「就活止めて」、学生に圧力――選考早い企業の繋ぎ留め過熱、文部科学省が実態調査へ

来春卒業する大学生らの就職活動が学生有利の“売り手市場”で進む中、企業が内定や内々定を出した学生に活動を終えるよう働き掛けを強めている。一部では、過剰な行為が『終われハラスメント(オワハラ)』等と呼ばれて問題化するケースも。学生の自由選択を妨げれば違法行為となる恐れもあり、文部科学省は今年度から初の実態調査に乗り出す方針だ。

「約束と違うじゃないか!」。東京都内の私立大学に通う男子学生は4月、シンクタンクの人事担当者から電話で怒声を浴びた。3月に「就活を終えること」を条件に内々定を得たが、就活を続けていると明かした途端に、約2時間に亘って電話口で説教され、結局内々定を取り消されてしまった。東京都内の別の私立大学の男子学生(21)、は応募した人材派遣会社から「8月上旬は研修があるので予定を空けておくように」と繰り返し念を押され、内定の条件として誓約書へのサインを求められた。2社の行為は、学生へのハラスメント(嫌がらせ)に当たる可能性がある。文部科学省は2月、「内々定と引き換えに就職活動を止めるよう強要する」「8月1日以降、長時間拘束する選考会や行事の実施」等の例を挙げて、就活生へのハラスメント行為を慎むよう企業に求めた。今年度は今月から、大学の就職支援担当部署等を対象に抽出方式でハラスメント行為の実態調査も行う。

オワハラが問題化した背景には、経団連が今年から新卒採用に関する指針を見直し、採用選考の開始時期を従来より4ヵ月遅らせて8月1日としたことがある。外資系や非経団連系の企業は指針に縛られず、早い段階で選考を行える。経団連加盟企業が、インターンシップ等を通じて実質的な選考を前倒しで行うことも多いとされる。この為、「早めに採用選考をする企業ほど内定辞退を警戒し、オワハラが増え易い状況が生まれている」(明治大学キャリア支援センターの担当者)。同センターには、昨年の就活でも「『内定を辞退したら訴える』と言われた」といった相談があったという。多くの企業は内定を出した学生と継続的に接点を持つ等、適切な範囲で内定辞退対策を講じており、行き過ぎた行為は一部とみられる。労働問題に詳しい今津幸子弁護士(46)は、「企業にとって人材確保は死活問題」としながらも、「脅迫や強要等、学生の自由な意思形成を阻害する過剰な行為には違法性がある」と指摘する。就職活動の制度改善等に取り組んでいるNPO法人の『DSS』(東京都千代田区)の辻太一朗代表も、「立場が弱い学生に不利な状況を作って選択を迫ることは好ましくない。無理な拘束は自重すべきだ」と訴えている。


≡日本経済新聞 2015年5月9日付掲載≡


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