国際バカロレア』というスイス発の教育プログラムを強力に推進している。その導入のキーマンとなっているのが、『東京インターナショナルスクール』の坪谷ニュウエル郁子代表だ。彼女もまた、下村氏の後援者である。坪谷氏は、2011年に法人名義で下村氏に10万円を寄附している。「下村氏が、ご子息の進路について相談したのが彼女だったと聞いています。国際バカロレア機構アジア太平洋地区の理事でもあり、文科省大臣官房国際課と密に連携し、『2018年には国際バカロレア認定校を200校にする』という政府方針の牽引役になっている」(博友会関係者)。昨年8月24日、国際バカロレア認定校で日本発の全寮制インターナショナルスクール『インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢』の開校式が開かれた。そこには、態々軽井沢まで駆け付けた下村氏が姿を見せた。現役大臣の参加は異例のことだ。「同行の代表理事である小林りん氏は、開校までの苦労を聞かれ『文科官僚が抜け道を教えてくれた』と公言して憚りません。その後、小林氏は教育再生実行会議の分科会メンバーにも選ばれています。ここにも下村氏の“新たな人脈”の縮図があるのです」(同前)

下村氏の“新人脈”の鍵を握る人物がいる。今年2月、下村氏が大臣補佐官に起用した鈴木寛氏だ。元通産官僚で、2年前まで民主党参院議員だった鈴木氏の起用は周囲を驚かせた。「株式会社の学校経営への参画を認める規制緩和の動きに合わせて、2005年に設立された“学校設置会社連盟(現・新しい学校の会)”で下村氏と鈴木氏は揃って顧問を務めていました。当時、教育特区に関する勉強会には、下村氏と鈴木氏がセットで招かれる機会も多かった」(教育関係者)。実は、軽井沢のスクールのアドバイザーを務めていたのが鈴木氏である。また、同校には東京博友会代表の井上智治氏も金銭的にサポートしているという。下村氏の後援会代表を20年以上務める井上氏は、プロ野球球団『東北楽天ゴールデンイーグルス』のオーナー代行として知られるが、楽天の三木谷浩史社長もまた文科行政に関わりを深めている。昨年2月、三木谷氏は英語教育のグランドデザインを描く文科省の『英語教育の在り方に関する有識者会議』のメンバーに就任した。「三木谷氏は鈴木氏とも昵懇の仲。2013年の参院選では、安倍総理直属の産業競争力会議の委員でありながら、民主党だった鈴木氏の後援組織の発起人にもなり、マイクも持って選挙応援した」(文科省関係者)。有識者会議は昨年9月までの間に計9回行われているが、うち4回出席した三木谷氏は、一貫して「大学入試の英語テストには実用英語力を測るTOEFLを導入すべき」との主張を展開した。この有識者会議などを担当しているのが、文科省初等中等教育局国際教育課だ。ここに“英語教育プロジェクトオフィサー”なる肩書きの人物がいる。葛城崇氏。実は彼は楽天社員で、社内英語公用化を推進してきた中心人物だった。だが、有識者会議には提言を受け取る文科省側の人間として出席しているのだ。「有識者会議では『民間から来ました』と挨拶していましたが、楽天社員と文科省職員を兼職した形になっています。文科省での任期は昨年5月から今年3月末までです。ただ、国際教育課の課長などに面談のアポを取ると葛城氏も同席する機会が度々あったそうで、課内での存在感は大きいようです」(同前)

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有識者会議に2人の楽天関係者が

楽天に取材を申し込むと、三木谷社長本人が説明するという。多忙な中、1時間に亘って取材に応じた三木谷氏が語る。「僕は下村大臣の英語教育の改革は推していますが、僕等は国の為に善意でやっているだけであって、文科省との癒着を疑われるような利害関係は今も今後も一切無い。そこには一点の曇りもありません。(英語教育の推進で)楽天のビジネスには何の利益も無いんですから。葛城の件は、『誰か1人現場で人が足りないから出してくれ』と文科省から言われ、うちのエースを態々アメリカの人事部から引き剥がしたんです。細かい勤務体系は文科省に確認してほしい。下村大臣と面識はありますが、献金したことも無い。鈴木さんが大臣補佐官になることは報道で初めて知って、『一言あってもいいだろう』と激怒したくらいです」。文科省広報室に聞くと、葛城氏の採用経緯は「昨年3月17日から31日まで1名を公募し、書類審査と面接を経て採用。立場は非常勤職員で所定の日当を支給し、勤務時間は原則として1日5~6時間」だという。公募に対する応募は何名だったのかを尋ねたが、その部分は回答しなかった。有識者会議のメンバーの1人が語る。「葛城氏が楽天からの出向であることは承知していましたが、違和感は拭い切れませんでした。文科省で得た内部情報を楽天に流すことがあってはならないし、楽天の意を受けて英語教育行政が影響を受けることがあってもならないと思います。有識者会議の後、昨年11月からは同じ国際教育課が“英語評価力及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会”を設置しており、そこには三木谷氏が委員として加わっているだけでなく、TOEFL等の外部試験の関係者も参加しており、議論が一定の方向に誘導されているという危惧があります」。元通産官僚である慶應義塾大学大学院教授・岸博幸氏もこう指摘する。「民間出向は“2年勤務”が基本で、役所に籍を置くことで当然公務員としての守秘義務も掛かります。非常勤は単なる日当制のアルバイト扱いですし、それでは本気度が疑われます。そういう雇用のやり方は聞いたことがありません」

様々な疑惑が浮上する下村文科相。3月24日には、東京地検に対して市民グループが政治資金規正法違反の疑いで下村氏・榮秘書官らを刑事告発した。国家百年の計と言われる教育。その政策遂行にあたっては高い透明性が求められる。下村氏の大臣居座りは、教育行政への信頼を更に失わせることになる。


キャプチャ  2015年4月2日号掲載


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