【働きかたNext】第6部・派遣の論点(上) 線引きの余波、中小に――人手不足なのに雇い止めも

派遣の働き方はどうあるべきか? 労働者派遣法の改正を巡る国会の審議はヤマ場を迎えつつあるが、政治の対立で揺れ動くルールに職場では戸惑いも広がる。主な論点を探った。

「成長する会社で新しいことを吸収したい」。戸口光さん(32)は、5月末からベンチャー企業の『クラウドワークス』(東京都)で派遣で働き始めた。主な仕事は採用の支援。学生にメールを送り、採用会場を案内する。同社は、昨年秋から派遣を本格的に受け入れ始めた。正社員を半年で3倍の約90人に増やしたが、業務拡大に対応しきれない為だ。佐々木翔平取締役(30)は、「授業で休むリスクがある学生アルバイトでは限界がある」と説明する。厚生労働省に依ると、全国の派遣労働者は2014年6月時点で126万人。2008年6月の202万人からリーマンショックを機に減り続けてきたが、人手不足に直面し反転の兆しが出ている。『日本人材派遣協会』(東京都)が4半期毎に纏める実稼働者数は、昨年10~12月以降は前年同期比5%超の増加が続く。人手不足を派遣でしのぐ中小・ベンチャー企業は、派遣法の国会審議の行方に戦々恐々としている。派遣業務の“線引き”がどうなるかによって、人繰りに影響が出かねないからだ。「建築物清掃業務は地下駐車場の清掃は良いが、公園の駐車場はダメ」「受付・案内業務はショッピングモール受付で風船を配るのはOKだが、抽選会等イベントではダメ」。今の派遣法は、期間の制限無く派遣を活用できる仕事を“専門26業務”として指定している。業務の範囲が曖昧なので、民主党政権下での行政指導を経て、2010年に線引きを示す『疑義応答集』ができた。多くの大企業はマニュアルで徹底したり、アルバイトや契約社員に切り替えたりしている。だが、26業務の派遣はお茶汲みをしただけで違法になるだけに、人材を多重活用する中小では対応が不十分なのが実態だ。

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今の派遣法のままだと、10月以降に違法状態が発覚すると、派遣先が派遣スタッフを直接雇用する契約が自動的に成立する。民主党政権下の2012年の改正で成立し、施行を待っていたルールが発動される為だ。中小の懸念はここにある。26業務の線引きと直接雇用ルールを止める改正案が廃案になると、直接雇用を避けたい中小等は派遣の雇い止めに動く懸念がある。派遣大手『テンプホールディングス』の水田正道社長は、「廃案なら雇い止めはある程度起きる」と予想する。アプリ開発の『ギークス』(東京都)は4月から派遣を受け入れ始めたが、26業務での活用は見送った。「お茶汲みまで管理できない」と中途採用担当の木内泰久さん(30)は話す。政治で揺れ動く線引きが、人手不足の職場を苦しめている。


≡日本経済新聞 2015年6月17日付掲載≡


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テーマ : 労働問題
ジャンル : 政治・経済

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