「技術面にばかりスポットライト、企業の改革は遅れている」――ヨーロッパ企業が直面する『第4次産業革命』に次のハードル

ドイツで開かれた世界最大の産業見本市は、工業のデジタル化構想『インダストリー4.0』一色だった。人と協調するロボット、ブロックのように組み替え可能な生産ライン等、構想実現に向けた技術開発が進む。他方、新しいモノ作りに対応する為には企業自体の変革も求められる。欧州企業が直面する“ハードル”とは――。 (蛯谷敏)

ドイツ・ハノーバーで2015年4月13日から17日まで開かれた世界最大の産業見本市『ハノーバーメッセ』。話題は『インダストリー4.0』一色に染まった。企業の枠を超えて作業者やロボットがネットワークで繋がり、顧客まで結び付けながら生産改革を起こす。インダストリー4.0は、蒸気機関・電気エネルギー・コンピューターに続く『第4次産業革命』とも言われる。ドイツが官民一体で推進するプロジェクトは、今やヨーロッパ全域に広がりを見せている。見本市ではシーメンス・ボッシュといったドイツ大手企業を始め、多くのグローバル企業が最新技術を披露した。

ロボット等の生産技術に注目が集まるインダストリー4.0だが、見本市では構想実現に向けた次のハードルも浮き彫りになった。参加したヨーロッパ企業トップの多くが、新たなモノ作り手法に合わせた企業変革の必要性を強調した。「インダストリー4.0の実現には、技術導入と企業の事業改革をセットで考える必要がある」と述べたのが、ドイツのソフト大手『SAP』のCTO(最高技術責任者)であるバーンド・ロイケ氏。「現状は技術面にスポットライトが当たり過ぎており、企業の改革が遅れている」と指摘した。必要な改革は2つある。1つは、製造業からサービス業へと事業構造を転換させることだ。製品から生産設備まで、あらゆるモノがネットワークに繋がると、従来のような“作って終わり”のビジネスから、販売後も継続的に収益を得る道が開けてくる。例えば、フランスのタイヤ大手『ミシュラン』は、タイヤにセンサーを組み込んだリースサービスを運送会社向けに開始した。単にタイヤを販売するのではなく、実際の走行距離に基づいてリース料金を課すビジネスで収益を安定化させる。競合する『ゼネラルエレクトリック(GE)』等のアメリカ勢も、製造業のサービス化を進めている。その中で、ドイツ等のヨーロッパ勢は「豊富にある中小製造業を繋いでサービス化し、(サプライチェーン全体の)総合力で対抗する」(シーメンスカスタマーサービスのピーター・ウェケサー氏)考えだ。




もう1つの改革は、“オープン化”への意識転換である。SAPのニルス・ハーツバーグ氏は「ネットワーク化された世界では、企業間競争の考え方が根本的に変わる」と言う。アメリカのグーグルやアップルが競合関係にありながら、双方ともインターネットというオープンな共通基盤でサービスを展開しているのは、繋がることが両社にメリットを齎しているからだ。自社で技術や資産を抱え込まず、先ずオープンな基盤の上でビジネスを展開し、その上で“競争と協調”を両立させている。SAPは2015年3月、GEやIBMらアメリカ勢で構成する『インダストリアルインターネットコンソーシアム』に参加した。同団体は、謂わばアメリカ版インダストリー4.0推進組織。ドイツ勢にとっては規格作りで競合関係にある。「基盤の仕様統一では協力するが、実際のサービスでは競争する」とSAPのハーツバーグ氏は両立に自信を見せる。無論、これらの改革は簡単ではない。スイスの重工業大手『ABB』のCEO(最高経営責任者)であるウルリッヒ・シュピースホーファー氏は、「既存事業がある以上、一気にサービス化するのは難しい」と漏らす。それでも、日本はもっと危機感を持つ必要がある。政府はドイツの方針に倣って工業のデジタル化に動き出したが、企業間の壁は厚く、取り組みは緒に就いたばかり。試行錯誤するヨーロッパ勢を外から眺めているだけでは、取り残されるだろう。


キャプチャ  2015年4月27日号掲載


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