【新聞・テレビが報じない沖縄のタブー】(02) 総額11兆円超! 『沖縄振興予算』という“麻薬”

「絶対に基地を作らせない」。アメリカ軍普天間飛行場の辺野古移設を巡って、沖縄県の翁長雄志知事がヒートアップしている。だが、本当にそれは“県民の総意”なのか? 沖縄経済の内実を取材すると、基地を巡る巨額のカネの動きが浮かび上がる。“沖縄のタブー”第2弾!

「知事、圧倒的民意訴え」。4月17日、首相官邸で安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事の初会談が行われた。冒頭の一文は、翌日の地元紙『沖縄タイムス』1面トップの見出しである。翁長知事は会談で次のように述べて、名護市辺野古での基地建設に反対する考えを改めて示した。「選挙で辺野古基地反対という民意が示された訳であります。沖縄は自ら基地を提供したことは一度もありません」。更に翁長知事は、「絶対に基地を作らせない」「オバマ大統領に県民の民意を伝えてほしい」と迫った。5日の菅義偉官房長官との会談で、菅氏が発した「粛々と」という言葉を「上から目線だ」と批判した翁長知事だが、この日は安倍首相に一貫して居丈高だった。嘗て、沖縄問題を取材した経験のあるベテラン記者は、「この光景はデジャビュだ」と語る。「基地問題で沖縄の政治家が政府に圧力を加え、政府側も『沖縄の気持ちを理解している』と頭を下げる。この構図が何度繰り返されてきたことか。しかも、その度に政府は沖縄を宥める為に、安易に巨額の予算を投下してきた。この構図が沖縄の経済を蝕み、自立を阻んできたんです」。既に、政府は2021年度まで毎年3000億円台の沖縄振興予算を確保する方針を沖縄県に伝えている。「沖縄振興予算は、沖縄経済にとって“麻薬”のようなものです。基地反対を訴え続けることで、政府からのカネで地元の政治家や建設業者が潤うという構図が何十年も続いている。基地容認派の住民も大勢いるのに、政治家や地元メディアが『基地返還は県民の総意』と言い続けるのは、『振興予算を確保したい』という面もあるからです」(同前)。毎年3000億円もの予算は何に使われているのか? 現地取材で見えてきた“沖縄経済の真実”を伝えたい。




青い珊瑚礁の海に一直線にコンクリートの橋が延びる様は、壮観としか言い様が無い。カツオやマグロ漁中心の伊良部島と、この地域の中心である宮古島を結ぶ『伊良部大橋』は、今年1月に開通したばかり。全長は3540mで、通行料金がかからない橋としては全国最長だ。地元・伊良部商工会の大浦貞治会長はこう話す。「橋の開通によって、離島だったこの島も便利になりました。島出身でも宮古に出て働く若者が多いのですが、子供が風邪を引いた時に気軽に島に住む両親に預けに来ることができるようになった。観光客向けに特産品を販売する場所を設けて、観光振興にも繋げたい」。沖縄では離島に住む苦しみを指す『島ちゃび』という言葉がある。悪天候で船が出せず、急患を移送することも出来ない等、離島での生活は容易ではなく、橋に期待する住民は多い。だが、橋の開通に因って島の経済にマイナスの影響も出始めている。島内のスーパーの店長は話す。「橋の開通で、1日の売り上げが10~15%落ちました。島の人が宮古にあるショッピングセンターに行くようになり、日用品や雑貨を買ってくれなくなったからです。客はお年寄りばかりになってきました」。更に、タクシーの運転手はこう懸念する。「これまで交通が不便だった為に島に留まっていた住民が、橋が開通したことで島を出るケースが増えてしまうんじゃないかと心配しています。便利な生活を覚えると、中々島に残ろうとは思わない」。皮肉にも、橋ができたことで離島から人が吸い取られる“ストロー効果”が現れ始めているのだ。その伊良部島の人口は約6000人だが、伊良部大橋の総事業費は395億円に上る。東京スカイツリーの建設費とほぼ同じ額だ。

離島が多い沖縄には、巨額予算を投じた長大な橋が他にもある。沖縄本島と古宇利島を繋ぐ『古宇利大橋』は、全長1960m・建設費は270億円にも上るが、古宇利島の人口は僅か360人余りに過ぎない。「“島ちゃび”の克服の為とはいえ、費用対効果の視点を忘れてはなりません。どちらの橋も県の事業として建設されましたが、沖縄だけの特例措置として9割は国からの補助、つまり国民の税金が投入されています」(県内の大学教授)。1972年の本土復帰以来、沖縄振興予算の総額は昨年度までで11兆1500億円余りに上る。これは、沖縄振興を担当する内閣府沖縄担当部局分の予算だけだ。沖縄大学地域研究所特別研究員の宮田裕氏によると、防衛省や農水省等他省庁の予算も積み上げれば、これまでに沖縄に投下された予算は少なく見積もっても17兆円まで膨れ上がるという。また、沖縄には他の都道府県には無い高率の国の補助が認められている。例えば、河川の改修工事を行う場合、本土では国の補助率が2分の1なのに対し、沖縄では10分の9にもなる。更に、酒税や揮発油税等でも沖縄だけの特別な軽減措置がある。こうした特別措置の生みの親が、初代沖縄開発庁長官で、“税調のドン”とも呼ばれた山中貞則氏(故人)だ。鹿児島県出身の山中氏は、沖縄県民への“償いの心”を屡々口にした。「手厚い補助により、復帰前には全国平均の半分にも満たなかった農地の整備率やゴミの焼却率・10万人当たりの病床数等の社会資本の整備は既に本土並み、或いはそれを上回るほどになっています。それでも今も特例措置が続くのは、基地の負担があるからです。しかし、政府は建前としては『基地と振興策は無関係』と言わざるを得ないのです」(内閣府関係者)

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基地負担の見返りであることを如実に示すのが、右のグラフに示した沖縄振興予算額の推移だ。基地問題を巡って政府と激しく対立した大田昌秀氏の知事在任中、政府が配慮に配慮を重ねた結果として振興予算は年々増加し、1998年には4713億円にも上っている。当時、大田氏が振り上げる拳は“黄金の拳”と呼ばれた。大田知事時代の1995年にアメリカ軍人による少女暴行事件が起きて反基地感情が一気に高まり、翌年の“返還合意”に繋がった。当時の橋本龍太郎首相は、沖縄では高く評価されている。2006年7月に橋本氏が亡くなった翌日、沖縄の地元紙には橋本氏を追悼する記事が、1面から5面・6面と延々と続いた。「沖縄への思い 最後まで」「県民に大きな損失」等の見出しを読むと、橋本氏が沖縄でどれだけ幕われていたのかがわかる。「橋本氏だけではありません。小渕恵三氏や野中広務氏等、自民党経世会に連なる政治家は今も沖縄で人気です。何れも沖縄に特別な配慮を示し、多額の予算を沖縄に付けてくれた政治家だからで す」(地元記者)。橋本政権が始めたのが、総額で1000億円に上る『沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業』、所謂『島田懇談会事業』だ。「事業の審議を行う懇談会の座長だった島田晴雄氏(現:千葉商科大学学長)の名前を取ってこう呼ばれました。『基地自治体の閉塞感を緩和する』ことが目的とされましたが、実態は大田県政下で反基地感情が高まった各自治体を宥める為のもの。とりわけ、嘉手納町等政府へのパイプが太い保守系の首長がいる自治体に手厚くバラまかれた。革新である大田知事が焚き付けて、保守の首長たちが予算を分捕るという役割分担が見事に行われた形です」(政治部記者)

沖縄本島北部にある宜野座村。アメリカ軍普天間飛行場の移設先とされる辺野古地区を抱える名護市の南隣に位置する。村の漢那地区に建つのが、『かんなタラソ沖縄』(旧名称)だ。ミネラルを含む海水を使った美容効果・疾患予防等を謳い文句にしたスパ施設である。椰子の木が植えられた南国風の豪華な施設の建設費は24億円。島田懇談会事業に因って建設され、2003年にオープンした。「第3セクターによる運営方式を取ったのですが、オープン当初こそ年間17万人の集客がありましたが、年々客数が減少し3年前には9万人にまで落ち込み、毎月500万円の赤字を垂れ流す状態でした。結局、昨年に第3セクターは解散し、累積赤字の2億8000万円のほぼ全ては村の財政から補填せざるを得ませんでした」(宜野座村の新里清次企画課長)。現在は民間企業が指定管理者となって運営が続けられているが、抑々十分な需要予測に基づいた要望だったのか? 「採用されるまでに、政府と長い間色々揉んで作ったんです。簡単に作った訳ではないです」。当時の浦崎康克村長は小誌の取材にそう答えるが、当時総理補佐官として事業の取り纏めにあたった岡本行夫氏はこう振り返る。「“かんなタラソ”は見通しが甘いと思っていましたね。沖縄では同じような計画が沢山ありましたから。当初は僕も(座長の)島田さんも反対でした。『それでも作りたい』と地元から要望があったので、毎年の維持費まで含めた予算措置を講じることにしたのです」。岡本氏は、「嘉手納町のロータリー再開発事業等、成功した事例もある」とするが、『かんなタラソ』の事例を見ればバラマキありきの公共事業の面が強い。

バラマキは、何も自民党政権の時だけではない。民主党政権下でも構図は変わらなかった。沖縄本島中部の沖縄市。嘗て“コザ市”と呼ばれていた時代には、嘉手納基地のメインゲート前を中心に、アメリカ軍兵士を相手にした多くの飲食店が軒を連ねた。「ベトナム戦争の頃は、1週間の売り上げで家が建つと言われたほど儲かった」。年配の住民はそんな昔話をするが、近年は反基地感情の高まりを懸念したアメリカ軍当局が兵士の外出を規制するようになり、夜の街はすっかり賑わいを失った。その沖縄市の経済再生策として国や県が進めるのが、市の東部にある泡瀬干潟の埋め立て事業だ。南西諸島最大のこの干潟には360種類以上の貝が生息し、ムナグロ等の渡り鳥の越冬地でもある。環境省によって、ラムサール条約の登録湿地の潜在候補地にされている。地元で埋め立てに反対する『泡瀬干潟を守る連絡会』の前川盛治事務局長はこう話す。「当初は『187haを埋め立てて一大リゾート基地を作る』という計画でしたが、我々が起こした訴訟で2008年の地裁判決・2009年の高裁判決で共に『経済的合理性が無く、埋め立て事業に公金を支出してはならない』とされました。更に、環境省は『この干潟は、トカゲハゼ等の希少動物が棲息する貴重な自然環境である』として、反対の立場を表明。これを受けて、2009年に当時の前原誠司沖縄担当大臣が工事をストップしたのです」。豊かな自然環境が守られると喜んだ会のメンバーだが、翌年には唖然とさせられる事態が起きる。「地元の市長の要望を受けて、当初計画の凡そ半分に当たる96haの埋め立てに前原大臣がゴーサインを出したのです。当時は、鳩山由紀夫氏の『最低でも県外』発言とその後の迷走で県民の怒りが高まっていた時期。ゴーサインの背景には、県民を宥める“アメ”の側面があったと思います」(前出・地元記者)

前出の前川氏が嘆息する。「計画では900mの人工ビーチを建設し、ホテルを誘致することになっています。でも、態々自 然が売りの沖縄まで来て、人工ビーチで泳ぐ観光客がどれだけいるでしょうか?」。辺野古沖の埋め立ては環境破壊だとして反対しているのに、リゾート基地の為には貴重な干潟を理め立てるという大いなる矛盾。それは、翁長知事が那覇市長時代に手掛けた大型事業にも現れている。地元の携帯電話会社の社名を冠した『沖縄セルラースタジアム那覇』。那覇市内に5年前にオープンしたこの球場は、プロ野球球団『読売ジャイアンツ』が毎年キャンプを行う場所でもある。「大の巨人ファンである翁長氏が、キャンプ誘致の為に新球場の建設を進めたのです。記者会見では、巨人の帽子にマスコットのジャビットくんを抱えて臨んだほど。3万人も収容できる大規模な球場とした為に建設費は70億円を上回りましたが、その内の53億円は防衛予算から補助を受けたのです」(那覇市議)。一見、球場と防衛予算は無関係に思えるが、球場建設には『防衛施設周辺まちづくり計画事業補助金』が活用されていたのだ。 元アメリカ沖縄総領事のケビン・メア氏はこう指摘する。「沖縄では保守・革新を問わず、政治家は本音では基地問題を解決したくないかのように見えます。補助金を引き出す為の交渉材料として、政治家が基地問題を利用している面があるのではないでしょうか」。斯くして、湯水の如く予算が沖縄に投下された結果、何が起きたのか。「県内には5000社もの建設業者が犇めき合い、全産業の売上高における建設業の割合は8%に上る。これは全国平均の2倍です。一方で、製造業は全国平均の3分の1の4%。多額の補助金に因って公共事業依存型の経済となり、真面目にモノづくりをするのが馬鹿馬鹿しいという風潮が広がっているように見えます」 (前出・内閣府関係者)

前出の宮田氏は、「ハコモノのランニングコストや維持費が市町村財政を圧迫しており、県民所得は全国最下位のままで失業率も極めて高い等、経済効果が十分に現れていない」と指摘する。また、沖縄経済に特徴的なものとして、アメリカ軍基地の地主に支払われる巨額の地代が挙げられる。地主の数は4万人以上に上り、その額は今年度予算で978億円にも上る。「アメリカ軍基地の地主に支払われる地代は防衛予算の中から捻出されており、その額は地主が作る“沖縄県軍用地等地主会連合会(土地連)”と防衛省が毎年交渉して決めます。交渉と言っても、『値上げしなければ契約更新に応じない』と主張されるので、要求を呑まざるを得ない。結果、毎年のように地代は上がり、復帰時に比べて8倍近くになっています」(防衛省関係者)。土地連は値上げ要請と共に、基地を返還しないように毎年申し入れているが、その事実を地元メディアは報じようとしない。彼らにとって不都合な真実だからだ。責任は沖縄だけにあるのではない。長年、バラマキを続けてきた歴代政権の責任も重い。 《以下次号》


キャプチャ  2015年4月30日号掲載


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テーマ : 沖縄米軍基地問題
ジャンル : 政治・経済

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