【大阪都構想住民投票を前に】(06) 私が『橋下維新』を離れた理由――パワハラ・マタハラなら被害者の私が我慢すればよかった、けれども『大阪都構想』は大阪市民全てが被害者になる…黙っている訳にはいかない

3月13日、大阪市会(市議会)で行われた大阪都構想に向けての『特別区設置協定書』の採決で、私は起立せずに反対の意思を表明しました。協定書の中味が、4年前の選挙で『大阪維新の会』が訴えてきた都構想とまるで違っていたからです。これは都構想とは呼んではいけないものだと思っています。元々、維新が言っていた『One大阪』は、周辺10市を合わせて特別区を作り、そこに財源と権限を委譲するというものでした。その特別区は30万人程度の規模で、区長は公選で選び、“ニアイズべター”を実現する。その構想と理念には今でも賛同しています。けれども今の協定書は、大阪市が5つに分割されるだけのかけ離れたものになっている。大阪市を5区にする中には70万人近い人口の区ができるし、そこへ権限や財源の移譲も無い。また、『一部事務組合』という行政組織ができて、各区を跨って事務作業をすることにもなっている。大阪市を5つに分割するだけで、大阪が東京に匹敵する日本の2大都市になる筈がありません。ちょっと協定書を読んだ人であれば、破綻した案だと思う筈です。あまりに抽速なのです。この協定書は、短期間の突貫工事で作ったものです。それは特別区設置協議会の開催頻度を見てみると、よくわかる。昨年1月までは月に1~2回だったのが、そこから5ヵ月間開かれず、野党会派を排除して維新だけでやり始めた7月に4回立て続けにやって、7月3日に決定している。しかも、そこでは維新の府議会議員が主導し、市会議員の声はあまり届いていないのではないかと思います。だから、細かなところまでは決っていない。「こういう場合はどうなるの?」と市民から聞かれても答えられないのです。

例えば、私は市会の『教育子ども委員会』に属し、子育ての問題をやってきましたが、保育所や幼稚園に越境して入る場合にどうなるか? 今は大阪市から他市に行く場合、ルールがあります。でも特別区には無い。区長同士の話し合いで決まることになっている。つまり、何も決まっていない。小さな話かもしれません。でも、子供を持つ親が働けるか働けなくなるかは、保育園に入れるかどうかに懸かっています。だから重要な問題なのです。決まっていないということは、白紙委任するということです。協定書は区割り以外はほぼ白紙委任――そんなリスキーなことができる筈がありません。維新がタウンミーティングで説明していることも、協定書に記載されていない理想論や誇大表現が多く、嘗ての大阪都構想や協定書の中身と随分違います。今も“二重行政”と言っていますが、一体いつの時代のことなのか。ワールドトレードセンタービルとかりんくうゲー タワービル等、負の遺産が今もあるから二重行政もあるように見えます。でも、あれはバブル期の話。当時は府・市にそれを気にしないだけの財政力があった訳で、今とは事情が違う。これから大阪府立カジノと大阪市立カジノができるなんてことはあり得ない。“二元行政”はある。でも、“二重行政”なんてもう無いんです。逆に、一部事務組合ができれば、府と区と組合で“三重行政”になる可能性がある。




また、“現役世代への重点投資”と言っていますが、今度から保育園料は一部で値上がりする。しかも中々予算が決まらなかったので、いくらになるかわからず、子育て家庭をやきもきさせた。そこに何の反省も謝罪もありません。私が選出されている中央区について言えば、何のメリットもありません。寧ろ、リスクとデメリットばかりです。中央区は西区・天王寺区・浪速区・西成区と一緒になって新しい中央特別区に入ることになっています。そこには、区政の課題が真逆の区もあります。中央区は、大阪市の人口268万のうち9万人くらいの小さな区です。でも、市の税収の4分の1を担っている。勿論、それは事業所が収める法人税収入があるからです。現在は高層マンションが次々建ち、子育て世代が増えていて、人口増加率も増加数も大阪一です。だから、子供が減って小学校を統廃合している中で、校舎が足りないと増改築の計画を進めている。そこで、私は育働隣接の街を作ろうとしてきたんですが、それが新しい区になれば間違い無くブレーキがかかる。合区してしまえば、人口が少ない中央区の人たちは不利です。自分の区の課題を第一に考え、税金を使ってくれる区長を得るのが難しくなる。「貧困や格差問題の是正が課題の区があり、それを掲げた区長が誕生したらどうなってしまうの?」というのが中央区民の声です。中央区の為には反対するのが当然です。

実は、私は昨年12月24日に維新に対して離党届を出していました。同時に、統一地方選挙での公認辞退届と、それに出馬しないという誓約書も提出しています。それが受理されたかどうかは今もわかりません。2月14日に松井一郎幹事長が第4次公認の記者会見をした際に、公認辞退が受理されていることはわかった。でも、離党届については不明なままです。離党届には、「パワーハラスメントとマタニティハラスメントが許容できる範囲を超えた為」と記しました。維新の自浄作用を期待して、私としては身を切る覚悟での行動でした。維新がここで第三者機関を作ったり、内部調査をしてくれて組織を正常化するのなら、私はまだここには未来があるんじゃないかと思った筈です。でも、結局は聞き取りどころか何の連絡も無いまま、現在まで来てしまった。私は、大阪市会で現役の議員として初めて出産しました。2011年4月の選挙で当選し、8月に妊娠がわかって、翌2012年4月に産んだ。その間、産前4週・産後6週の休みを取っています。叩かれるのは覚悟していました。予想外だったのは、その殆どが維新内部からだったことです。「給料泥棒」とか「区民に謝れ」とか、それはもう次々罵倒された。でも、私はこれまで「維新から」とは言ってきませんでした。私なりに維新に対し、誠意を尽くしてきたんです。

辛かったのは、妊娠中に街宣車に上らされたことです。安定期に入るか入らないかの5ヵ月目くらいの時期に、大阪府知事・大阪市長のダブル選挙があった。その時、もうお腹は大きかったんですが、それでも梯子を上って車の上に立って何か話すよう強いられた。「怖いので」と言うと、「大丈夫、下で支えているから」と。そういう問題じゃない。私が足の骨を折るくらいならいいのですが、万一のことがあったら子供の命に係るんですから。産後は6週休むことを伝えてあるのに、5週目に入るとある女性議員から「そろそろどうなの?」と電話が来る。「おめでとう」も無ければ、体を気遣う様子も無い。新しい命の誕生を祝う余裕が無いんです。私は「子供のせいで仕事をしなくなった」と言われるのが嫌だったので、市会での質疑等は力を入れてきました。かなり数を熟してきたと思います。妊娠中に幟を立てて商店街を練り歩く“桃太郎”だってやったし、年末の衆院選では夜中の3時・4時まで事務作業をしている。でも、「子育てしている議員は仕事ができない」という先入観があるのか、「全然仕事をしていない」だの「夜の会議に出られなければ、党に対するロイヤリティが無い」だの、様々に言われてきたんです。「子育て議員がダメなら、兼業議員はどうなの?」と思いますけどね。結局、「維新は人の気持ちがわからない組織なんじゃないか?」「血の通わない政治を進めていくところじゃないか?」と思うに至ったんです。

抑々、維新は組織の体を成していません。維新では「府会議員も市会議員も優劣が無い」と言うのですが、市議は“2軍”と呼ばれていました。府議が1軍、堺市議が3軍です。府議団には「維新はここから始まった」という自負がある。でも市議団としては、「住民投票は大阪市が主戦場で、橋下さんもこっちにいる」と。そんな「どっちが偉い?」みたいな話ばっかりやっている。期数上位の議員は後輩を育てない。「若い人は口を挟まず、黙って言われたことをやっていろ」と言わんばかりで、駒として使うことばかり考えている。女だったり、若いということはネガティブポイントです。ただ、若い人たちも1年目・2年目と、どんどん“お偉く”横柄になっていく。どうも、それは『維新』という組織の体質らしい。維新の中では、橋下市長を“社長”と呼びます。色んな議案の話をしていても、「社長がやりたい言うてるから」「社長がこうや言うてるから」と、そればっかり。「それはおかしい、違います」と言ってもスルーされてしまう。結局、維新の議員は“起立要員”でしかないんです。議決に賛成して起立だけすればいい人なんです。2年ほど前のことでしたか、維新がタウンミーティングに使うパネルを作り始めました。まだパワーポイントのデータの段階だったかもしれませんが、橋下代表が見て「あのグラフは詐欺でしょう、嘘ではないけれど」と言った。この時、「この人は政治家ではなくて“社会扇動家”なんだな」と思った。政治家だったら国民・府民・市民に本当のことを伝えて、「貴方はどう思いますか?」と問うべきでしよう。私はそれが民主主義だと思っている。グラフはそのまま使われています。その頃から、「この組織は自分とあまりにかけ離れているな」と思い始めた。

その後、5区案が決って各区ごと5チームに分かれ、その区に属する議員たちでマニフェストを作ったことがありました。あれも酷い代物で、大して調べもせずに「こうだったらいいね」と喫茶店で話している程度の与太話で構成されている。他の区がどのレべルでやっているのか知りたくて見せてもらおうとすると、それがダメなんです。「パクられたら困る」と言う。パクる為じゃないんですが、いいものはお互い共有すればいいと思うんですけどね。そして維新の最大の問題は、誰も責任を取らないことです。個々人には全部「自己責任」と言っておいて、幹部は責任を取らない。維新は“自己責任”という名の無責任です。「大阪市議選で過半数を立てる」と言ってできなかったのも、維新塾の名簿が流出したのも、誰も責任を取らない。上西小百合衆議院議員の件でも、橋下市長が「僕の責任」と言いましたが、どう責任を取ったのか? 若し都構想が実現して何か不都合が起きたら、橋下市長は必ず言う筈です。「通した市民皆さんの責任です」と。今も維新の人気が衰えないのは、不景気だからでしょう。「大阪都構想で不景気が何とかなるんじゃないの?」「解消するんじゃないの?」と思っている。溺れる者が藁でも掴みたいと思っていたら、そこに維新という藁があった。タイミングが良かった。でも、実際にはそれが当たりか外れかはわからない。しかも白紙委任が多過ぎるし、こうした組織に白紙委任するのは危険すぎる。パワハラ・マタハラなら被害者の私が我慢していればよかった。でも、大阪都構想は市民全員が被害者になる可能性がある。だから、私は賛成する訳にはいかなかったのです。


村上満由(むらかみ・まゆ) 大阪市会議員(元大阪維新の会)。1984年、大阪府生まれ。同志社大学文学部卒。外資系コンサルティング会社を経て、2011年に女性最年少の26歳で大阪市会議員に当選。大阪市会初となる任期中の出産を経験した。


キャプチャ  2015年5月号掲載


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テーマ : 橋下徹
ジャンル : 政治・経済

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