【日本型雇用システム大解剖】第2部・ニッポンの賃金制度(04) 役割給とグローバル対応――電機業界に見る人事改革のうねり

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1990年代に日本企業に持ち込まれた成果主義は、10年もしない内にその限界を露呈した。代わりに注目を集めたのが役割主義・役割給だ。日本製造業の代表とも言える電機各社もそうだ。『三菱電機』は2004年、従来の『資格・職階(職能)制度』から、役割に対する成果に応じて処遇する『役割・職務価値制度』に転換した。新たな制度の導入に当たっては成果主義を取り入れつつも、成果一辺倒になることを避け、役割・職務価値の観点を重視した。30歳までは定期昇給を残したが、それ以上の年齢では廃止した。当時、人事部員として制度設計に携わった大隈信幸常務執行役取締役(人事部長)は、「人事評価をデジタルな数字だけで見ることへの違和感があった。仕事は個人でなくチームで成し遂げるものだが、その風土が毀損されるのではないかと考えた」と振り返る。2004年の制度改正において、賃金は等級別の役割給に一本化、役割とその成果に依って決まるようにした。31歳以上の賃金カーブは、年齢・勤続年数に関係無く、役割・成果に依る格差を従来より広げた。管理職・一般社員の等級は其々4つで、“役割の価値”を序列化して決める。役割の価値は、“職務の価値×組織への貢献度”と定義した。職務の価値は、①職務の難易度②職務そのものの付加価値度(経営の重要性)の要素で決める。組織への貢献度は、①影響度②チャレンジ度③適時・適切性等の要素で決める。役割の価値は職務内容・役割期待の変化に伴って、毎年見直しを行っている。より付加価値の高い役割を果たして上位の等級になるケースや、逆に下がることは珍しくない。また、属人的な要素を残している為、同一のポスト(役割)であっても期待される役割が大きい人物が就くと、等級内の序列や等級が変化するという。1年に1回、上司と部下で“役割・成果レビュー面談”があり、目標設定と役割の確認をしている。大隈氏は、「面談を通じて課題の共有や成果のフィードバックが行われ、各人の成長に繋がっている」と話す。役割給は“年功的な賃金要素の低減”という側面があったが、“人材マネジメントツール”としての役割も果たしている。




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グローバルで人事を動かし、人事評価をするにはどうしたらよいのか? 電機業界で明快な答えを出したのが『日立製作所』だ。日立は昨年10月、本体の国内管理職約1万1000人を対象に、世界共通の物差しを使い、役割(職責)と成果の大きさに応じて賃金を支払うやり方に変更した。国際競争が厳しくなる中、先ずは管理職の役割と責任・処遇をはっきりさせる。それまでの賃金は、勤続年数や過去の実績に応じて決まる“資格給(職能給)”と、役職に応じた“職位加算給(職位給)”だった。新しい制度では年功的な要素が無くなり、従事する役割の重要度とその成果に依って支払う。日立の人事改革は、足かけ5年に及ぶ。海外を含め、グループで950社・32万人の従業員がいるだけに、人事リソースをグローバル化に対応させるのは簡単ではないが、その基盤はできつつある。“グローバル人材マネジメント”は2011年に始動。2012年度に、世界約25万人の人事情報をデータベース化した。2013年度には“グローバルグレード”として、世界のマネージャー(課長級)以上の5万ポストについて職務や職責の大きさで格付けをし、7つの等級(X・A・B・C・D・E・F)に分けた。ポストは、その影響度・折衝に関する責任、求められる革新性、業務遂行の為の知識という4つの要素で評価し、その合計点で格付けする。人財統括本部の平岡真一担当本部長は、「幹部ポストの基準が統一されたことで、グローバルな人事異動が可能になる」と語る。例えば、本社のA部長職とB国現地法人の社長職が同じランクといったことがわかれば、そのポストに相応しい人材を計画的に配置できる。2014年度からは“グローバルパフォーマンスマネジメント”を導入し、組織の事業計画と個人目標を連動させ、その達成に依って個人の業績を評価している。2015年度中には9万人が対象となる見込みだ。昨年10月からの管理職層を対象にした制度は、グレードの仕組みとグローバルパフォーマンスマネジメントを組み合わせたものだ。人事面での物差しを共通化し、グループ全体を見える化したことで、グローバルな人事運用はし易くなった。だが、国際競争に負けない為の人材マネジメントは始まったばかりだ。

■外資はどうしているか?
外資系企業は職務が明確で、人事評価や報酬も年齢に関係無く成果次第――。そうしたイメージがあるかもしれないが、日本に進出している外資系は必ずしもそうではない。某ヨーロッパ系銀行の東京支店は、全ての業務が個人毎に明確になっている訳ではない。為替ディーリング部門は職務が明確で実力主義だが、部門に依っては属人的な理由で職務を分担している。ある日本人社員は、「日本企業との違いをあまり感じない」と話す。ヨーロッパ系製薬の日本法人の人事担当者に依ると、「全て本社と同じやり方をしている訳ではない」と言う。欧米だと、大学病院担当のMR(医薬情報担当者)はその職務(職責)の大きさから職務給も高くなる。ところが、日本法人では担当する病院が替わるといったことがよくあり、本社流を当て嵌めると給与ダウンになる。実際は、年齢や経験を加味して一定のレンジの中で調整をしている。但し、どの部門も成果が求められ、成果と報酬との連動性は日本企業より強い。『日本IBM』は、少なくとも1960年代から新卒一括採用をしている。日本では転職市場が未発達で、優秀な人材を確保するには新卒を採用したほうが効率的だった。外資系であっても、研究から製造・販売までフルラインの機能を日本拠点に持たせようとすると、日本型雇用システムを一部取り入れざるを得ない。

■代表的な18の職務におけるアジア年収データ全比較
グローバル展開を拡大させる中、日本企業は海外での高度人材の獲得に四苦八苦している。最大の要因は、競争力ある報酬や処遇の設定に慣れていないことだ。日本型雇用慣行は、職務の定めが無い雇用契約に依って配置転換を繰り返す為、職務毎でなく年功で賃金を設定し、処遇も配転に依る昇格で引き上げることが殆どだ。これに対し、海外では職務毎に市場価値に基づく企業横断的な賃金相場があり、ストックオプション等のインセンティブ型報酬の構成比も高い。そうした海外での賃金相場はどうなっているか? ここでは代表的な18職務について、アジア域内での年収水準を掲載した。興味深いことに、職務に依っては日本より中国や香港・シンガポールのほうが年収水準の高いことがある。具体的には、人事部長・製薬業界の営業部長・消費財等のマーケティング部長等が挙げられる。職務毎の年収水準のバラツキも、日本は相対的に小さめだ。他国のほうが、外部労働市場との関係の中でよりダイナミックな賃金設定を行っている。特に、アメリカ型に近いと言われる中国では労働集約型職務の賃金を抑える一方、製薬業界の研究開発部長等の高付加価値職務に非常に高い賃金を払っている。

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キャプチャ  2015年5月30日号掲載


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