【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(04) イスラム原理主義とガチンコで戦うモナ・エルタハウィを君は知っているか?

今の世界情勢では、イスラム過激派によるテロが一定の割合で起きてしまうことは避けられない。この冷徹な現実を受け入れよう。ムスリムの人々への監視を強めるとか、そんな短絡的な発想は社会の“溝”を深めるだけで、何の解決にもならない。前回はそんな話をしました。根本的な解決策があるとすれば、それはイスラム世界そのものを変えること。でも、どうやって? 実は、そういう動きがイスラム世界の内側から出てきているんです。

2011年1月、チュニジアの独裁政権が崩壊したジャスミン革命を皮切りに、『アラブの春』と呼ばれるデモの嵐が吹き荒れた。盤石な独裁政権下のサウジアラビアやイラン、既に紛争状態にあったイラク、アラブの春が大弾圧と内戦の引き金になってしまったシリア等は別にして、多くのアラブ諸国で民衆が蜂起し、政権が転覆したり、社会が大きく動いた。しかし、結果的には然程状況が好転しなかった国も多い。例えばエジプトでは、ムバラク独裁政権の崩壊後にイスラム主義政党のムスリム同胞団が政権を掌握。その後の混乱の中で軍がクーデターを起こし、今も軍事政権下にある。この軍事政権は、過去の圧政を表面上は批判しながら、実のところ同じように宗教という“印籠”を使い、無神論者や女性・ゲイを弾圧しています。但し以前と違うのは、理不尽な圧政に対する“カウンター”が存在感を発揮していること。今回紹介するモナ・エルタハウィさんは、その中心人物の1人です。モナはエジプト系アメリカ人の女性ジャーナリストで、アラブの春の時はエジプトの首都カイロに入り、英語とアラビア語で24時間生々しい情報をツイートし続けた。その後、新たに出現した圧政と戦う為に、カイロで抗議デモに参加した際に警察に捕まってしまいます。直ぐに世界中のフォロワーから非難の声が殺到し、当局は止む無く解放しますが、モナは拘束中に暴力で両腕を折られたり、大勢の男たちから股間に手を入れられるなど、酷い性的暴行を受けた。事実上“男尊女卑”のアラブ社会では、他にも同じような目に遭った女性が数多くいるけれど、彼女たちは声を上げられなかった。ところが、モナは両腕にタトゥーを入れ、髪を真っ赤に染め、カイロで活動を再開した。アラブ社会では考えられないことですよ。




Mona Eltahawy 01
右腕のタトゥーは“復讐とセックスの神”とされる古代エジプトの女神『セクメト』を模っている。「現在のイスラム世界で女性が受ける抑圧や性暴力に復讐しつつ、一方で気に入った相手とは思う存分ファックしてやるぜ!」――そんな挑発的なメッセージが込められているんです。モナはこう言います。「イスラム世界を変えるために必要なのは、女性の意識と性の解放だ。頭の中からは独裁者・ムバラクを追い出したけれど、寝室にはまだムバラクがいる。これは、私たちの膣から独裁者や原理主義者を立ち退かせる為の運動だ。但し、私が気に入った人は、私がいいと言ったときには入って来てほしい。アラブ女性よ、もっとセックスをしよう、フェアなルールで――」。モナは、“欧米で評価されるアラブ系フェミニスト”という枠に留まらず、イスラム世界の内側で声を上げる。自分が汚されたり、弾圧されながらも戦い続ければ、色んな方面から応援を引き出せることを知っている。碌な戦略も無いまま原理原則を振り翳したり、安全地帯から綺麗事を言う人たちとは次元が違います。だって、「聖典コーラン自体は男尊女卑じゃないというなら、現在の法解釈が間違っている。それを変えろ」とまで言うんですよ。最悪の場合、どこかからファトワ(宗教指令)が出されて刺客が来ても可笑しくないのに…。本当にガチンコの戦い! 勿論、彼女の言説はイスラム世界では賛否両論。過激な原理主義者だけでなく、敬虔な信仰心を持つ穏健派の中にも快く思わない人も多い。「男性と女性を分けるのは悪いことではない、西洋の価値観を押しつけるな」と。それでも、モナの味方はジワジワ増えているように見える。アラブの春は決して無意味だったわけじゃなく、人々の心を着実に解放させているんだと思います。

モナはまた、アメリカでも戦っている。“胎児の人権”を振り翳してレイプ被害者の中絶をも許さないキリスト教右派議員や、反ムスリムキャンペーンを張る右翼団体とバチバチやり合う。抑々、こういうタカ派の支持を受けた共和党政権が、嘗てエジプトのムバラク独裁政権を支援してきた訳だから、そういう意味でも彼女の活動は筋が通っている。大局的な視点で言えば、モナの活動はノーベル平和賞を受賞したパキスタン出身のマララ・ユスフザイさんにも繋がっていく。受賞当時、「マララは、リベラルな大人たちがイスラム世界を悪く見せるために利用している“パンダ”だ」という心無い批判が一部で蔓延りました。でも、モナとマララの活動を合わせて理解すれば、この批判が的外れだとわかる。女性が教育を受ける機会・発言する機会が極めて制限された社会では、女性は力の抑圧に対抗する術を持てず、家に押し込められ、貧困が下の世代に受け継がれる。逆に言えば、女性が皆教育を受け、文字が読めるというラインを越えれば、一世代で政治秩序や社会秩序は変わる。過激な原理主義が力を持つための土台が揺らぐ。タリバンはそれを恐れて、マララの頭を撃ち抜いたんです。教育という“苗”を植えるマララと、成長した大人の女性を解放するモナ。下世話な言い方だけれど、上(頭)からも下(膣)からもフェミニズムのデモクラシーを促す彼女たちの活動を応援することは、イスラム世界を良い意味で多様化・流動化させていくことに繋がる。

因みに、日本人の女性にモナの話をすると、2人に1人は目をキラキラさせます。日本でもこれから女性の意識はどんどん変わっていき、それを理解する男がモテるようになる。そういう意味でも、僕は皆にモナのことを知ってほしい。彼女が日本に来たら是非、岩井志麻子さんとコラボするといいと思う。僕が通訳します!


Mona Eltahawy エジプト系アメリカ人ジャーナリスト・フェミニスト。ニューヨークタイムズ・BBC・アルジャジーラ等、欧米やアラブ圏の多くのメディアに出演・執筆。2009年4月にツイッターに登録して以来、総ツイート数は30万以上!

Morley Robertson 1963年生まれ、ニューヨーク出身。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、BSスカパー!『NEWSザップ!』、ニコニコ生放送『モーリー・ロバートソンチャンネル』、Block.FM『Morley Robertson Show』等にレギュラー出演中。


キャプチャ  2015年3月2日号掲載


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