【誰がテレビを殺したのか】(上) 渦中のコメンテーターが証言! 視聴者には見えないテレビのタブー

「テレビがつまらなくなった」と言われて久しい。こんな“常識”を態々指摘するこちらのほうが恥ずかしくなるほどだが、それにしても最近は酷過ぎやしないか? ただ、当たり障りの無い言葉と映像が流されるだけ。例えば、政治報道でも嘗ては“テレビが政権を作る”と言われるほどの凄味があった。それが今ではどうだろう。テレビはなぜ、斯くも不自由で、物言えぬ、窮屈で退屈なメディアになったのか? その理由を当事者たちの証言から探ることで、この国の言論空間を巡る危機的状況を焙り出す。

【証言①】勝谷誠彦…『スッキリ!!』降板2ヵ月前の“後藤健二さん殺害映像”20分問題
2015年の3月末、私は9年間続けていた日本テレビ系の朝の情報番組『スッキリ!!』を降板した。理由はいくつか考えられるが、契機の1つは昨年12月に行われた第47回衆議院議員総選挙だろう。この時、私が「応援演説に行く」と番組に伝えたところ、一方的に2週間の出演停止を言い渡された。よくわからない。公職選挙法により、候補者自身がテレビに出演して話してはいけないという制約はあるが、応援演説など多くの有名人・コメンテーターなら誰でもやっていることだ。抑々、この民主主義国家で選挙の応援に入ることが何の悪なのか? 私だけバカ正直に伝えたらこの有り様だ。「選挙期間中だから」と百歩譲っても、投開票した翌日の月曜日も出演を見送られたのは理解ができない。スタッフにこちらの正当性を訴え、なぜなのかと聞いても明確な回答も得られず、それっきりだった。

近頃で最も怒りを感じたのは、ジャーナリストの後藤健二さん殺害の映像がYouTubeで流された時だ。あの事件は2月1日、日曜日の未明。つまり、『スッキリ!!』はそれを早くに報じられる番組の1つだったのに、たった20分しか伝えなかった。日本人の、しかも戦場に暮らす子供たちの現状等をレポートする正義感に溢れたジャーナリストが、無法者たちの手で無残にも殺されたのだ。更に、その後に長々と報じたのは芸能人の結婚ネタだった。番組に対して「お前たちはそれでも日本人か」と言いたくなるほど情けなくなった。尺の短さは打ち合わせの段階で伝えられていて、その時に私は「今日はブチ抜きじゃないんですか? これは日本国に対する卑劣な挑発なんだよ。何でそれができないの!」と意見を申し述べた。しかし、驚くべきことにスタッフはヘラヘラと笑うだけであった。実は近年、「キー局のスタッフの劣化が悍ましい」と感じる。打ち合わせで台本を読み進め、私が「これはちょっと違うんじゃないの?」と苦言を呈しても黙り込むのみ。私は苦言を呈するのが仕事だと思っていたが、最近はどうも事情が違うらしい。本番中においても同様である。例えば先日、中国人観光客たちが銀座で“爆買い”をするというニュースで、「中国に無いのはマナーと民主主義。これは永遠にないだろう」と発言したら、司会の加藤浩次クンに「それは勝谷さんのご意見ですからね」とフォローを入れられた。こんなのは毎回のことだが、私は「“勝谷さんのご意見”を言う為にここに座っているんじゃないのか?」と疑問に思う。

そういったものが積もり積もったのか、私は番組を降板することになった。それについて局は「ローテーションで卒業」と称したが、実際は強制退学だ。但し、テレビ全体の名誉の為に言っておくと、これらはキー局の話であり、地方局は物作りに邁進し、身近な例だと『カツヤマサヒコSHOW』(サンテレビ)のスタッフたちなんかは誠に素晴らしい仕事をしている。これからのテレビは、寧ろ地方に活路があると思っている。私が『スッキリ!!』を辞めたのは、地上波中央キー局の1つの終焉とすら思える。


勝谷誠彦(かつや・まさひこ) コラムニスト。1960年、兵庫県生まれ。早稲田大学第1文学部文芸専攻卒業。著書に『バカが隣に住んでいる』(扶桑社)・『獺祭 天翔ける日の本の酒』(西日本出版社)等。




【証言②】古賀茂明…『報ステ』古舘伊知郎は知らぬフリをした
私は番組コメンテーターを務めていた『報道ステーション』(テレビ朝日系)を、この3月末で事実上クビになった。“事実上”というのは、報ステには1ヵ月に1回を目途に出演することになっていて、これまでは3ヵ月先ぐらいまで予定が決められていたのが、突然先の予定が無くなってしまったからだ。ネット上では、「今年1月23日の“I am not Abe.”発言が原因だ」と囁かれた。私はこの日の放送で、暴走する安倍政権が「日本はアメリカと一緒に中東で戦争する国になった」というイメージを世界中に発信している状況を批判して、「日本人は今、“I am not Abe.”というカードを掲げる必要があると思う」と発言した。放送後は、菅官房長官側近から抗議があったという(テレビ朝日広報部は「そうした事実は無い」と説明)。その時点で、私の出演は3月27日まで決まっていた。だから、そこまでは番組側も私を出さざるを得なかった。

しかしこの発言後、「4月以降の出演は無理だ」とスタッフに告げられた。但し、この発言の前からテレビ局側は私を降ろそうとしていたようだ。今やどのテレビ局もそうだが、テレ朝は早河洋会長が安倍晋三首相と食事に行く等仲が良く、政権に阿っている。そうした空気が局内にも伝播し、篠塚浩報道局長も政権批判に過敏になっていた。実際、総選挙の前に出演見合わせが検討されていたようだ。しかし、その際にはチーフプロデューサー等の尽力で出演が可能になった。だが、4月からはそのチーフプロデューサーや、朝日新聞の恵村順一郎解説委員も更迭される(テレビ朝日広報部は「恵村さんは定期的な交代で、人事について決定していることは無い」と説明)。番組内では、出演者を決める後任のプロデューサーや古舘氏も「古賀さんには出てほしい」と言うのに、「出演は決められない」と言う。私は「はっきりしてほしい」と思い、報道局長と話し合いを持ちたかったが、会おうとしない。そこで3月6日の出演前日に、「最後の2回、古舘(伊知郎)さんにも番組で色々聞いてみたいと思います。是非見てください」とツイッターに書いたところ、焦った報道局長が面談を申し入れてきた。彼はその場で「番組で質問するなら出演させないぞ」と圧力をかけながら、「リニューアルで出演は白紙だが、少なくとも4月の出演はさせない」と言った。

1つ不可解に思ったのは、この番組で最も力を持つ古舘氏の振る舞いだ。嘗ては「原子力ムラを追及する為なら、圧力がかかって番組を切られても本望」とまで言っていた彼が今回、“番組の命”と言ってもよいプロデューサーや恵村氏の更迭に知らぬフリをしたというのである。番組制作会社の『古舘プロジェクト』には、10億円単位のお金がテレ朝から流れる。社員の生活を守る為には仕方ないということなのだろう。一連の更迭人事が大騒ぎになって、実は局側は喜んでいるフシがある。政権への忠誠を示す最高のアピールになるからだ。テレビ局が政権との近さを競い合う現状。あまりにも危険ではないか。


古賀茂明(こが・しげあき) 元経済産業省官僚・『古賀茂明政策ラボ』代表・大阪府市統合本部特別顧問。1955年、長崎県生まれ。著書に『日本中枢の崩壊』(講談社)等。


キャプチャ  2015年5月号掲載


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