【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(14) 世界の揉め事に必ず顔を出し、更に引っ掻き回す“紛争屋”――プーチン式“喧嘩の仕掛け方”とは?

ロシアのプーチン大統領は、“喧嘩のルール”が根本から違う――。イランの核開発問題解決を目指す国際協議は、4月上旬に枠組み合意が行われ、アメリカのオバマ大統領が目指す“歴史的な一歩”を踏み出したように見えました。しかしその直後、プーチンは早くも次の一手に出た。イランに対し、高性能地対空ミサイルシステム『S300』の禁輸措置解除を決定したんです。ロシアは核開発を制限する枠組みに同意しておきながら、“二枚舌”で直ぐにイランに武器を売る。仮に今後、イランが地下で核開発を進めても、アメリカやイスラエルはおいそれと空爆できない――。表面的な解説としてはこんなところでしょう。実際、イスラエルは報復措置として、ロシアと紛争中のグルジアに武器を売る可能性をちらつかせています。

但し、この“ロシアvsイスラエル”は額面通りに受け取らないほうがいい。実は、ロシアはイスラエルに対して一定の影響力を行使できる立場にいるからです。1990年前後以降、イスラエルは崩壊した旧ソ連から大量の移民を受け入れてきた。そして1999年、旧ソ連(現在のモルドバ)出身のアヴィグドール・リーベルマンは、パレスチナやアラブ系イスラエル人への攻撃的な姿勢を鮮明に打ち出す極右政党『イスラエル我が家』を結成し、ロシア系移民票を取り込んで政治勢力を拡大。現在は連立政権に参加し、党首として外務大臣を務めています。このリーベルマンはロシアとのパイプ役になっていて、プーチンがイスラエルを訪問する際には必ず出迎えるような存在。恐らく、イランへのミサイル輸出・グルジアへの武器輸出に関しても、裏では話がついているでしょう。




抑々、現在のイスラエルの政権は“イランの脅威に立ち向かう姿勢”が支持の源泉で、本音では「揉め事が続いてほしい」。対イラン宥和政策を採るオバマ政権とは合いません。ロシアがイランへ武器を提供してくれるおかげで、イスラエルは右派のアメリカ共和党と一緒に「オバマ外交は失敗だ」と騒げる――。たった一手で、プーチンはここまで状況を複雑化させた訳です。他にもウクライナ・レバノン・シリア等、揉め事のあるところには常にプーチンの影がある。彼の力の源泉は天然ガスと石油、そして戦争。状況が拗れることを望む“紛争屋”です。進歩的弁護士で「皆で繁栄しよう」と言う哲学者のオバマと、旧ソ連の諜報機関『KGB』の将校だったプーチン。2人の“喧嘩のルール”は全く違う。イラン核協議を巡る駆け引きの第1ラウンドは、問題解決の為に奔走したオバマが結局割を食う――という構図になりかけています。

プーチンの行動原理について、イギリスのBBCが面白い分析をしていました。ベルリンの壁が崩壊した時、彼はKGBの将校として東ドイツにいて、群衆が一夜にして巨大化する恐怖を目の当たりにした。だから、ロシアでは内政面で超管理・超強権を徹底し、群衆がどうあっても反旗を翻せないエセ民主主義の独裁国家を作り上げた――というのです。僕なりに補足をすれば、プーチンは内政的には“崩れない東ドイツ”、外交的には“ソ連復活”を目指していると思う。今後も“喧嘩上等”な彼の動向は、国際社会を掻き回し続けるでしょう。


Morley Robertson 1963年生まれ、ニューヨーク出身。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、BSスカパー!『NEWSザップ!』、ニコニコ生放送『モーリー・ロバートソンチャンネル』、Block.FM『Morley Robertson Show』等のレギュラーに加え、4月からNHK総合テレビの新番組『所さん!大変ですよ』(毎週木曜日22時55分-23時20分)にも準レギュラー出演。


キャプチャ  2015年5月18日号掲載


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テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

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