【私のルールブック】(03) 妥協はするが、正論は言い続ける

子供の頃、よく母親に「お前は本当に扱い辛いね」と言われた。思い当たるところは幾つかあった。頑固・理屈っぽい・正論に固執する……等々。そんな私も今年で48歳。正直、根っこの部分は何も変わっていない。しかし、流石に加減はわかってきたつもりである。特に、正論の押し通し方ですかね。仕事場において意見を言う際、私は8割方の共感を得る自信が無ければ口に出さないようにしている。じゃないと、ただの我が儘になっちゃうから。が、仮令自信があったとしても、あっちもこっちも口を挟んでいたんでは、それはそれで疎まれかねない。なので我慢することもある。一応のバランスは取っているつもりなのである。しかし、それでも“扱い辛い”というイメージは今も尚残っているようで……。「何だかな~」と思う時も屡々。

が、周りを見渡してみると、私以上に扱い辛そうな人は存在しているのだ。でも、よくよく観察してみると、確かに扱い辛い雰囲気を全体から臭わせてはいるものの、話を聞いてみれば筋は筋は通っている人も多いし、筋が通っているということは間違ったことを言っている訳ではないので、私は至極納得するのである。とはいえ、昨今は特にそういった風潮にあるが、「正論ばかりで仕事にならないじゃん」ってね。「確かに、貴方の言っていることは正しいのかもしれませんけど、筋を通してばかりじゃ進むモノも前に進まないんですよ」。はい、仰る通りです。恐らく、そこでの加減なんでしょうね。パーセンテージとでも言いましょうか。正論5に対し、妥協と我慢が5…なら、まだいいほうか? 私はどうだろう。8対2で正論のような気がするが……。




昔、こんな俳優さんがいた。その方は現場で台本を開かない。セリフは現場に入る前に覚えておくものだから。私もそういう環境の下で育てられた。しかし、ある時から緩くなったと言いますか、テストの時は普通に台本を持ちながらが主流になった頃のこと。その先輩俳優さんが人気の若手の役者に向かって、「台本を置きなさい」と言ったのだ。勿論、現場はピリッとした空気になる。若手の役者も、仕方無く台本から手を離した格好だ。当然、テストではしどろもどろ。だって、ちゃんと覚えていないんだから。それでも、何とか本番には間に合わせ、NGを出さずに済んだ。で、その先輩さん。最後にフォローの一言でも入れるのかと思いきや、「次のシーンのセリフは入っているのか?」。慌てて台本を開き、短時間でセリフを頭に入れ始める若手役者。そんなやり取りを見ていて、胸の空く思いがした私である。正論は、時に現場の空気を悪くする。正論は、時に作業を止めてしまう恐れがある。だが、正論を諦めてしまったり、正論から逃げてしまい妥協に慣れてしまうことのほうが、私はよっぽど怖い。だから、私は自分なりの加減で正論を吐くようにしている。が、加減というものに正解は無く、加減してしまっている自分に嫌気が差す時もあったりしてね。難しいですな。でも、難しくとも、そして“正論”と言いながら間違えちゃう時もあるけど、それでも言い続けるのが爺ぃの仕事のような気がするんですよね。


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2015年5月28日号掲載


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テーマ : 俳優・男優
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