【韓国の病・MERS騒動という悲劇】(中) 朴槿恵の訪米延期は大誤算――MERSの失策を取り戻すつもりの決断は、アメリカの無関心と日本の地位強化を招く

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韓米関係を再活性化させ、アメリカの対アジア戦略における韓国の重要性をアピールする――その為に、韓国の朴槿恵大統領はアメリカを訪問する予定だった。今回の訪米は、とりわけ大きな意味を持っていた。何しろ、日本の安倍晋三首相の訪米から2ヵ月経たないタイミングだ。安倍は8日間という長期日程を組み、アメリカのバラク・オバマ大統領との首脳会談は勿論、日本の首相として初めてアメリカ議会上下両院合同会議で演説も行った。ところが、韓国政府はアメリカへの影響力を取り戻す機会を捨てた。MERS(中東呼吸器症候群)感染拡大という国内危機への対応を理由に朴は訪米を延期したが、これは間違った決断だ。そのせいで、韓国政府の存在感は一段と後退しているように見える。朴曰く、訪米延期は必要に迫られた上での決断だ。MERS感染の広がりで、韓国では6月第2週末時点で14人が死亡し、感染者は138人になっている。但し、WHO(世界保健機関)に依れば、韓国でのMERS流行は既にピークを迎えたようだ。感染の広がる過程に学校は関係していない為、「休校中の学校を再開すべきだ」とも勧告している。それなのに、なぜ朴は最重要の同盟国への訪問を延期するという挙に出たのか?

最大の理由は、MERS問題に真剣に取り組む姿勢を打ち出したいから。初動対応がお粗末だったとあれば尚更だ。韓国政府の担当者等は、感染拡大から粗3週間が経った時点で漸く、感染者が確認された病院の名前を公表した。昨年4月のセウォル号転覆事故の際にも対応の拙さを露呈した朴政権は、再び国民の激しい批判に曝されている。長らく前から予定されていた訪米を犠牲にしてまでも、国民に真剣な態度を印象付けたい朴だが、その決断は功を奏していない。寧ろアメリカを訪問していれば、国内外に対して「きちんと危機管理できている」と発信することができただろう。延期決定は正反対のメッセージを送っている。アメリカ訪問は韓米の北朝鮮抑止戦略等、重大な安全保障問題に焦点を当てる機会にもなった筈だ。韓国はアメリカの牽制にも関わらず、中国が創設を主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を決めたが、この問題を巡る外交上の誤解を解くチャンスにもなったに違いない。




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アメリカ側は、表向きは朴の決断に理解を示し、韓国の国内政治に干渉しているとの印象を与えないよう努めている。「オバマ大統領は、双方にとって都合がいい時期に朴大統領とホワイトハウスでお会いできることを期待している」と、アメリカ国務省のジェフ・ラスク報道官は発言した。だが、この言葉の裏には朴の“ドタキャン”に対する失望と、首脳会談の再設定が可能かどうかわからないという意味合いが窺える。オバマの年内のスケジュールは予定がぎっしりで、任期最終年となる来年も同様だろう。首脳会談という大イベントの予定を組み直すのは簡単ではない。現実的に見れば、今回の訪米延期が招くのはアメリカの反発ではなく、無関心だろう。韓国の東アジア外交政策がここ数年、アメリカの注視に曝されている状況を考えると、韓国にとっては外交上の大きな損失だ。アメリカ政府のアジア関係者の間では、所謂“韓国疲れ”が強まっている。それが表面化したのが、ウェンディ・シャーマン国務次官が2月末に日中韓の歴史問題を巡って行った発言だ。シャーマンは、「どんな政治指導者にとっても、旧敵を中傷して安っぽい称賛を得るのは難しいことではない」と語り、暗に朴を批判した。アメリカから見れば、韓国は日本との協力を頑なに拒んでいる。そうした見方を変えたくても、朴がオバマとの首脳会談を延期したせいで、それも困難になっている。更に、韓国は歴史問題(とりわけ従軍慰安婦問題)に対する安倍政権の態度に関して、アメリカ政府に働きかける機会もふいにした。安倍が今夏に戦後70年談話の発表を控えるという重要なタイミングにも関わらず、だ。但し、アメリカ政府が慰安婦問題に敏感になっているとはいえ、朴がオバマと会談したところで、アメリカが慰安婦問題論議に加わるようになるかどうかは微妙だ。これまでの朴との会談では、日本との問題について“説教”されることに、オバマもアメリカ政権高官たちも苛立っていた。

「歴史問題に拘り過ぎれば、北東アジアでの目標(即ち、北朝鮮や中国の脅威に対する同盟国ネットワーク)の構築が遠ざかる」とオバマ政権は考えている。歴史問題を脇に置いても、訪米延期で朴はアメリカ政府が抱く韓国のイメージを改善させることができなくなった。それ以上に重要な意味を持つと言えるのが、朴の韓米同盟の管理能力に対する韓国の世論だ。安倍は訪米中に行ったアメリカ議会上下両院合同会議での演説で、日米の同盟関係をアジアの平和と安全の礎とする考えを述べた。多くの韓国人はこの考えに反発し、「不均衡な同盟構造の中で韓国がまたも疎外され、余計者扱いされた」と感じている。アメリカ政府内で日本の評価がアップしていることに対抗するには、外交的な計算が欠かせない。韓国・延世大学国際大学院の李正民院長は先日、オンライン誌『アサンフォーラム』でこう指摘した。「(安倍の訪米の主要な成果は)日本を、少なくともアジアにおけるアメリカの“頼れる相棒”として位置付けたことだ。それが韓国にとってどんな意味を持つかは、外交的にどう反応するかに依って変わる」。少なくとも、表向きには韓米同盟は揺るがない筈だ。だが、外交的な視点から言えば朴は大きな間違いをした。今の朴は、安倍の訪米で評判を上げた日本の勢いを削ぐことができない。韓米関係に燻る不満や怒りに対処することも。 (アメリカ戦略国際問題研究所太平洋フォーラム研究員 ジョナサン・バークシャー・ミラー)


キャプチャ  2015年6月23日号掲載


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