【中国・南シナ海での狙い】(02) フィリピンが消せない“内なる中国”の存在――領有権を巡る関係悪化も何れ回復? 経済発展に欠かせない中国系『チノイ』の影響力

south china sea 05
南シナ海の領有権争いが、中国とフィリピンの激しい“舌戦”に発展している。中国が地図上に引いた“九段線”に基づいてスプラトリー(南沙)諸島の埋め立て作業に着手し、フィリピンは南シナ海を『西フィリピン海』と呼び始めている。フィリピンのベニグノ3世・アキノ大統領は6月初めに日本を訪問した際、中国の野心をナチスドイツに擬えた。駐フィリピン中国大使は、この発言に対して即座に反発。「到底受け入れられるものではない」と強く非難した。これまでは政治的な意味合いに留まっていたこの舌戦が、とうとう産業界にも影響。両国関係は最悪なものになっている。アキノの“ナチス”発言直後のこと、『中国系フィリピン人商工会議所(FFCCCII)』は、両国の国交樹立40周年を祝う為に予定していた盛大なイベントを急遽中止した。FFCCCIIは、影響力の大きい中国系フィリピン人実業家たちも所属する組織。アンヘル・グ会頭は、「中止の原因はアキノの発言だ」と指摘。「祝賀イベントの中止が、現状への最も分別のある対応」と語った。任期満了まで1年を切り、アキノ政権内ではナショナリズムの傾向が強まっている。アキノが中国の戦略を第2次世界大戦に向かう頃のナチスドイツに擬えたのは、これで2度目だ。グは、「この手の政治的レトリックが、利益を上回る害を齎す」と見る。

中でも、最も影響を受けているのが中国系フィリピン人の大物実業家たちだろう。フィリピンNo.1の大富豪であるヘンリー・シーや『フィリピン航空』の大株主であるルシオ・タン等だ。『チノイ』と呼ばれる中国系フィリピン人が人口に占める割合は僅か1.5%だが、彼らは同国の経済に大きな影響力を持っている。アメリカの『フォーブス』誌が発表した『2015年版世界富豪番付』にリスト入りしたフィリピン人11人の内、9人がチノイだった。母国・フィリピンと祖先の国・中国が対立している現在の領有権争いについて、彼らはこれまで直接的な発言をしていない。だが、フィリピン国内に“中国寄り”の感情を持っている者がいるとすれば、それは彼らの筈だ。彼らがそうした感情を抱いているとすれば、それは2つの国の文化を受け継いでいるからというより、ビジネスの価値を重視しているからだ。彼らは政治的議論よりも貿易の精神を優先する起業家。しかも、中国はフィリピンにとって最大の輸入相手国であり、日米に次ぐ第3位の輸出相手国でもある。現在は大きな意見の隔たりから対立している両国だが、フィリピン国内には「この緊張がずっと続きはしない」という意識もあるようだ。ジェジョマル・ビナイ副大統領やマヌエル・ロハス内務自治相といった次期大統領の有力候補たちは既に、「中国との妥協が可能」なだけではなく「必要なこと」だと述べている。ビナイに至っては更に踏み込み、資源の共同開発まで提案している。中国系フィリピン人コミュニティーも、両国の緊張緩和に向けて働き掛けていくだろう。『フィリピンスター』紙は、最近こう書いた。「中国人は私たちにとって友人以上の存在。彼らは親族だ」。対中強硬路線を堅持するアキノだが、最終的には中国とのリバランシングを迫られるのかもしれない。 (ジャスティン・カルデロン)


キャプチャ  2015年7月7日号掲載


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テーマ : 中国問題
ジャンル : 政治・経済

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