【私のルールブック】(10) 小林旭さんからの突然の依頼に応える

先日、携帯電話に留守録のマークが出ていたので、聴いてみると……。「小林旭だけど、直ぐに電話くれるか?」。そりゃあ、慌てて掛けますよね。すると……。「お前、子役スクールやってんだろ? 今、舞台の稽古中なんだけどな、いい子役がいないんだよ。だから、明日の昼までに6歳ぐらいで芝居のできる子、数人見繕ってくれ」。え~っとね、有難いですよ。要は、お仕事の依頼な訳ですから、そりゃあ嬉しいですよ。でもね、明日の昼まではないでしょ。いくらなんでも急過ぎるでしょ。とはいえ、断れる筈がないですから。お世話になった大先輩からの依頼……いや、命令ですからね。慌てて事務所スタッフと連絡を取り、何とか数人の子役さんを確保し、翌日、稽古場に向かってもらった次第。

でもね、何か嬉しかったんですよ。「久しぶりに無茶苦茶な要求をされたな~」ってね。このご時世、中々無茶苦茶できないじゃないですか。仕事は勿論、遊びもね。「何から何まで段取りを踏まなきゃならなくなってしまった」と言いますか。例えば、今回のケースなら制作スタッフとマネージャーとのやり取りがあって、条件が折り合った上で正式オファー。これが正しい流れだとするならば、旭さんのやり方は中間のやり取りを一切合財取っ払ってる訳ですから。舞台の総責任者である旭さんが、子役スクールの責任者である私に直接電話をし、「何とかなんねぇか」と。若しかしたら、やってはいけないやり方なのかもしれない。けどね、話は無茶苦茶早いですよ。だって責任者同士なんだから。しかも、責任を取れる・取る覚悟のある者同士場のやり取りな訳で。兎角、間に人が入ってしまうと、駆け引きだ何だと遅々として話が進まない場合が多い。まぁ、それが普通というか、ある意味そうじゃなきゃいけないんだけど、急を要する時は別じゃないですか。だってヤバいんだから。ヤバい時に何が必要かって言ったら勿論、人脈があったら言うことないんだけど、最大の武器は“熱”でしょ。




数少ない本物の映画スターである小林旭さんが、自ら携帯電話を手にする。留守番電話を聴くと、旭さんが不慣れな敬語擬きで話してる。慌てて私がコールバックする。私の声を聴いて安心したのか、普段の旭節に戻る。けど、旭さんの「何とかなんねぇか」の一言には、「この舞台を少しでもクオリティーの高い物にして、お客様に届けたいんだ!」という熱い想いが籠められている。だったら、断る理由なんて1つもありませんし、何がなんでも力になりたいですし、逆に間に人を挟まなかったことに感謝と言いますか、旭さんと直接やり取りができたおかげで、久しぶりにパシリになれたような気がしてね。若い頃は事務所任せでいいんです。でも、いい歳こいたら事務所も大事ですけど、所詮、我々は個人事業主な訳で。それ以前に、1人の人間でありたい。だったら、「偶には杓子定規な段取りとやらを飛び越えて、恩義のみで仕事をすることがあったっていいじゃないの!」……みたいな。旭さんと最初にご一緒させて頂いたのは、ヤクザ映画でした。旭さんに初めて声を掛けて頂いた言葉は、「お前の歩き方はヤクザもんじゃねえな」でした。とっても恥ずかしくて、とっても悔しかった。でも、まだ役者やらせてもらってます。それもこれも、旭さんのあの一言のおかげです。


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2015年7月16日号掲載


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