FC2ブログ

【ふるさと再訪】福島・いわき(04) 林業再生にかける箸――七転八起、光明つかむ

「七転び八起きの人生」。いわき市勿来の川部町。鮎釣りの名所でもある四時川に面した小さな事務所で、神奈川県横須賀市から4年前にやってきた磐城高箸社長・高橋正行さん(40)の話を聞き、こんな言葉を思い浮かべた。いわきとの縁は、祖父が福島県に大きな山林を保有する勿来本社の造林会社の経営に携わったこと。勿来は幼い頃から海・山・川に親しんだ土地。しかし、父の転勤で小学校4年から中学3年まで仙台で過ごした以外は、神奈川県で暮らした。「まさかここに来ようとは」。司法試験の勉強に打ち込み、林業に関わる気はなかった。しかし、旧制度下での最後の司法試験が「過去最高の出来だった」のに、結果は不合格。「ショックでした。もう死ぬしかないかな、と」。悩み抜いた末、「首都圏で週5日働き、週末は木こりとして働こう」と2010年春に父が監査役も務める造林会社の手伝いを始めた。が、林業の衰退ぶりに愕然とする。




1㎥当たりの住建用の杉の間伐材の価格は1980年の約3万5000円が8000円程度まで下落し、山は荒れ放題。林業再生には間伐材の付加価値を高めるしかない。模索の最中、見つけたのが森林ジャーナリスト・田中淳夫氏の本「割り箸はもったいない?」。氏の講演を聴き、メールもやりとりした。日本発祥の割り箸も、流通品はほぼ中国産。杉の割り箸は高級品で建材の5~10倍で売れる。栃木県・日光や奈良県・吉野の高級箸の製造者にも教えを請うた。造林会社で長年働いた鳥居塚実さん(84)を相談役に、会社を設立したのが2010年8月。11月頃から試験操業。近隣の福祉作業所に検品を委託し、本格的な出荷体制に入る矢先に東日本大震災が起きた。「帯ノコを引いている時に、壁と鉄の筋交いがガンガン鳴り、慌ててスイッチを切りました。危ないところでした」。横須賀の実家へ戻ると、両親も親類も「会社をたため」と猛反対した。原発事故を懸念したのだ。

いわきに戻ると厳しい現実が待っていた。検品を終えた裸箸を卸へ出荷する話が流れてしまったのだ。“風評被害”である。さらに4月11~12日、いわきが震源の大地震で工場が壊れ、「本気で廃業を考えました」。だが、窮地から光明が差してきた。製品検査で“安全”の認証を得る一方、箸をそのまま卸す体制を改め、デザイン性の高い箸袋を作って企業などに直販する戦略を考案。5月には同社のホームページが出会いを招いた。東京と福岡で活動するデザイナーらで組織する任意団体・『EAT EAST』だ。「何か手伝いたい」とおしゃれなパッケージを作成してくれた。7月には箸に『磐城杉』の焼き印を入れ、写楽の浮世絵を袋に用いた商品を共同開発し、県の観光みやげ品推薦品に選ばれた。林業再生と復興支援の思いを込めて商品化したのが、被災3県の杉を使った『希望のかけ箸』だ。3膳1セットを500円で売り、150円を義援金に充てる。2013年度のグッドデザイン賞などを受賞。豪華客船クルーズなど様々な需要が広がった。杉は日本の固有種。花粉症で迷惑がられるが、その杉が高橋さんを窮地から救った。「杉の学名は“日本の隠れた財産”だそうです」と高橋さんは笑う。 《編集委員・嶋沢裕志(59)》


キャプチャ  2014年10月25日付夕刊掲載


スポンサーサイト
Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR