日活“太陽の季節”再び、アジア発ヒット映画続々――現地で共同製作…高品質・低コスト、製造業がヒントに

日活がアジアを舞台に復活劇を演じている。石原裕次郎出演の『太陽の季節』などで黄金期を築いたが、1993年に経営破綻した。日本を飛び出しアジアで新たな映画製作に挑む。目指すのは「アジアナンバーワンのメジャースタジオ」。佐藤直樹社長が描くシナリオのもと、新興国のパワーを追い風に完全復活を狙う。

11月21日に日本での公開を控えた中国映画『西遊記~はじまりのはじまり~』。『少林サッカー』で知られるチャウ・シンチー監督がメガホンを取った大型娯楽作品だ。日活と東宝東和が配給を手掛ける。両社が7月、共同で立ち上げたアジア映画レーベル『ゴールデンアジア』の第1作目だ。年末から来年にかけ、アジアのヒット映画を矢継ぎ早に公開する。ゴールデンアジアでは日活は配給に加え、作品の買い付けも担当する。2013年にインド映画『きっと、うまくいく』を国内で配給、興行収入1億7000万円と同国映画としては記録的ヒットとなるなど日活のアジア映画買い付けには一定の評価がある。しかし「映画はばくち」の言葉通り、ヒットはふたを開けるまで分からない。それでもリスクを取って買い付け、配給するのはその“先”を見据えた戦略だ。




「ゴールデンアジアで日本市場での成功体験を作り、国際共同製作に持ち込む。中国やインドのトップクリエーターと映画を作り、ハリウッドにも挑戦する」。佐藤社長が描く未来予想図は一見壮大だが、すでに共同製作の芽は出始めている。日本とインドネシアで2月に公開された両国合作映画『KILLERS/キラーズ』。日活が製作に入り、配給も手掛けた。北村一輝氏が主演、過激な暴力シーンが続くR-18指定(18歳未満禁止)映画ながら、インドネシアでは18万人が鑑賞、興収上位に食い込んだ。同様に韓国と共同製作した『ある優しき殺人者の記録』も9月に両国で公開、韓国側ではインターネット配信も展開するなど攻勢をかけた。今後も『男たちの挽歌』『レッドクリフ』の巨匠、ジョン・ウー監督と組み、日活黄金期の名作『野獣の青春』(1963年)のリメーク作品を共同製作予定だ。

2005年、角川映画から日活に転じた佐藤社長が参考にするのは、コスト削減と技術革新を追求する製造業のビジネスモデルだ。人件費が割安な新興国に生産拠点を移し、経済成長と共に地域の需要も開拓する。日本国内の人口増加が見込めず、映画の年間興収も2000億円を割り込む中、その視線は「日本の外へ、映画の外へ」向かう。今年9月、都内の大手映画会社に3人の男性が訪れた。「弊社のCG(コンピューターグラフィックス)を入れる前と後で、映像はこれだけ変わります」。タイから来日したCG関連会社の役員が熱心に映画会社プロデューサーに語りかける。日活は6月、筆頭株主の日本テレビ放送網、タイの映像製作大手カンタナ・グループ(バンコク)と組んでカンタナジャパン(東京・文京)を設立した。売り込むのは、カンタナ・グループが得意とするCGやアニメーション技術だ。「強みは高品質と低コスト」。カンタナジャパンの三浦剛社長はこう語る。カンタナ・グループはハリウッドのメジャースタジオからもCGやアニメーションを受託する製作部門を持つ。一方で労働コストは欧米、日本に比べ圧倒的に低い。カンタナジャパンは日本側が映画など映像製作会社に営業をかけ、製作コストが低いタイで高品質な作品を製作する。

海外戦略を推し進める日活だが、現時点での軸足は「まだ日本にある」(佐藤社長)。有料テレビ向けの映画チャンネル『チャンネルNECO』は安定した収益を上げ、製作・配給を手掛けた日本映画『私の男』が今年のモスクワ国際映画祭で最優秀作品賞を受賞するなど、良作も多い。それでも佐藤社長は「アジアを含めた国際事業と日本の事業をイーブンにしたい」と意気込む。映画首位の東宝の売上高は1976億円(2014年2月期)と日活とはケタ違い。日活は東宝や松竹と異なり興行部門を持たず、製作・配給に特化して進化を試みる。1950~1960年代は日活の時代だった。石原裕次郎・小林旭・吉永小百合――。映画スターを次々輩出したが、この四半世紀は苦難の連続だった。再び“太陽の季節”が来るのか。お楽しみはこれからだ。 (松本史)


キャプチャ  2014年10月29日付掲載


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