【カオスを飲み干せ!挑発的ニッポン革命計画】(19) LSDとエコロジー…“イルカ愛”のルーツは1960年代にあった

日本のイルカ漁が国際的に批判を浴びています。なぜ欧米人はイルカやクジラ(鯨類)の保革にあれほど生理的嫌悪感を抱くのか、多くの日本人は理解できないかもしれません。そこには幾つもの歴史的背景がありますが、特に「イルカという動物は特別に知能が高い。故に殺すのは残酷だ」というような思想の源流には、ジョン・カニンガム・リリーというアメリカ人の存在があります。リリーは1950年代半ばからイルカを研究していた脳科学者で、「イルカは知能が高く、人間とも会話が可能だ」と主張。ある時期から、イルカとのコミュニケーション手段として、合成幻覚剤の『LSD』を使用するようになります。自らLSDを摂取し、ぶっ飛んだ状態(彼曰く「変性意識状態」)でイルカと話す――。現代なら“トンデモ”の一言で片付けられるかもしれませんが、当時の彼の言説は若年層を中心にかなり浸透していきました。

もう少し、時代背景を説明します。1950~1960年代のアメリカでは、ソ連に対抗する為のマインドコントロール技術を求め、リリーに限らず様々な学術的研究にLSDが提供された。ここから、LSDが社会に広がっていきます。リリーとも共鳴していたハーバード大学の心理学者であるティモシー・リアリーは、1960年代にLSDを若者に広め、“サイケデリック文化”の中心となりました。当時は、若者が反ベトナム戦争・反資本主義・反人種差別・性の解放といった社会運動に目覚めつつあった時代。リアリーは彼らをLSDでトリップさせ、「turn in(スイッチを入れ), tune in(宇宙と波長を合わせ), drop out(社会から離脱せよ)」と煽った。リアリーやリリー等を「無責任だ」とする批判がある一方、1967年の夏(サマー・オブ・ラブ)にピークを迎えたこのムーブメントがリベラルの風を吹き込み、アメリカ社会を一歩前に進めたという側面も否定できません。この時代、進歩派の白人は西洋文明を否定してオリエンタリズムに走り、1970~1980年代にはニューエイジ(スピリチュアル)が大きなビジネスとなります。そんな中で、「イルカは平和的で知能が高い」というリリーの言説も支持されて1つの思想となり、イルカはニューエイジのマスコット的な地位を確立。日本でも有名な画家のクリスチャン・ラッセンのブームも、その一環と見るべきでしょう。エコロジー意識・絶滅危惧種への危機感が加速する中で、科学もカルチャーもトンデモも巻き込み、鯨類愛は有機的に強くなっていったのだと思います。




イルカの追い込み漁を行っている和歌山県の公式ホームページには英文で、『イルカ漁等に対する和歌山県の見解』が掲載されています。しかし、英語はヘタだし、主張も内輪向け。これで欧米人を説得することは不可能です。同じ捕鯨国でも、ノルウェーは透明性の高い広報活動とエコロジー先進国としてのアピールで、批判を躱しています。一方、日本は鯨類以外にも資源保全を考えない漁業で批判されてきた。欧米人のイルカ漁批判を「傲慢な白人に依る東洋蔑視だ」と幾ら叫んでも、現実は変わりません。先ずは相手の思想的背景を知り、自分たちの戦略的な稚拙さを直視するべきでしょう。


Morley Robertson 1963年、ニューヨーク生まれ。父はアメリカ人、母は日本人。東京大学理科一類に日本語受験で現役合格するも3ヵ月で中退し、ハーバード大学で電子音楽を学ぶ。卒業後はミュージシャン・国際ジャーナリスト・ラジオDJとして活動。現在、『NEWSザップ!』(BSスカパー!)・『モーリー・ロバートソンチャンネル』(ニコニコ生放送)・『Morley Robertson Show』(Block.FM)・『所さん!大変ですよ』(NHK総合テレビ)等に出演中。テレビ東京初の朝の本格情報番組『チャージ730!』にも時事解説で不定期出演中。


キャプチャ  2015年6月22日号掲載


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テーマ : 捕鯨・反捕鯨問題
ジャンル : 政治・経済

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