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【若者50年の足跡】(02) クールジャパン源流――シラケ世代、好きなこと狭く熱く…愛国心、大衆文化から復活

団塊世代の後に生まれ、1970年代から1980年代前半に青春期を送った世代は『シラケ世代』と呼ばれた。政治や社会に関心を持たず、個人的な趣味や小さな人間関係にこもる姿を、やゆした言葉だ。そうした冷ややかな視線をよそに、彼らは“好きなこと”を通じたつながりを張り巡らし、異形の文化と関連ビジネスを育てる。アニメ・アイドル・かわいいもの。世界でも注目されるクールジャパンの源流が、ここにある。学生運動の収束後、静かになった若者らは『三無主義(無気力・無関心・無責任)』のシラケ世代と呼ばれた。就職前の『モラトリアム(執行猶予)』としてのみ青春期を過ごす姿は社会問題になる。現実はどうか。実は大人の視界の外でそれぞれ熱中するものを見つけていた。

◆オタク 1975年12月21日。東京の日本消防会館会議室で、今も続く漫画ファンの同人誌即売会『コミックマーケット』が初めて開かれた。1960年生まれの作家・中森明夫は『おたく』と呼び合う若者を、後に『おたく族』と命名する。1974年のテレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』、1979年『機動戦士ガンダム』は終了後もファンが離れず、総集編や続編を映画化。映画館では若者が行列を作った。この時期、若者向けアニメ専門誌も続々創刊された。
◆アイドル 1978年4月4日。東京の後楽園球場で、アイドルグループ『キャンディーズ』の解散コンサートが開かれた。前年夏の解散宣言以降、各種イベントを自主的に手伝った大学生らの組織が『全国キャンディーズ連盟』、略称全キャン連。若者や大人がアイドル歌謡を真剣に楽しむ先駆けとなった。
◆カワイイ 1972年2月20日号の女性誌『アンアン』は国内旅行を特集、これを機に部数を伸ばす。ライバル誌『ノンノ』も追随し、島根の津和野町など地方の街を紹介。女性の一人旅が歓迎されない時代、全国を旅した若者たちは『アンノン族』と呼ばれた。少女漫画でも西洋が舞台の恋愛劇とは別に、身近な人間関係を描く陸奥A子らの『乙女チック』路線が全盛に。1974年にはサンリオのキャラクター『ハローキティ』が生まれた。







いま政府は『クールジャパン(かっこいい日本)』政策に取り組む。世界に広がった日本の現代文化をてこに、食や観光を売り込む作戦だ。鍵となる現代文化とはシラケ世代が大人の冷笑をよそに支持し育てた、どこかこどもっぽい“非・米国型”の若者文化だ。担い手の源流もこの時代にある。ファンがつくるパロディー誌を著作権の観点から出版社が問題視する中、理解ある姿勢を示したのが角川書店(現KADOKAWA・DWANGO)だった。今年、動画投稿サイト『ニコニコ動画』の運営会社と経営統合するなど若者パワーの活用で姿勢は一貫する。

1958年生まれの作詞家・秋元康は学生時代、ラジオ番組に企画などを投稿。番組構成やアイドル育成へと仕事を広げ『AKB48』では中国・インドネシアへの本格進出を試みる。1990年代以降に国内外でヒットしたアニメやゲームソフトの作り手も、1970年代にヤマトやガンダムに熱中した人々だ。子ども向けだったハローキティは、大人になってもキティを“卒業”しないこの世代に支持され商品を増やし海外でもファンを拡大。サンリオは連結売上高の4割を版権収入で稼ぐ。アニメやキャラクター商品なんて子どものもの。若者が熱中するのは恥ずかしい。もしもこの世代がそう考えたら、こうした文化やビジネスはなく、海外での日本のイメージも『エコノミック・アニマル』のままだったかもしれない。

               ◇

この世代は、なぜ多種多様な文化を生み出したか。1つはミーイズム(自分主義)の台頭だ。希望の生活は「趣味にあったくらし方」だと答える青少年は1970年代に2.5ポイント増え、「清く正しくくらす」「社会につくす」はそれぞれ6.1ポイント・1.5ポイント減っている。高学歴化と晩婚化の影響もある。高校卒業から結婚までの期間が延び『女子大生』や『OL』といった層が新たに誕生。経済成長でアルバイト代や給与も上がり、お金と時間とセンスを兼ね備えた“若い女性”という巨大市場が生まれた。

ゆとりとセンスを手にした若者は、前世代が半ばタブー視してきた“日本”に目を向けた。『ヤマト』は第2次大戦で沈んだ戦艦を改造し、人類を救うためナチスを連想させる宇宙人に戦いを挑む物語だ。「第2次大戦の正しいやり直し」だとこの世代の評論家・佐藤健志は著書『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(1992年)で読み解く。アンノン族の小京都人気や少女漫画の日常志向も日本回帰を裏付ける。敗戦から30年を経て、封印された愛国心がアニメや旅など大衆文化から復活したという指摘もある。今の若者が神社や花火などを楽しむ“愛国消費”のもとでもある。

外向的な米国の若者文化とはひと味違う日本の若者のライフスタイルは米国の同世代にも影響を与えた。米国でベビーブーマーに続く世代をX世代と呼ぶ。1961年生まれの作家、ダグラス・クープランドが1991年に発表した同名の小説が由来だ。主人公が日本の『シンジンルイ』に言及、現実より仮想の存在に引かれるなど、同じ感性を持つ人々がいたと語る場面がある。実際、多様性を重んじる新人類の生態が作品のヒントになったと作家は語る。豊かさと自由の中で自分の“好き”にこだわった世代が、国境を超える文化を生み出した。 《敬称略》

               ◇

編集委員・石鍋仁美が担当しました。


▼シラケ世代 おおむね1950年代後半から1960年代前半生まれ。団塊世代とバブル世代に挟まれた人々を指す。学生運動に乗り遅れ石油危機を経験。団塊に比べ政治に無関心で生活でも無気力という印象から、当時こう呼ばれた。


キャプチャ  2014年10月12日付掲載
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