【新聞不信】 摘み食いは“誤報”と同じだ

新聞が主張をぶつけ合うことは大歓迎だが、自説を前提に事実を歪めたり、ボツにしたりするのでは本末転倒だ。気になった1つ目は、安倍晋三首相が8月に発表する『戦後70年談話』を念頭に、今月4日付でハーバード大学のエズラ・ボーゲル名誉教授等欧米の日本研究者187人が、連名で首相に送付した声明の報道振りである。産経を除く各紙(毎日は7日付夕刊、他は8日付朝刊)は、見出しでキーワードの「偏見無い清算」「慰安婦問題 直視を」「安倍首相に声明」を使い、本文でも「可能な限り完全で、偏見の無い清算をしなければならない」「(従軍慰安婦問題を)否定したり、小さなものとして無視したりすることは受け入れられない」等と、彼らの本意を正確に伝えている。問題は産経だ。8日付朝刊1面の扱いだが、見出しは『慰安婦/“20万人以上”明示せず/欧米研究者ら声明/中韓にも民族主義』というもので、声明の趣旨は勿論、狙いも伝わらない。本文にはキーワードは入っているものの、見出しに取った記述が中心で、意図的に歪めた報道と思わざるを得ない。“誤報”と揚げ足を取られぬよう工夫はしているが、自社の主張に都合の良い枝葉末節を摘み食いしている。産経は福島原発事故の吉田調書をスクープした朝日の誤報追及に熱心だが、その資格は無いという他ない。

もう1つは、ドイツのメルケル首相の映像メッセージの扱いだ。日独は歴史認識問題で比較されるが、日米首脳会談と安倍首相のアメリカ議会演説の直後の2日、ナチス降伏から70周年を目前に控えたメルケル首相は、国民に「歴史に終止符は無い」等と呼び掛けた。伝えたのは読売・朝日・毎日・東京。これを無視した産経と日経はジャーナリズム失格だ。元々“色眼鏡”で見られがちな産経の事、目くじらを立てるのは大人気無いかもしれぬ。だが今や、2紙併読の読者など殆どいない現実を考えれば見過ごせない。衆議院で憲法改正を巡る議論が始まり、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案の国会審議も本格化する。“歴史認識”同様に、各紙の主張が対立するテーマだ。編集幹部には自らの使命を肝に銘じ、「恣意的な紙面を作るな」と釘を刺しておきたい。 (諦)


キャプチャ  2015年5月21日号掲載


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テーマ : 報道・マスコミ
ジャンル : 政治・経済

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