【私のルールブック】(05) 自分のことは棚に上げ、子供には理想論を

子供を自分なりに大切にしたいのである。子供を大切にしたいから、“大切の仕方を覚えたい”のである。よく、「今時の子役と坂上さんの子役時代との違いは?」と訊かれるが、抑々その質問自体がナンセンスと感じている私。だって、「子供を育てるのは誰なのよ?」って話ですから。とはいえ、そんな質問にはこう答えるようにしています。「僕が子役の頃は、現場や監督が子役に時間を割いてくれました。大人は芝居ができて当たり前。でも、子役は未完成だから子役な訳で。ただ、今は制作費だ何だの都合もあって、子役に時間を割く余裕すら無いのが現実。よって、可能性のある子よりも今デキる子が重宝される時代なんじゃないでしょうか」と……。もっとぶっちゃけて言うと、業種問わずシビアな時代に成り過ぎちゃったから、色々な意味で子供を育む時間や意識を持てなくなってしまった。その結果、手間がかからない、現場に大人に都合の良い子役を起用せざるを得なくなってしまったんじゃないかと思う訳です。

でも、それでいい訳がないですよね。大人の余裕の無さを、子供の器用さで埋めていい訳がない。繰り返しになりますが、子役って未完成だから子役なんです。というか、完成された子供なんていちゃダメでしょ? 未成熟だからこそ、可愛かったり憎たらしかったりする訳で、大人に迷惑をかけるのが子供の仕事なんですから。僕が子役の頃は、芝居よりも礼儀が先でした。挨拶がキチンとできないと芝居をさせてもらえなかった。でも、子供って凄いから、挨拶の仕方も芝居のコツも物凄い早さで覚えていく。謂わば、“慣れる”のが早い。でも、本当に怖いのはこの“慣れ過ぎ”だったりする訳です。なぜならば、“慣れ過ぎ”は“子供らしさ”を奪ってしまうから。では、子供らしさが薄れてしまったら? 子役の魅力、無いですよね。ちっちゃいおっさんおばさんでしかないんだから。褒めて育てるのも結構。でも、考えてみてください。抑々、子供“如き”にそんなに褒めるとこってあります? ある訳がない。だからといって、「安易に鞭を使え」って言っている訳ではないんです。「鞭を使う前に、親として大人として教える・伝える・覚えさせることがあるだろ」って。「それらを子供たちが、拙いながらも時間をかけて身に付けた時に初めて褒めても、全然遅くないんじゃないかな」ってね。




中々、余裕が持てない時代です。究極の合理化が求められる昨今です。でも、そんな大人の事情を子供に助けられて時代に即して行くのではなく、どんな時代になろうとも自力で時代に追い縋り、苦心して作った細やかな余りの時間を我が子や子供たちに充てる。何か、「そりゃあ理想論だろ」ってお叱りを受けそうですが……。でも、私は揶揄されようが、子供たちに対しては理想論を貫きたいと、子供もいないのに生意気ながら思う訳です。だって、立派な中高年だから。散々遊んできたし、我が儘言ってきたし。それでも、色々な方に教えて頂き、育ててもらった訳だし……。そんな私たちが、いい歳になって子供たちに無駄に気を遣って手抜きをしていい訳がない。酸いも甘いも、自分のことを棚に上げて伝えていかないとね。


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2015年6月11日号掲載


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