今年の新人、“ゆとり型”と“熱血型”で混乱必至――突如出現した新種のトンデモ新人、最大の関心事は「いいね!」の数?

2015年も、新入社員が職場にやってくる季節が近付いてきた。だが、「今時のトンデモ新人=競争意欲のないゆとり世代」と決め付けるのは危険だ。2015年4月入社組の特徴は二極化。むしろ警戒すべきは“ゆとり型”より“熱血型”だ。 (宇賀神宰司・広岡延隆・西雄大)

「真剣に吟味して選んだ会社ですから愛着はあります。ですが再三申し上げた通り、私には地元・名古屋で祖父の介護というもう1つの仕事もある。従っていったん入社はしますが、研修期間後、地元以外の支店への配属が判明した場合は即刻退社いたします」。2014年末、大手IT(情報技術)企業の人事担当A氏は、ある内定者のそんな言葉を聞き、唖然とした。同社が大阪支店への配属を前提に内定をこの学生に出したのは2014年10月。確かにその後、学生は、映画や小説の影響か、友人の勧めか理由は定かではないが「介護に目覚めた」と突如言い出し、「祖父の介護をするため、配属は名古屋支店に限定してほしい」と申し入れてきていた。それでもA氏は学生の言葉を話半分で聞いていた。「そりゃそうでしょう。全国転勤ありの総合職として内定を出したわけだし、1人の人間を特別扱いできないことは分かるはず。苦労して手にした内定を蹴るはずないし、むしろ、介護に興味を持つなんて気骨のある子だと期待していたぐらいだったんです。申告するにしてもあまりに直前過ぎます」(A氏)。配属発表まで1ヵ月。この学生が本当に“2週間退社”するかはまだ分からないが、「連絡を取り合っている感触では、彼はもう介護のことしか頭になく恐らく辞めるだろう」とA氏は話す。本当に入社早々退職されると、自身の評価にも悪影響が及んでしまうA氏。今、思うのは、「今時のトンデモ新人=競争意欲がなく主張しないゆとり世代」と決め付けていたことへの反省だ。これまでにも扱いにくいトンデモ新人はいたが、その多くは一言で言えば“ゆとり型”であり“草食型”だった。確かにやや社会的常識に欠け、競争意欲も高いとは言えない。でも、本人に悪気はなく“のんびり屋”なだけで、粘り強い指導により組織に適応させることは可能だった。「でも2015年は違う。ゆとり型がいる一方で、こうと決めたら一直線で、権利意識と我が強く、理路整然と自分の考えを主張する“熱血型のトンデモ新人”がかなりいる。人事担当者は相当苦労すると思う」とA氏は話す。




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※アンケートに寄せられた意見と取材時の話を掲載した。一部、編集部で背景や言葉を補うなどしている。

実は、A氏が言わんとしていることは、本誌が2015年3月に実施した「最近の新入社員」アンケートでも窺い知ることができる。トンデモ新人によるトラブルを集めた調査だが、3年前の同様の調査では、ほぼすべてのエピソードがゆとり的なものだった。「母親から働かせ方についてクレームが来た」「仕事より飲み会を優先する」「仕事が終わってないのに『終わった』と言い切る」などだ。だが、2015年の調査では、「漢字は創作」「座り込んで泣く」「語彙が『ヤバい』以外にない」などゆとり的なエピソードもある一方で、熱血型のトンデモ新人の猛威も数多く報告されている。「入社早々『金曜日ノー残業』『有給フル取得』を宣言。それでも『きっちり成果を出していく』と自信満々」「やるべき作業を後回しにしていることを注意すると、『やろうと思えばすぐできるが、仕事全体の効率性を高めるため今はあえてスルー』などと説明」…。いずれも従来のゆとり型とは異なる新種のトンデモ新人と言っていい。読者の中には、同じトンデモでも、ゆとり型より熱血型の方が元気があって戦力になると期待する人もいるかもしれないが、それは大きな誤解。指導1つとっても、最後は「つべこべ言わずやれ」で言うことを聞いてくれるゆとり型と異なり、熱血型は自分が納得しないと動かない。「今はあえてスルー」と確信を持って特定の業務を拒否している者を説得するには、「その作業がなぜ今、必要なのか」を理詰めで説明しなければならず、その手間は膨大なものになる。つまり、面倒臭い。組織のルールになじもうとしないゆとり型と、組織のルールを自分に合わせようとする熱血型。極端な方向に二極化し、ますます扱いにくくなった2015年のトンデモ新人。不幸にもアナタの職場に彼らが配属されれば、少なからぬ混乱は避けられない。

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それにしても、なぜここへきてトンデモ新人の多様性が進んでいるのか。その背景には、彼らの親であるいわゆる新人類の“個性を最優先する教育”がある、という専門家が多い。2015年4月入社組の親は、1960年代に生まれた世代が中心だ。その多くは20~30代の頃にバブルを謳歌し、前の世代との価値観や行動原理の違いから『新人類』と名付けられた。その象徴的な行動様式が子供に対する寛容な教育方針だ。「自分たちが受験戦争と管理教育の中で育った反動で、多くの人が、子供とは何でも話せる友達感覚の親を目指した」と、若者の動向に詳しい博報堂ブランドデザイン若者研究所の原田曜平リーダーは説明する。兎に角、子供がやりたいことを許容し応援する。大人しい子は奥床しい。我が強い子は元気があって何より。そうやって“世界で1つだけの花”として持って生まれた個性を、そのまま真っすぐに育てられたのが2015年4月入社組。専門家に言わせれば、良くも悪くも個性豊かな面々がそろうのは当然というわけだ。もっとも普通であれば、自信過剰やわがままなどエキセントリックな性格の子供も、挫折を通じて、ある程度“丸く”なって大人になる。ところが2015年4月入社組は、挫折の機会自体が少なかった。例えば就職だ。彼らが就職活動を展開した2014年度の就職内定率は、前年同期比3.7%増の80.3%(2014年12月1日時点)。4年連続で上昇し6年ぶりに80%を超え、2008年のリーマンショック前の水準までほぼ回復した。アベノミクスによる景気回復により、企業の採用意欲が高まったことが背景にある。ただでさえ“ゆとり型”のトンデモ新人に手を焼いているのに、妙にテンションが高く押しの強い“熱血型”が来たら職場はどうなるのか。

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イラスト:Hama-House

突破口はある。様々な個性が居並ぶ2015年4月入社組だが、大きな共通項もあるからだ。その共通点は3つ。1つは「いきなり愛社精神が高いこと」だ。空前の売り手市場ということもあって彼らは、吟味に吟味を重ねて企業を選んできた。その方法も会社訪問などという旧世代の方法ではない。採用支援の『ディスコ』の武井房子上席研究員は、2015年4月入社組の特徴として「デジタル情報を駆使し、ブラック企業でないかを確認しながら就職活動をしてきた初の世代」を挙げる。絶対にブラック企業に入るまいと、多くの学生が匿名掲示板や転職に関するサイトで元社員の声や、現役社員から見た強みと弱み、待遇面の満足度などを徹底的に研究。その結果、入社前から社内の実情に異様に詳しい者も少なくない。「逆に言えば、自ら選んだ最の一社に入社したという自が強い」。採用事情に詳しい千葉商科大学非常勤講師の常見陽平氏はこう話す。2015年4月入社組の2つ目の共通項は、「極めて安定志向が強いこと」だ。新人類の親にのびのびと育てられ、挫折経験の少ない彼らだが、他人の挫折は数多く見てきた世代でもある。今年の新卒の中核は1992年度生まれ。誕生前にバブル経済は崩壊し、“失われた20年”の中で人生を過ごしてきた。高校入学の2008年にはリーマンショックが起き、大学入学直前の2011年3月には東日本大震災が発生。パナソニック・シャープなど日本の名だたる大企業が業績不振に陥り、日本列島にリストラの嵐が吹き荒れた。「2015年の新入社員は父親がリストラに遭った人も多く、安定した生活への憧れが強い」と指摘するのは博報堂ブランドデザイン若者研究所の原田リーダー。少なくとも数年前までの新人のように、「3年で辞める」という発想を持つ者は少ないと見ていい。

さらに、2015年の新卒の3つ目の共通項は「他人からの否定を嫌うこと」だ。3歳になる1995年には米マイクロソフトのOS(基本ソフト)『Windows95』が発売され、パソコンとインターネットが当たり前の時代を生きてきた彼ら。最初に携帯電話を持ったのは小学校高学年で、高校時代には米アップルのスマートフォン『iPhone』が普及した。その結果、多くはフェイスブックなどSNS(交流サイト)やLINEなどメッセンジャーアプリが完全に生活の一部となっている。日常生活での最大の関心事はSNSでの「いいね!」の数。電通若者研究部の奈木れい研究員は「他人から認められたいという気持ち、承認欲求は誰にでもあるが、彼らは承認されるか承認されないかに特に敏感」と指摘する。それだけに、「他人から否定されると大きなダメージを負う」(奈木研究員)。SNSで付き合う友達や知り合いを細かくカテゴリー化しているのは、個人の趣味・趣向を否定されることを避けるため。最初の2つの共通項に比べ、この「否定を嫌う」という3つ目の共通点は、入社後、育成していく上でネックになる可能性もありそうだ。


キャプチャ  2015年3月30日号掲載


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